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「ぎゃあー!!」
早朝、マルクト軍基地の裏庭に断末魔が響き渡る。
囀り合っていた小鳥達も一目散に飛び去っていくほどに、清々しい朝とはかけ離れた声だった。
「ナマエ! 大丈夫か!?」
手の中からすっぽ抜けた木刀が脳天に直撃し、あまりの痛みにのたうち回っていると、ガイが慌てた様子で駆け寄ってくる。
こんな事はガイに稽古をつけてもらうようになってから初めてだったし、やはり、ここ最近の私はやる事なす事全て上手くいかないらしい。
思い返してみれば、全てはあの日からだ。
「大丈夫じゃないよ……全然、大丈夫じゃない……」
「ナマエ?」
膝を抱えて蹲る。
膝小僧に顔を埋めて、消え入りそうな声で最近の私の惨憺たる日々を一息に吐き出した。
「全然寝れないし毎日柱にぶつかるしスープは飲めないし木刀は降ってくるし……もうヤダ!」
「ええっと……一体何の話をしてるんだ?」
理解に苦しんでいるガイを置いてけぼりにして嘆く私の情緒はとっくに限界を迎えていた。
あれもこれもそれもどれも……全ては数日前、自身に降りかかった未曾有の大事件――もとい、ピオニー陛下の“暇を持て余した貴族の遊び”とやらに付き合ったせいだ。
そのせいで大佐の怒りを買った私は、文字通りこの身を持って事の重大さを思い知らされた。
あんな事が起こった後でも同じベッドで就寝するものだから、まんじりともせず夜を明かす日々が続いている。
その結果、寝不足が祟ってぼんやりする頻度が増え、毎日何度も柱や壁にぶつかる。
当然食欲なんて湧くはずもなく、なんとか口に出来そうなスープですら思考力低下でフォークを使って飲もうとするのだから救いようがない。
そして、とどめにガイとの剣術稽古中、手からすっぽ抜けた木刀が頭上で弧を描き脳天目掛けて降ってきたというわけ。
こんな毎日、踏んだり蹴ったりだ。
流石に項へキスをされた事情は話せなかったが、可能な限りの詳細をガイに話すと、心底心配そうな表情で私の顔を覗き込む。
「確かに顔色も悪いし、何だか窶れてるな……ジェイドに言って少し休んだ方がいいんじゃないか?」
「……ううん、平気。心配してくれてありがとう、ガイ」
隈ができた如何にも不健康そうな顔で力無く笑って見せる。
今は無理にでも何かをしていたかった。体を動かして、考える時間を可能な限り減らしたい。
その点において、ガイとの剣術稽古はこんな状態の私にとっての逃げ場であり、変わらない日常を感じていられる唯一の場所だった。
先程の木刀の直撃で出来た大きなたん瘤に治癒術をかけると、頭が割れたのではないかと思うほどの激しい頭痛も徐々に治ってゆく。
その様を傍で見守るガイは、感心した様子で「便利なもんだな」と呟いた。
そして、不思議そうに私の掌を眺めながら問う。
「ずっと疑問だったんだが、治癒術が使えるのに何で掌は治さないんだ? 豆が出来たままだと稽古中も気になるだろう?」
「うん。確かに痛いけど、これは私が頑張った証みたいなものだから。上手くいかなかった時も、この手を見れば元気がでるんだよね。積み重ねた努力がここにあるんだもの」
努力の結晶がそこには刻まれているのだ。
私は自分の手に出来た豆をさすりながらしみじみと答えた。それは自分に言い聞かせるようでもあったけれど。
ガイは私の言葉を聞いて微笑むと、地面に転がった木刀を拾い上げて私に差し出す。
「そうか。なら、俺もその意気に応えなくちゃな。よし、もう一本いくぞ」
「はい!」
症状の全てが寛解したわけではない。それでも気持ちを新たに木刀を握っている間だけは、ほんの少しだけこの理不尽な日常から抜け出せたような気がした。
***
理不尽な日常から抜け出せたと言っても、所詮は気がしただけの話だ。
それはガイと剣術の稽古をしている間だけの話であって、朝稽古を終えて執務室に入ってしまえば結局元に戻ってしまうわけで……。
私を支えてくれる努力の結晶(掌の豆)も今や手袋の中に隠れてしまった。
その代わりに目の前には書類の山。その山を隔てた先には大佐の姿がある。
今日も今日とて彼は涼しい顔をして、至って普段通りに執務にあたっていた。
あの日、物置で起こった事など何もなかったかのように。
私はこんなにも尾を引いて、日常生活に影響を及ぼしているというのに。
――“あの日”。
意識を向けた途端、空き部屋での映像がフラッシュバックして脳内に流れ込んでくる。
薄暗く埃っぽい部屋の匂い、私を叱る大佐の語気、肌に触れる冷えた空気――項に落とされた唇の熱。
