駆け引き
するとロイは己を抱き締めて、腰をくねらせながらいつものリオンを表現しつつ。
「それに加えて“その冷たい視線! も、もっと浴びせて……ついでに踏みつけて”とか言って、求めてくるのにな」
リオンのいつもの台詞を真似てはそう告げると、ロイとマルスは改めてリオンに注目しては、顔を見合わせ、苦笑する。
肝心のリオンはというと、ぼうっと窓の外を眺めていた。遂に見ていられなくなったユウは、早足で歩み寄ると。
「どうしたんだ。元気が無いみたいだが」
そう声をかけながらリオンの肩を掴む。
すると、驚くことにリオンはその手を払って、溜め息混じりにこう告げるのだ。
「私に構わないでくれ」
――らしくない。らしくなさすぎる。
人から構ってもらわないと死んでしまうような真性のマゾである彼が……人を、しかもよりによってユウを拒むなんて。