紅色の空
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休暇も終わり 秋の気配の桜蘭学院でございます
南校舎の最上階
北側廊下つきあたり
一人の少女が扉を開けた
「おや…?これは これは…珍しいお客様だな」
扉を開けると そこは
桜蘭ホスト部警察でした
「ようこそ 迷子の仔猫ちゃん」
「…ぎゃくはーれむ?」
少女はまだ小さく、何やらけったいな言葉を知っているようだ
「むう!!こりゃイカン、夏の終わりに、プールへ行った時の水がまだ耳の中に…」
「ハハハ。総監殿は、おマヌケさんだなあ~~」
「れんげ嬢じゃあるまいし、こんな小っこい子が【逆ハーレム】なんてアダルト用語発するわけが…」
「しゅちにくりん?」
少女の一言に皆が固まる。それなのに、少女は一人ひとり指をさしながらけったいな言葉をぶつけてくる
「めがねきゃら?ろりしょた?すといっくけい?がりべん?きんしんそーかん?」
どんどん続けるその子は最後に環を指さしながらピタッと止まる。環はびくつきながら少女のことばと待つ。少女は目に涙をため、キラキラさせながら言葉を発する
「おにいちゃま…!?」
「えっ」
「あら、おにいちゃま?」
「「聞いてないよ!!殿 幼等部に妹なんていたの!?しかも金髪の!!」」
「いっイヤオレは確か一人っ子で…」
「言われてみれば似てるかもしれないねえ~~タマちゃんの方が茶色だけど」
「そもそも【メガネキャラ】と【お兄ちゃま】は同列な言葉なのか?」
「いいじゃないですか、自分なんて【ガリ勉】ですよ」
環は飛びついてきた少女にやさしく問いかける
「ええとお嬢ちゃんお名前は?」
「きりみ~~さんさい」
「「(KILLME?)」」
「(切り身?)」
「ねぇ、きりみちゃん?本当にこの人がおにいちゃま?」
瑠々の言葉に環をじっと見つめた後、うりゅっと目に涙を浮かばせ環に言う
「…おにいちゃまじゃないの…?」
その瞳に負けたのか、情に流されたのか、環も目に涙を浮かべ、ぎゅっと抱きしめながら言う
「今日から君のおにいちゃまだよ…!!」
「環?いくら何でもそれは無責任よ?」
「無責任じゃないもん、ちゃんと世話するもん!!だから、おうちに連れて帰るんだもん!!」
「あーハイハイ」
「ハルヒのその冷たいとこ素敵ってそうじゃなくて…どうする?鏡夜」
「ひょっとして、高等部に実際お兄さんがいるんじゃないか?」
「それじゃ、タマちゃんと間違えて~~?」
「でも、環に似た外国人みたいな………あっ」
瑠々が思い出したその時、ドアの方から、か細い声で、きりみを呼ぶ声が聞こえる
「きりみ~~~霧美~~~~…」
何を隠そう その通りで 猫澤 霧美 幼等部1年は
まぎれもなく 黒魔術部部長 猫澤 梅人(18)の妹君なのでありました
「そういえば、ずらの下は金髪でしたっけ」
どよーーんと沈む猫澤先輩を、きりみはちらっと見る。その行動に、ぱあっと明るくなる猫澤先輩だが、フード姿が怖いのか、きりみは環に抱き着きながら泣き出してしまう
「あらまぁ、おもいっきり嫌われていますね……」
「「そんなカッコしてるからじゃん?脱げばソレ」」
「ギャー―――人殺しィ~!!!!!」
「「んじゃ部屋を暗くして―」」
「ふえっびええええええええええ」
双子は、猫澤先輩のフードを取ろうとしたが、人殺しといわれあえなく失敗。部屋をカーテンを閉め暗くしようとしたが今度は、きりみが大泣きしあえなく失敗