「◎★※%×ーー!!」
ショックのあまり脳内が大爆発を起こし、ショートしてしまう。ごつん!と頭を机に打ち付けてノックアウト。
もう駄目だ。命がいくつあっても足りやしない。
机に突っ伏した上体をよろよろと起こすと不意に視界の端に影が落ち、机の縁に手が置かれる気配がした。
滑らせた視線の先、書類のすぐ横に大佐の指先が見える。
状況を把握する間も無く一瞬で私から逃げ場を取り上げる様は、実に彼らしい手捌きだった。
間髪入れず、息遣いの聞こえる距離で低い声が降ってくる。
「……ここ数日、作業効率が落ちていますね」
「ひょえあっ!?」
耳朶を打つ声に、心臓が一際大きな音を立てて跳ね上がる。
確かに大佐の指摘通り、私の机に積まれた書類の山は普段の半分も片付けられていない。
けれど、続いて彼の口から出た言葉は、私の仕事ぶりを責め立てるものではなかった。
「ナマエ、最近きちんと睡眠はとれていますか?」
「……」
表面上は問いかけているものの、返答するまでもなく大佐は私が置かれている状況を知っているふうな口振りだった。
私が毎夜満足に眠れていない事実を知った上で、あえて自己申告させようとしている。
聡い彼の事だから、睡眠だけでなく私が陥っているであろうあらゆる不調についても熟知しているに違いない。
――その理由までも。
今、大佐はどんな表情で私を見下ろしているのだろう?
きっといつも通り涼しい顔をしているに違いない。
私は、震える指先で書類を手繰り寄せると顔面を覆い隠し、決死の覚悟で振り向いた。
「ど、どこまでご存じで……?」
「ここで嘘をついても仕方がありませんし、正直にお伝えします。あなたの様子を観察する中で確認出来る限りの事は大体。やる事なす事ポンコツ化していますね」
「う゛……」
全部やないかい!と、つい叫びそうになったが、それよりも大佐の“ポンコツ”発言は情け容赦なく私を抉った。
一呼吸置いて、書類越しにため息が聞こえる。
大佐は私をからかうでもなく、ただ静かに告げた。
「これ以上は何もしませんよ。あなたがこの関係をきちんと全うすると約束してくださるなら」
「本当……ですか?」
「ええ」
安堵して、書類を掴む手から力が抜ける。
しかし安心したのも束の間「あのような“躾けるような真似”はしません」と、余計な一言を付け足すものだから、やっと落ち着いてきた私の情緒が再び爆発した。
こんな状況であっても、彼は謝罪の一言も口にしない。
躾けであった事を否定せず、言語化して私に突きつけたのだ――そこに愛情など存在しないと。
今までの私ならその事実に安堵した筈なのに、何故一瞬でも胸が痛んだのだろう?
胸の表面じゃない、もっと奥底の深いところで心が軋む音がした。
「一週間ほど暇をください!!」
「!」
きゅっと唇を結んで、書類に顔を埋めながら声を張り上げる。
これが、私に出来る大佐への精一杯の抵抗だったからだ。
そんなことは私も同じだと、愛情なんていらないと、精一杯の強がりだった。
「……そしたら、この間の事は綺麗さっぱり忘れます。……いつも通りに戻ってみせますから」
この一言は謂わば私の決意表明であったのに、尻すぼみに言うのでは格好がつかない。
(あれは躾け、あれは躾け、あれは躾け……)
何度も心の中で言って聞かせる最中、顔を隠していた書類が静かに抜き取られる。
見上げた先で、視線が重なった。
ずっと目を合わせず過ごしていたせいか、その赤は酷く懐かしい。
「何を考えているんです? 一週間の外出など許可できるわけがないでしょう?」
「た、大佐! でも……」
「その必要はありません。あの日の事は忘れなくて結構です」
「え?」
「“今回は”随分と可愛らしい反応を見せてくれるんですね」
大佐は私から取り上げた書類を机に置き、自分の席へと戻った。
「な、何の話ですか? 急に何でそんな事……」
堪らず立ち上がり、机から身を乗り出して問う。
これは単なる問ではなかった。好奇心でも、興味本位でもない。
だって、その返答によっては……私は――。
「特に意味はありませんよ。ですが……あなたが私を意識して一喜一憂する姿というのも悪くはないですね」
大佐は私から視線を外し、目を伏せながら静かに言う。
その声音は僅かながらに柔らかい。
突き放したかと思うと、こうして言葉で私を縛る。
これはまるで檻だ。優しくて、残酷な檻に囲われているような――。
これ以上、勘違いしたくないのに。
大佐は私に指一本触れていないのに、項が確かな熱を持って再び疼いた。
――きっと大丈夫。私はまだ引き返せるはずだもの。
