BLEACH
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六番隊隊舎の朝。
「おーい瑠々!書類どこやった!」
大声で叫んでいるのは恋次。机の山をひっくり返している。瑠々はのんびりお茶を飲みながら言った。
「恋次副隊長、それ三番目の山の下です」
「どれだよ三番目って!」
「左からです」
恋次がバッと紙をめくる。
「あった!!」
「ほら」
「なんで分かんだよ!?」
瑠々はにこっと笑った。
「副隊長の机、昨日整理したので」
「……」
恋次は腕を組んだ。
「お前ほんと出来た部下だな」
「ありがとうございます」
「いや褒めてねえ」
そんな会話をしていると、隊舎の空気が変わる。隊士たちが一斉に姿勢を正した。廊下を歩いてくるのは—朽木白哉。静かな足音。白い羽織。整った姿。瑠々は思わず視線を向ける。
「(……今日もかっこいい)」
恋次が小声で言う。
「また見てんな」
「えっ」
「分かりやすすぎ」
「見てません」
「見てる」
白哉は机に書類を置いた。
「恋次」
「はい」
「本日の巡回は」
「準備出来てます」
恋次が答える。白哉は視線を動かす。その目が——一瞬、瑠々で止まった。
「……」
「……?」
瑠々はぺこっと頭を下げた。白哉は何も言わず歩いていった。恋次がニヤッとする。
「な」
「な、何ですか///」
「最近、隊長お前見る回数増えてるぞ」
「気のせいです//」
「いやマジで」
瑠々は苦笑いした。
「(そんなはずない)」
だって白哉は——亡くなった妻を今も想い続けている人。その人の強さに惹かれただけ。それだけ。昼。中庭で昼食を食べていると、後ろから声がした。
「瑠々ちゃ〜ん」
振り向くと走ってきたのは、やちる。
「やちるちゃん!」
「今日もお弁当?」
「はい」
やちるは弁当をのぞく。
「わあ美味しそう!」
そこへ大きな声。
「お、六番隊の嬢ちゃんじゃねえか!」
現れたのは更木剣八。
「更木隊長こんにちは」
「その弁当うまそうだな」
「食べます?」
「いいのか?」
「けんちゃん図々しい!」
やちるが怒る。瑠々は笑いながら弁当を渡した。
「一口だけですよ」
剣八が食べる。
「うまいな!」
「本当ですか?」
「お前十一番隊来い!」
「ええ!?」
そこへ声が飛ぶ。
「更木…仕事残ってるんじゃないのか?」
現れたのは日番谷冬獅郎だった。少し不機嫌そうな顔で剣八を見る
「お、白チビ」
「誰が白チビだ…」
その後ろには松本乱菊が現れ、[#dn=2#]と腕を組む。
「瑠々久しぶり〜」
「乱菊さん!」
「六番隊の癒し担当よね〜」
「そんなことないですよ」
「あるな」
珍しく、冬獅郎が言った。
「お前がいると瀞霊廷の空気が少しマシになる」
「褒めてます?」
「半分な」
瑠々が笑っていると——遠くから声が聞こえ振り向く。
「瑠々」
そこに立っていたのは、白哉だった。全員が一瞬静まる。
「……隊長?」
「任務だ」
「はい」
瑠々は立ち上がり、恋次も合流する。
「虚討伐だ」
「了解」
四人は現世近くの区域へ向かった。戦闘はすぐ始まった。
「来るぞ!」
恋次が斬魄刀を構える。すぐに虚が現れ、瑠々は素早く動いた。
「右です!」
「分かってる!」
恋次が切り裂くがしかし、次の瞬間。巨大な虚が現れ。恋次が舌打ちする。
「チッ」
虚の腕が振り下ろされる。
「危ない!」
瑠々が飛び出し、斬撃。虚の腕を斬るが虚はまだ動いたその瞬間。
「退け」
静かな声が響く。千本の刃が舞う千本桜だ。虚は一瞬で崩れ落ち、静寂。瑠々は息を吐いた。
「隊長助かりました」
「無茶をするな」
「申し訳ありません」
「……」
白哉は瑠々を見てしばらく黙る。恋次が小声で瑠々言う。
「怒ってるなこれ」
