駆け引き



「うわ……びしょ濡れですね」
「洗濯物、乾くかなぁ」

するとまた前方から、洗濯物の部屋干しを終えたリンクとトゥーンが、風呂に入ろうと此方へ向かってきた。

そういえば、今日は突然の大雨だったな。

「あっ」

するとリンクはリオンを見るなり立ち止まり、慌ててトゥーンの耳を塞いで。

びしょ濡れの自分らを見て、興奮したリオンが何かを言い出すのだと思ったのだろう。しかし、リオンは素通りする間際に。

「風邪を引くぞ」

と告げては立ち去っていき。

そんなリオンの背中を見つめながら、リンクはその奇妙さから思わず身震いをして。

「いっいつもなら……“びしょ濡れ? っく、イイ! 私も興奮して濡れてきた!”とか何とか言っちゃうあのリオンが?」

リンクは塞いでいたトゥーンの耳を解放すると、後ろから抱きついては怠そうに頭を垂れて、ぽつりと呟く。

「かなり気持ちが悪いですね……」

トゥーンは不思議そうに。

「何のこと?」
 
 
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