20260205
早朝、マルクト軍基地の裏庭に断末魔が響き渡る。
囀り合っていた小鳥達も一目散に飛び去っていくほどに、清々しい朝とはかけ離れた声だった。
「ナマエ! 大丈夫か!?」
手の中からすっぽ抜けた木刀が脳天に直撃し、あまりの痛みにのたうち回っていると、ガイが慌てた様子で駆け寄ってくる。
こんな事はガイに稽古をつけてもらうようになってから初めてだったし、やはり、ここ最近の私はやる事なす事全て上手くいかないらしい。
思い返してみれば、全てはあの日からだ。
「大丈夫じゃないよ……全然、大丈夫じゃない……」
「ナマエ?」
膝を抱えて蹲る。
膝小僧に顔を埋めて、消え入りそうな声で最近の私の惨憺たる日々を一息に吐き出した。
「全然寝れないし毎日柱にぶつかるしスープは飲めないし木刀は降ってくるし……もうヤダ!」
「ええっと……一体何の話をしてるんだ?」
理解に苦しんでいるガイを置いてけぼりにして嘆く私の情緒はとっくに限界を迎えていた。
あれもこれもそれもどれも……全ては数日前、自身に降りかかった未曾有の大事件――もとい、ピオニー陛下の“暇を持て余した貴族の遊び”とやらに付き合ったせいだ。
そのせいで大佐の怒りを買った私は、文字通りこの身を持って事の重大さを思い知らされた。
あんな事が起こった後でも同じベッドで就寝するものだから、まんじりともせず夜を明かす日々が続いている。
その結果、寝不足が祟ってぼんやりする頻度が増え、毎日何度も柱や壁にぶつかる。
当然食欲なんて湧くはずもなく、なんとか口に出来そうなスープですら思考力低下でフォークを使って飲もうとするのだから救いようがない。
そして、とどめにガイとの剣術稽古中、手からすっぽ抜けた木刀が頭上で弧を描き脳天目掛けて降ってきたというわけ。
こんな毎日、踏んだり蹴ったりだ。
流石に項へキスをされた事情は話せなかったが、可能な限りの詳細をガイに話すと、心底心配そうな表情で私の顔を覗き込む。
「確かに顔色も悪いし、何だか窶れてるな……ジェイドに言って少し休んだ方がいいんじゃないか?」
「……ううん、平気。心配してくれてありがとう、ガイ」
隈ができた如何にも不健康そうな顔で力無く笑って見せる。
今は無理にでも何かをしていたかった。体を動かして、考える時間を可能な限り減らしたい。
その点において、ガイとの剣術稽古はこんな状態の私にとっての逃げ場であり、変わらない日常を感じていられる唯一の場所だった。
先程の木刀の直撃で出来た大きなたん瘤に治癒術をかけると、頭が割れたのではないかと思うほどの激しい頭痛も徐々に治ってゆく。
その様を傍で見守るガイは、感心した様子で「便利なもんだな」と呟いた。
そして、不思議そうに私の掌を眺めながら問う。
「ずっと疑問だったんだが、治癒術が使えるのに何で掌は治さないんだ? 豆が出来たままだと稽古中も気になるだろう?」
「うん。確かに痛いけど、これは私が頑張った証みたいなものだから。上手くいかなかった時も、この手を見れば元気がでるんだよね。積み重ねた努力がここにあるんだもの」
努力の結晶がそこには刻まれているのだ。
私は自分の手に出来た豆をさすりながらしみじみと答えた。それは自分に言い聞かせるようでもあったけれど。
ガイは私の言葉を聞いて微笑むと、地面に転がった木刀を拾い上げて私に差し出す。
「そうか。なら、俺もその意気に応えなくちゃな。よし、もう一本いくぞ」
「はい!」
症状の全てが寛解したわけではない。それでも気持ちを新たに木刀を握っている間だけは、ほんの少しだけこの理不尽な日常から抜け出せたような気がした。
***
理不尽な日常から抜け出せたと言っても、所詮は気がしただけの話だ。
それはガイと剣術の稽古をしている間だけの話であって、朝稽古を終えて執務室に入ってしまえば結局元に戻ってしまうわけで……。
私を支えてくれる努力の結晶(掌の豆)も今や手袋の中に隠れてしまった。
その代わりに目の前には書類の山。その山を隔てた先には大佐の姿がある。
今日も今日とて彼は涼しい顔をして、至って普段通りに執務にあたっていた。
あの日、物置で起こった事など何もなかったかのように。
私はこんなにも尾を引いて、日常生活に影響を及ぼしているというのに。
――“あの日”。
意識を向けた途端、空き部屋での映像がフラッシュバックして脳内に流れ込んでくる。
薄暗く埃っぽい部屋の匂い、私を叱る大佐の語気、肌に触れる冷えた空気――項に落とされた唇の熱。
「◎★※%×ーー!!」
ショックのあまり脳内が大爆発を起こし、ショートしてしまう。ごつん!と頭を机に打ち付けてノックアウト。