瑠々もそう思った。しかし白哉は違う言葉を言った。
「怪我は」
「え?」
「あるか」
「ありません」
「そうか」
恋次が目を丸くする。
「(隊長が心配してる…?)」
帰り道。白哉はふいに言った。
「瑠々」
「はい」
「お前は…」
言葉が少し止まる。
「何故、私を見ている」
瑠々の心臓が跳ねた。恋次が「うわ」と小さく言う。瑠々は少し笑って言う。その言葉に恋次は吹き出した。
「かっこいいからです」
「ぶっ!」
白哉は黙ったまま見つめる。瑠々は続けた。
「それに」
「……」
「一人をずっと想える人って、すごく強いと思うんです。だから…」
白哉の瞳が揺れた。瑠々は微笑みながら言う。
「尊敬してます」
しばらく沈黙が続き、恋次がそっと離れる。
「俺ちょっと先行くわ(空気やばい)」
去っていく恋次の後ろ姿を見送りながら、白哉は静かに言った。
「……愚かだ」
「え?」
「そのような男に惹かれるとは」
「そうですか?」
「そうだ」
「でも…私は好きですよ」
風が吹き。白哉は目を細めた。
そして初めて——ほんの少しだけ、優しい声で言った。
「……変わった女だ」
瑠々は笑った。その日から。朽木白哉の視線は、確実に彼女を追うようになった。六番隊隊舎。
昼休み。
「瑠々、昼飯食った?」
机に肘をついて話しかけてきたのは恋次だった。
「まだです」
「じゃあ一緒に食おうぜ」
「いいですよ」
「よし決まり」
恋次は瑠々の肩に腕を乗せた。
「最近任務多くて疲れてんだろ」
「恋次副隊長の方が忙しそうですけど」
「俺は慣れてる!それよりさ」
「?」
「この前の虚討伐、マジで危なかっただろ」
「あれですか…」
「俺助けられたし」
その言葉に、瑠々は少し照れた。
「恋次副隊長を守れるなら嬉しいです」
「……」
恋次が黙る。
「なんです?」
「……いや」
恋次は少し目を逸らした。
「そういうこと平気で言うよな、お前」
「?」
その時。隊舎の空気が変わった。恋次が小声で言う。
「……隊長」
廊下を歩いてくるのは朽木白哉静かなだった。静かな足音、整った姿。瑠々は自然と背筋を伸ばす。
「隊長、どうしました?」
恋次が聞く。白哉は一瞬だけ瑠々を見る。その視線は——恋次の腕にあった。瑠々の肩に乗っている腕を見たまま沈黙。恋次は気づかないのか、会話を続けつる
「午後の巡回ですか?」
「……いや…瑠々」
「はい」
「書類の確認がある」
「今ですか?」
「今だ」
恋次が首を傾げる。
「その書類俺も見ましたけど」
「私が見る」
「……」
恋次は眉を上げた。瑠々は立ち上がり。「分かりました」と一言いうと、二人は隊長室へ向かった。扉が閉まる。静寂が続く中、瑠々が言う。
「書類はどれでしょうか」
白哉は机の前に立っていた。だが——書類には触れていない。沈黙が続き瑠々は、話しかける
「……隊長?」
白哉はゆっくり振り向いた。
「お前は」
「はい」
「阿散井と随分親しいな」
その言葉に瑠々は少し驚いた。
「副隊長ですし」
「そうか」
「はい」
白哉は視線を落とし、沈黙する。その光景に瑠々は首をかしげた
「……」
「どうかしましたか?」
その時。白哉の声が低く落ちた。
「軽率だ」
「え?」
「隊士と距離を取りすぎるな」
瑠々は困った顔をした。
「でも副隊長ですよ?」
「それでもだ」
白哉の声は冷たい。しかし——どこか苛立っている。瑠々は何かに気づいたのかふっと笑った。
「隊長」
「……」
「嫉妬ですか?」
空気が止まった。白哉の目がわずかに見開く。
「……何」
「だって」
瑠々は楽しそうに言った。
「さっき恋次副隊長の腕見てました」
沈黙が続き、白哉は目を細めた。そして発した言葉は
「……違う」
「そうですか?」
「当然だ」
瑠々は白哉の前まで近づく
「でも」
「……」
