ブラックチョコレート




「うわぁ……」

その出来映えにクレイジーは思わず、頬が引き攣った。一歩、後退して。

「なぁに? それ」

ひょいと覗き込んできたのはタブーである。クレイジーは左手を微かに震わせ、青ざめながら自嘲気味に口を開いた。

「チョコレート……の、つもり」

クレイジーが目の前にしている鍋の中には、焦げたチョコレートが。黒い煙がもくもくと昇り、タブーは咳き込んで。

「うそ。ぜったい、たべないからね」
「これはお前のじゃない」

クレイジーはむっとした顔で応えるも、改めて真っ黒焦げになったチョコレートを前に、深く溜め息を吐き出して。

「たべたひと、しんじゃうかも」
「五月蝿いっ!」

――申し遅れたが、ここは亜空間の中にある、巨大研究施設の中のキッチンである。
 
 
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