テニスの王子様
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青学の昼休み。校舎裏にあるテニスコートには、いつもと同じように軽快なラリー音が響いていた。
「ほら越前、甘いぞ!」
「まだまだっスね」
桃城とリョーマの掛け合い。その横で海堂が「フン」と唸りながら黙々と素振りをしている。
そんな中――
「こんにちは、みんな」
柔らかな声がコートに届いた瞬間、空気がふっと変わった。
「来たぁー!!」
「瑠々先輩だ!」
リョーマと桃城が同時に反応する。そこに立っていたのは――
調理部部長・[#dn=1#] 瑠々。
綺麗に整えられた髪、穏やかな微笑み。
その手には大きなバスケットが抱えられている。
「今日も差し入れ持ってきたの。よかったらどうぞ」
「マジっスか!?神じゃん!」
「……いい匂い」
「フン……」
と言いつつ一番近づく海堂
瑠々はくすっと笑いながら、一つずつ配っていく。
「今日はレモンのパウンドケーキ。疲労回復にいいから」
「うまっ!!!」
「……悪くない」
「フン……うまい」
その様子を、少し離れた場所から見ている人物がいた。――不二周助。
「(やっぱり、人気者だね)」
目を細めて、優しく微笑む。けれどその奥に、ほんの少しだけ――
静かな独占欲が揺れていた。
「中峰さん、ありがとう」
大石が丁寧に頭を下げる。
「いえ、竜崎先生に頼まれただけなので」
「でも毎回すごいよね。全部手作りでしょ?」
「うん、好きだから」
その言葉に、不二がそっと近づいた。
「“好きだから”っていうのは、料理が?」
「……それもあるけど」
瑠々は少しだけ笑った。
「食べてくれる人が喜んでくれるのが好き」
その言葉に――
「(……変わらないな)」
不二は一年前を思い出していた。
まだ一年生だった頃。偶然見かけた調理室で、彼女は一人、真剣な表情でケーキを焼いていた。その横顔が、あまりにも綺麗で。気づいた時には、目で追っていた。
「(あの時から、ずっとだ)」
「ねぇ瑠々先輩!」
リョーマが無遠慮に近づく。
「今度さ、オレのために作ってよ」
「え?」
「もっと甘いやつ」
「ちょ、リョーマずりぃぞ!オレもリクエストいいっスか!?」
「フン……俺もだ」
一気に囲まれる瑠々だが、困ったように笑いながらも、ちゃんと一人一人に応える。
「ふふ、順番ね」
その様子に、不二はふっと息をついた。
「(……優しすぎるんだよね)」
だからみんな、放っておかない。そして――最近は特に。放課後。コートの隅で、瑠々が片付けをしていると。
「中峰さん」
声をかけられて振り返る。
「不二くん」
「まだ残ってたんだね」
「うん、差し入れの容器回収してて」
「そっか」
並んで歩く。静かな時間。
「最近、人気者だね」
「え?」
「ほら、リョーマたち。随分気に入ってるみたい」
「……そうかな?」
「うん。ちょっと心配になるくらい」
「心配?」
瑠々が不思議そうに首を傾げる。その仕草に、不二は一瞬言葉を失った。
「(……言いたいな)」
でも、まだ。ずっと我慢してきた。不二の口からぽつりと言葉が漏れた
「……取られちゃいそうで」
「え?」
「なんでもないよ」
にこっと笑う不二。けれどその笑みは、いつもより少しだけ本気だった。
数日後。また差し入れの日。
「瑠々先輩、今日も来た!」
「今日は何っスか!?」
「クッキー。アーモンド入り」
「最高!!」
また囲まれ、笑顔で対応する瑠々。
でも――その手首を、そっと引かれた。振り向くと、不二だった。
「……え?」
「少し借りるね」
「え、あ、うん……?」
そのまま人の少ない場所へ。
「不二くん?」
少しだけ、真剣な表情。
「中峰さんって、本当に優しいよね」
「そうかな」
「うん。だからみんな好きになる」
「……」
「でもさ、僕は、“みんな”の中の一人じゃ嫌なんだ」
「――え?」
さっきより近づき不二は、少しだけ真っ直ぐな瞳に空気が止まる。
「一年の頃から、ずっと好きだったでも、テニスに集中したかったから…言わなかった」
「……」
「けど最近さ、もう無理」
小さく笑う。
「取られそうで、焦ってる」
瑠々の心臓が高鳴る。
「(不二くんが……こんな顔するなんて)私……」
言葉が詰まる。
「ずっと、差し入れしてたのはね…」
「?」
「あなたのためでもあったの」
その言葉に、不二が目を見開く。
「試合、頑張ってほしくて」
「疲れてるとき、少しでも支えになれたらって」
「……」
「直接言えないから、料理に込めてた」
静かな告白。不二はふっと息を吐いたそして一歩、近づく。
「……それ、反則だよ……そんなの知ったら、もう止まれない」
そっと頬に触れる。
「好きだよ」
そのまま――優しく、唇を重ねた。柔らかくて、あたたかいキス。離れたあと、不二は少し照れたように笑った。
「これからは、ちゃんと伝えるね」
瑠々も小さく微笑む。
「……うん」
その笑顔は、誰に見せるよりも優しくて。
不二だけのものだった。
~EMD~
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