「少し嬉しいです」
「何がだ」
「隊長が気にしてくれてること」
その言葉に白哉は眉をひそめ黙り込んだ。それを見て瑠々は微笑む。
「私はずっと隊長見てましたから」
「愚かだ」
「そうですね」
「私のような男を」
「それでも…好きですよ」
静寂。その瞬間、白哉の手が動き、瑠々の腕を掴む。びっくりする瑠々に白哉は言った。
「……隊長?」
「軽々しく言うな」
「え?」
「私の前で、他の男の名を」
瑠々の心臓が跳ねた。
「恋次副隊長のことですか?」
「……」
「副隊長は…」
言いかけた瞬間。白哉の声が落ちる。
「分かっている」
「え?」
「奴がお前を好いていることくらい」
「そうなんですか?」
「気づいていないのか」
「今初めて知りました」
白哉は小さく息を吐いた。
「……本当に鈍い」
そして、静かな声で白哉の瞳が真っ直ぐ向き言う
「だから言っておく」
「?」
「私の前で――――他の男と親しくするな…」
その言葉に瑠々の顔が赤くなった。
「それって」
白哉は視線を逸らす。
「……命令ではない」
「え?」
「ただ」
わずかに目を細める。
「気に入らぬ」
瑠々は笑ってしまった。
「ふふっ隊長///」
「……」
「それ嫉妬ですよ?」
沈黙した後、白哉は言った。
「……そうかもしれぬな」
その言葉に——瑠々の胸は大きく鳴った。
六番隊の庭。昼の柔らかい風が吹いていた。
「瑠々」
声をかけたのは、恋次だった。
「はい?」
「ちょっと来い」
「?」
瑠々は首を傾げながらついていく。庭の奥。人のいない場所で恋次が立ち止まった。
「恋次副隊長?」
恋次は腕を組んで、しばらく黙っていた。
「……なあ」
「はい」
「俺さ」
少し頭をかく。
「お前が隊長のこと好きなの知ってっけど…お前のこと好きなんだわ」
瑠々は瞬きをした。
「え?」
「いや、その…ずっと前から///」
「……」
「明るいし、誰にでも優しいし…」
「副隊長…」
「あと」
恋次は真面目な顔になる。
「戦うときめちゃくちゃかっこいい」
瑠々の頬が少し赤くなる。恋次は、ためらうことなく続ける
「それでさ、俺と付き合わねえ?」
沈黙が続き風が吹く。瑠々は少し困った顔をした。
「副隊長」
「……」
「嬉しいです」
恋次の顔が少し明るくなる。
「でも…」
「?」
瑠々はゆっくり言った。
「私、やっぱり…」
恋次の眉が動く。瑠々が言いかけた時、背後から声が聞こえた——
「瑠々」
二人が振り向く。そこに立っていたのは、白哉だった。恋次が目を見開く。
「隊長!?」
白哉は静かに瑠々の前まで歩いてくる。恋次が言った。
「……聞いてたんですか」
「偶然だ」
「偶然で全部聞こえる場所に?」
白哉は答えない。その代わり——瑠々を見る。
「答えは」
「え」
「まだしていないだろう」
恋次が眉をひそめる。
「隊長」
「……」
「それどういう意味ですか」
白哉は恋次を見た。その視線は静かだが鋭い。
「そのままの意味だ」
「……」
恋次が笑う。
「まさかとは思うけど」
「……」
「隊長も瑠々のこと好きとか言わねえですよね?」
その言葉に少し黙った後白哉は言った。
「そうだ」
空気が凍る。恋次の目が丸くなり瑠々も固まったが、白哉は続ける。
「私は…」
一瞬言葉を止める。
「この女を手放す気はない」
その言葉に、恋次が笑った。
「ちょっと待て」
「……」
「それズルくねえですか?」
「何がだ」
「隊長今まで何も言わなかったじゃないですか」
白哉は黙り、恋次は続ける。
「瑠々はずっと隊長見てたんですよ」
「……」
「それ知ってたくせに…なのに俺が告白したら出てくるとか、卑怯じゃないっすか!!」
恋次の言葉に白哉は何も返せなかった。風が吹き、決意を決めたのか白哉は静かに言った。
