駆け引き
リオンが歩いていると、今度は廊下の壁に背を預けて話しているマルスとロイの姿。
「もうすぐで梅雨入りって聞いたよ」
「うえっ、マジかよー」
その会話を耳にしたリオンは、二人の前で立ち止まった。恐らく、“梅雨”という単語に反応を示したのだろう。
いやらしい意味でも“つゆ”とは言うし。
「えっ……な、何? リオン」
「梅雨だぞ! つ、ゆ!」
気付いたロイは、勘違いするなと言わんばかりに人差し指を立てながら告げて。
しかし、リオンは。
「梅雨が梅雨なのは分かっているぞ」
当たり前のようにそう告げて、少し行った先にある窓の前へ。ロイとマルスは思わず顔を見合わせると、身震いをして。
「きっ聞いたか? マルス」
「そうだね……いつもは“梅雨の時期? 私はいつでもつゆだくだ!”とか何とか言うんだけど。熱でもあるんじゃない?」