もう駄目だ。命がいくつあっても足りやしない。
机に突っ伏した上体をよろよろと起こすと不意に視界の端に影が落ち、机の縁に手が置かれる気配がした。
滑らせた視線の先、書類のすぐ横に大佐の指先が見える。
状況を把握する間も無く一瞬で私から逃げ場を取り上げる様は、実に彼らしい手捌きだった。
間髪入れず、息遣いの聞こえる距離で低い声が降ってくる。
「……ここ数日、作業効率が落ちていますね」
「ひょえあっ!?」
耳朶を打つ声に、心臓が一際大きな音を立てて跳ね上がる。
確かに大佐の指摘通り、私の机に積まれた書類の山は普段の半分も片付けられていない。
けれど、続いて彼の口から出た言葉は、私の仕事ぶりを責め立てるものではなかった。
「ナマエ、最近きちんと睡眠はとれていますか?」
「……」
表面上は問いかけているものの、返答するまでもなく大佐は私が置かれている状況を知っているふうな口振りだった。
私が毎夜満足に眠れていない事実を知った上で、あえて自己申告させようとしている。
聡い彼の事だから、睡眠だけでなく私が陥っているであろうあらゆる不調についても熟知しているに違いない。
――その理由までも。
今、大佐はどんな表情で私を見下ろしているのだろう?
きっといつも通り涼しい顔をしているに違いない。
私は、震える指先で書類を手繰り寄せると顔面を覆い隠し、決死の覚悟で振り向いた。
「ど、どこまでご存じで……?」
「ここで嘘をついても仕方がありませんし、正直にお伝えします。あなたの様子を観察する中で確認出来る限りの事は大体。やる事なす事ポンコツ化していますね」
「う゛……」
全部やないかい!と、つい叫びそうになったが、それよりも大佐の“ポンコツ”発言は情け容赦なく私を抉った。
一呼吸置いて、書類越しにため息が聞こえる。
大佐は私をからかうでもなく、ただ静かに告げた。
「これ以上は何もしませんよ。あなたがこの関係をきちんと全うすると約束してくださるなら」
「本当……ですか?」
「ええ」
安堵して、書類を掴む手から力が抜ける。
しかし安心したのも束の間「あのような“躾けるような真似”はしません」と、余計な一言を付け足すものだから、やっと落ち着いてきた私の情緒が再び爆発した。
こんな状況であっても、彼は謝罪の一言も口にしない。
躾けであった事を否定せず、言語化して私に突きつけたのだ――そこに愛情など存在しないと。
今までの私ならその事実に安堵した筈なのに、何故一瞬でも胸が痛んだのだろう?
胸の表面じゃない、もっと奥底の深いところで心が軋む音がした。
「一週間ほど暇をください!!」
「!」
きゅっと唇を結んで、書類に顔を埋めながら声を張り上げる。
これが、私に出来る大佐への精一杯の抵抗だったからだ。
そんなことは私も同じだと、愛情なんていらないと、精一杯の強がりだった。
「……そしたら、この間の事は綺麗さっぱり忘れます。……いつも通りに戻ってみせますから」
この一言は謂わば私の決意表明であったのに、尻すぼみに言うのでは格好がつかない。
(あれは躾け、あれは躾け、あれは躾け……)
何度も心の中で言って聞かせる最中、顔を隠していた書類が静かに抜き取られる。
見上げた先で、視線が重なった。
ずっと目を合わせず過ごしていたせいか、その赤は酷く懐かしい。
「何を考えているんです? 一週間の外出など許可できるわけがないでしょう?」
「た、大佐! でも……」
「その必要はありません。あの日の事は忘れなくて結構です」
「え?」
「“今回は”随分と可愛らしい反応を見せてくれるんですね」
大佐は私から取り上げた書類を机に置き、自分の席へと戻った。
「な、何の話ですか? 急に何でそんな事……」
堪らず立ち上がり、机から身を乗り出して問う。
これは単なる問ではなかった。好奇心でも、興味本位でもない。
だって、その返答によっては……私は――。
「特に意味はありませんよ。ですが……あなたが私を意識して一喜一憂する姿というのも悪くはないですね」
大佐は私から視線を外し、目を伏せながら静かに言う。
その声音は僅かながらに柔らかい。
突き放したかと思うと、こうして言葉で私を縛る。
これはまるで檻だ。優しくて、残酷な檻に囲われているような――。
これ以上、勘違いしたくないのに。
大佐は私に指一本触れていないのに、項が確かな熱を持って再び疼いた。
――きっと大丈夫。私はまだ引き返せるはずだもの。
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