駆け引き



ユウが釣られて窓の外を見ると、あんなに酷かった大雨は止んでいた。リオンが急いで窓を開くと、涼しい風が舞い込んで。

リオンは窓の縁に腕を乗せて、心地好さそうに犬耳を垂れては尻尾を揺らす。

「……お前」

何となく、今回元気がなかった原因が分かったのか、ユウは頭を抱えながら。

「じめじめしているのが嫌いなのか?」

するとリオンは苦笑混じりに。

「雨は嫌いじゃないんだが、耳や尻尾が湿っぽくなってしまって、それが気持ち悪いんだ。ところで、ユウ」

リオンはユウの疑問に答えると、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら。

「さっきは何て言ったんだ?」

じめじめのせいでテンションが下がっていたリオンだったが、乗り気じゃなかっただけで会話は聞こえてたらしく。

ユウはみるみる内に顔を真っ赤にすると。


「五月蝿い! 死ね!」


それを聞いたリオンは恍惚とした表情で己の体を抱き締め、腰をくねらせる。

「あっ……も、もう一回言って」
「二度と言うか! この万年発情期が!」


――とある雨の日の恋の駆け引、き?



end.
 
 
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