ブラックチョコレート



もうすぐバレンタインデーだというのに、チョコレートを溶かす作業に苦戦とは。

左利きなのだから調理器具の扱いに問題はないものの、包丁で切る際に対象を押さえて固定することが出来ないのだ。

その為、チョコレートは細かく刻めずに砕いた程度。……そもそも、鍋の中に直接放り込んでいる時点で失敗は確定だが。

「だれにあげるの?」

タブーが小首を傾げる。

……言うまでもなくマスターだ。日頃の感謝の意味も込めて、チョコを贈りたい。

「誰だっていいだろ」

とはいえ、素直じゃない彼はここで意味もなく無愛想に返して。タブーもあまり興味はないのか、それ以上は訊ねず。

「はあ……」

失敗したチョコレートを片付けながら、クレイジーは溜め息。破壊神だからって料理の腕まで破壊的になることないだろ。

それにしても、このままではチョコレートが作れない。これは一番使いたくなかった手段だが、助けを借りるしかないか……
 
 
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