駆け引き



――次の日。


「お前、リオンに何か言ったのか?」

昼食を終えて皿を重ねては立ち上がったユウに、フォックスがこっそり声をかけた。

ユウが怪訝そうに見つめていると。

「今日のリオン、様子がおかしいからさ」

フォックスはちょうど食堂を出ていくリオンを、顎で差してはそう告げて。

ユウには心当たりがなかった。昨日は結局いつも通り、あんな罵声を浴びせながら踏んだり蹴ったりしていただけだったし。

「……あ」

明らかにそれが原因じゃないか。

一般人なら耐えられない仕打ち……それがリオンにとっては快楽だったのだが、遂に裏目に出てしまったというわけか。

「やっぱり、何かあったんだな」

苦笑を浮かべるフォックスから目を逸らしながら、ユウは皿を片付けるとリオンの様子を確かめるべく、食堂を後にした。

――別に謝るつもりはないが。
 
 
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