「「今度はこっちがダメか」」
「…梅人坊ちゃまは、明るいところが命取り…」
「霧美お嬢様は暗い所が大嫌い…」
「その正反対の体質が産み出した悲劇性こそが、まさにお2人が【猫澤家のロミジュリ】と呼ばれる由縁なのでございます」
「おかしいわね…ハルヒ…」
「はい…ロミオとジュリエットは兄妹じゃないし、状況がだいぶ違うんですが…」
瑠々とハルヒの突っ込みに、猫澤家使用人くれ竹はスカートをたくし上げながらお辞儀をし瑠々たちに話しかける
「存じております。これは今 私が思いついた素敵キャッチコピーにございます。よりドラマチックかと思いまして」
その後ろで、同じく猫澤家使用人の角松だほかのホスト部の方を向き話しかけている
「ちなみに我々は霧美様のお迎え役にございます。お探ししましたよお嬢様」
「猫澤家は、ロシアはトカレフ王朝の系譜に属する、由緒正しき家系にございますが」
「……それを言うのならば…ロカノフ王朝なのでは?」
「何の因果か、何百年に一度、梅人様のように闇に魅入られた子が生まれるという言い伝えが あったりなかったりするんでございます」
「「めちゃくちゃてきとうだなオイどっちだヨ」」
瑠々の突っ込みも無視されたあげくめちゃくちゃなことを言うくれ竹に対し、双子が突っ込みを入れる。がその突込みもむなしく、くれ竹は話をどんどん進めていく
「坊ちゃまはその体質故、装束無しで妹君に近づく事が叶わず。霧美お嬢様は肖像画でのみしる、おとぎ話の王子様のような兄上に恋い焦がれ、高等部に兄上が在籍すると知ってからは 時折こいして梅人様のお姿を探し求めているようになったのでございます。勿論 私共も王子様モノの童話などで、お嬢様をなだめ続けてまいりましたが…」
くれ竹はそういうと、ため息交じりに言った
「さすがにネタが尽き、最近では王子キャラの出てくる少女まんがにすっかり夢中で…」
『(原因はおまえか!!!)』
「それじゃ、刺し身ちゃんは猫澤先輩がお兄さんだと知らないんですか?」
「ハルヒ…霧美ちゃんだよ…その天然さが可愛いからよし!」
「はい…何度お話しても信じては下さらず…」
「ふええ そんなのネコちゃんが悲しいよォ」
ハニーがウルウルした目でそういうと、猫澤はしょぼっとしながらハニーに答える
「はい…ですから…霧美が暗闇を愛してくれるようにと毎晩お祈りを…こうやって」
「「イヤ逆だろ、アンタが明るいとこヘーキになれヨ」」
「ああ 霧美様帰りましょう」
「や―――っおにいちゃまといっしょするの~~~!!おにいちゃまといっしょがいいんだもん~」
角松が手を差し伸べ言うと、霧美は、ぎゅーっと環に抱き着きながら泣きそう言った。それを見ていた猫澤は、ガタっと音を立てドアから外に出ようとしていた
「猫澤せんぱ…」
「…いいんです…須王くん…どうか…霧美を可愛がってやて下さい~~~~~!!」
「ああっ…猫澤先輩!!」
「そういえば、前々から猫澤先輩って環に興味がなかったかしら…もしかして…【理想の兄像】みたいに…環にあこがれてたのではなくて?」
「………」
瑠々の言葉に、環は一瞬動きを止め、次の瞬間ぱちんと大きな音を立てると指示を出し始めた
「モリ先輩、猫澤先輩を確保!!!」
「!?」
「光馨!!卒内をできるだけ暗く!!ハニー先輩、間接照明とろうそく!!鏡夜は、当分のお客様のキャンセルとお詫びを!!瑠々はその手伝いを頼む!!ハルヒは、霧美ちゃんのお守を」
「ふえっ!?おにいちゃ…」
