駆け引き
食堂を出ると、リオンは行く宛てもなく一人でのろのろと廊下を歩いていた。
その時、前方からマリオとルイージが話しながら歩いてきて。しかもこのタイミングで、リオンは何も無い所で躓いてしまい。
それを見たマリオがすかさず、懐からハリセンを取り出しては駆け出して。
「何も無い所で躓くとか、どんだけ」
ツッコミ強制終了。
なんと、リオンは頭を殴られる寸前でハリセンを片手で受け止めたのだ。
「……れ?」
リオンは小さく溜め息を洩らし、棒立ちになっているマリオを素通りして。
「いっいつもなら……“もっと! もっと突っ込んで! 私は大きくて太いのが”とか何とか言うリオンが?」
マリオは立ち去っていくリオンの背中を呆然と見つめながら、リオンがいつも言う台詞を腰をくねらせながら真似て。
「いつもは叩かれたら喜ぶのにね」
ルイージは顔を引き攣らせながら呟いた。
ユウも暫く棒立ちになっていたが、距離が離れて見失わないようにと追いかけて。
――確かに、あれは様子がおかしい。