「そうだな…私は卑怯だ……それでも。渡す気はない」
恋次が息を吐く。
「……マジかよ」
「阿散井」
「はい」
「お前は優秀な副隊長だ」
「……」
「だが、この女だけは譲れない」
瑠々の心臓が大きく鳴った。恋次はしばらく黙っていた。そしてため息をついき頭をかく。
「はあ…敵が隊長とか最悪だな…」
「……」
恋次は瑠々を見る。
「瑠々」
「はい」
「お前の気持ちをはっきり言ってくれ…」
瑠々は白哉を見る。ずっと見てきた人。一途に亡き妻を想い続ける人。その強さに惹かれた…でも今——その人は自分を見ている。真っ直ぐに。瑠々は小さく笑った。
「隊長」
「……」
「そんな顔するんですね…ずっと好きでした」
恋次はふと静かに笑った。瑠々は続ける。
「でも」
「……」
「今の隊長、もっと好きです」
白哉の目がわずかに揺れる。そして——静かに言った。
「……瑠々」
それは初めて。優しい声で名前を呼んだ瞬間だった。
夕暮れの瀞霊廷。六番隊隊舎の庭は静かだった。風が桜の花びらを運んでくる。瑠々は一人、縁側に座っていた。
「はぁ……」
思わずため息がこぼれる。そこへ足音。振り向かなくても分かる。この静かな足音は——白哉。
「……瑠々」
その優しい声に胸が少し跳ねる。瑠々は振り返った。白哉はいつものように静かな表情。でも、どこか考え込んでいるようだった
「隊長」
「どうした」
「え?」
「ため息などついて」
「そんなに目立ちました?」
「……ああ」
夕日が二人を染める。瑠々はゆっくり言った。
「恋次副隊長に会いました」
その名前を聞いて、白哉の目がわずかに動く。
「副隊長がですね?」
「……」
「“瑠々を泣かせたら殴る”って言ってました」
白哉は一瞬だけ目を閉じた。
「……あの男らしい」
瑠々は少し笑う。
「副隊長、優しいですよね」
「そうだな」
「でも、隊長の方が優しいと思います」
風が吹き白哉は、しばらく何も言わなかった。やがて、低く言う。
「……優しくなどない」
「え?」
「私は…卑怯な男だ」
瑠々は首をかしげた。
「どうしてですか」
「阿散井の気持ちもお前の気森もを知りながら。お前を奪った…」
瑠々は小さく笑う。
「奪われてませんよ」
「……」
「私が隊長の心を奪ったんです!」
白哉は何も言わない。瑠々は続ける。
「ずっと」
「……」
「隊長のこと好きでした」
その言葉に白哉の瞳が揺れる。
「でも…少しだけ怖いんです」
「何がだ」
「私…緋真様の代わりになろうとしてませんか?」
その言葉に風が止まる。白哉の瞳が大きく揺れた。瑠々は慌てて言う。
「ごめんなさい!」
「……」
「変なこと言って
」その時。腕を引かれ、瑠々は白哉の腕の中にしっかりと抱きしめられた。逃げられないくらい。
「……隊長?」
白哉の声がすぐ上から落ちる。
「違う」
低く、はっきりと。
「お前は」
少しだけ腕に力がこもる。
「お前だ」
瑠々の心臓が激しく鳴る。
「代わりなどではない」
「……」
「瑠々」
名前を呼ばれ、それだけで胸がいっぱいになる。白哉は続けた。
「私は、お前に触れてしまった」
瑠々は顔を上げた。白哉の瞳は真っ直ぐこっちを見ていた。
「もう……手放すつもりはない」
瑠々の顔が真っ赤になる。
「隊長、それ…」
「嫌か」
「違います!」
瑠々は慌てて言った。
「ただ」
「……」
「心臓が持ちません」
白哉の口元がほんの少し緩む。それはほとんど誰も見たことがない表情だった。
「そうか」
白哉は静かに言う。
「では」
瑠々の頬に白哉の手が触れる。
「慣れろ」
「え」
そのまま顔が近づく。瑠々の呼吸が止まる。
「……隊長」
「瑠々」
そして——優しく唇が触れた。
ほんの一瞬。
でも確かに。
二人の距離は、もう戻らないほど近くなっていた。
~END~