「ごめんよ霧美ちゃん…俺は君のおにいちゃまではないんだ。俺は…いや俺たちはおにいちゃまではなく、おまわりさんなのだ!!」
「!?」
「…まぁ素敵」
「困った生徒を救うのが我々の使命!!ましてや、思いあう兄妹同士が一緒にいられないなどあってはならぬ大問題!!猫澤先輩!!」
環は、モリに捕えられている猫澤をビシィっと指さしながら言うのであった
「あなたには、徐々に光になれる訓練をしていただく!!そして同時に、俺自らの指導をもって!!霧美ちゃん好みの立派な王子キャラに改革させていただこーーーう!!!!!」
――かくして
猫澤先輩の地獄のド㏍んは始まったのでありました
「…蝋燭に揺れる君の黄金の髪…輝く象牙の肌…月光に照らされた一輪の花よりも神秘的なその微笑は…そう…まるで…あたかも呪われしろう人形のごとき禍々しさで~~~…ウフフフフ…」
「ちっがあう!!オカルト用語禁止と何度言えばわかるんですか!!モリ先輩、NGワード追加!!」
環はハリセンで、猫澤の頭をたたくと、モリに指示を出しホワイトボードにNGワードを書かせる。モリはホワイドボードにNGワードを記入していく。その横でハニーは自分の好きな絵を描いていた。環の勢いに、猫澤は半泣きで口答えをしてみる
「ヒイイイイし…しかし、私の持つ語彙はこういった類のものばかりで…υ」
「口ごたえも禁止!!」
「ヒイイイイ」
厳しい環は懐中電灯を猫澤に浴びせた。その様子を見ていた光と馨と瑠々
「スパルタ…猫澤先輩死なないかしら…私ちょっとハルヒの様子見てくるわね」
「いってらっしゃい瑠々!妹相手に、あんな口説き文句必要?」
「気を付けてね瑠々!後で呪われるかもとか、考えないんかね。ねずらしー」
「大体 言葉に心がこもってない!!もっと練習相手を霧美ちゃんと思って!!」
「そ…そうはいいますが須王君…霧美はこんな土気色の顔では…」
そういって見るその先の練習相手とは、環のクマの縫い儀るみである。それに対して返す言葉もなさそうな環。だがそんな瞬間もすぐに終わる
「問答無用!!心の目で見るのです!!」
「ひええええ」
そんな二人に、瑠々が去ってしまってヒマな双子が声をかける
「「ハイハイーイとの殿~~そんじゃコレを瑠々だと思って、愛を語ってみて下サ――イ」」
「!!」
何事もまずお手本と、双子は演劇部にあったお人形をパクってきたらしく、それに瑠々の髪っぽい鬘をかぶせ、環の前に座らせた。環は少し動揺した様子でその前に立ち尽くした。それを見ながら、双子はにやにやしている
「…瑠々…」
動揺していた環だが、少し間を置くとスッと人形の手を取り、頬を染めながら言葉を発する
「…瑠々…」
「はい?」
「るっ瑠々っ!!本物!!!!!」
「気色悪いことして遊ぶ暇があるなら、霧美ちゃんの相手でも少しはしてくれませんかね」
「はっハルヒまで!」
瑠々に似せた人形に愛を囁こうとしていたであろう環に、様子を見にいった瑠々と共に戻ってきたハルヒが、ジト目で環に言い放った。名前を呼ばれた当の本人は、きょとんとした顔で環を見ていた。
「なんだハルヒ。子供の相手は苦手か?」
「イエ。子供は嫌いじゃないんですけど…この3日間で、50冊ほど少女まんがを朗読させられまして…」
「お疲れ様ハルヒ…ごめんね?私手伝ってあげられなくて…」
「いえ!瑠々先輩は、瑠々先輩で忙しいので!気にしないでください!」
そんな話をしていると、暗い部室のドアが開いた。そこに立っていたのは霧美で、今にも泣きだしそうな顔をしていた
「ふえっおっおにいちゃああくらいよう~~~ぴえ~--」
「あらあら!霧美ちゃんついてきちゃったの?」
「んーー?どうしたどうした――?」
「わあわあ」
泣き出した霧美み、環はそっと近づくと、抱きかかえ泣き止まそうとしている
「よちよち。ほ――らもう怖くないよ~~?ほーらアメさんだー」
「きゃ きゃ」
「あははは」
その光景を見ていた猫澤は、しょんぼりと肩を落とした。
それから何日も、特訓は続いた。少しづつではあるが、成果を見せ始める。そんなある日。
「や…やった…猫澤先輩が遂に、自ら懐中電灯で照らせるように…」
『バンザーイ バンザーイ!!!ブラボー!!イヤッホーイ!!!』
「でも、下からのライトじゃちょっと怖いんじゃ…」
「何を言う瑠々よ!成功だ!猫澤先輩、やりましたね!!この調子でどんどん…」
「あっ霧美ちゃん…」
成功して喜んでいる最中、ドアが開いて、ドアの隙間からこちらを除く霧美に瑠々が気付いて声を出す。近くにいた猫澤にもそれは聞こえていて、ライトを自分に当てながらニコオっと微笑み霧美の方へ振り替える
「霧…」
「……!!……!!!」
「!!霧っ!!」
その怖い姿に、霧美は言葉にならない恐怖でその場から走って逃げていった。何度か猫澤が霧美の名前を呼ぼうとしたが、もう霧美の姿が小さくなっていた。そのことに、ショックを受けた猫澤は、涙を流しながらその場に倒れこんだ
「わー―――猫澤先輩―――――――!!!!」
「猫澤せんぱ…」
「…もう…いいんです…特訓を続けたところで霧美が、私を受け入れる保証もありませんし…霧美もこんな兄より、須王君のようなお兄さんのほうが…」
弱気な猫澤に、環が少し大きな声で怒りながら猫澤に言う
「あの子が本当に会いたいのは、あんただろう!!妹が大事なら、もっと死ぬ気で根性見せろよ!!」
「あら?環!霧美ちゃん…中庭に出ちゃってるわよ?あれ…仔猫と一緒みたい…」
「お――サスガ猫好き一家――」
「迷いネコにもすぐなつかれ…」
猫澤は、瑠々と双子の言葉に、勢いよく間に入り込み、窓から下を見る。そして、信じられない言葉を口にする
「いえ…確かに、猫澤家には代々猫を象ったものを崇拝していますが、それはあくまで【物】の形としてであって、生物自体の行為とは別物なのです。霧美は…霧美は生きた猫が一番怖いんです…!!」
「あっ猫澤先輩!?フード!」
猫澤は言い放つと、フードもかぶらずに、外に飛び出していった。瑠々とハルヒがフードを渡そうとするヒマもなく。そのころ霧美は、猫を目のまえに、目には涙をため、身動きできないでいる
「…にいちゃ…おにーちゃ…」
「霧美!!」
何だしそうな霧美の目の前に、自分の家にある肖像画に描かれた自分の兄が自分のもとへ走ってくる姿を目にする。
「霧美!!」
「おにいちゃま…!!」
「ネコちゃんやったねえ~~!!おひさまの下でもちゃんと…」
「ほ…ほ~~ら霧美。怖くない怖くない~~わ…悪い猫は、このベルゼネフが呪い殺して…」
「?」
言葉の最中に、猫澤は太陽の光にやられ、その場で倒れこんだ。
猫澤先輩は その日一生分かというほどの日光を浴び
反動で結局 特訓の前の状態に戻ってしまったわけですが
兄妹が心を通わせ合う日も そう遠くはなさそうで――…
{その後の環おにいちゃま}
「よく見たら、ぜんぜんおにいちゃまとちがう!!うそつきっ」
「ええっ!?」
「…そういうものなのかしら……かわいそうに」
~ To be continued. ~