偽りの夜明け
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「さぁて、それじゃあルシアの記憶を紐解くわよ!」
##NAME3##に連れられて家に戻ると、ルシアは食事の支度をしていた。
ドアが開く音を聞いて此方に気付いたらしく、調理器具を手にしたままパタパタと玄関まで出迎えてくれる。
「おかえりお姉ちゃん!それから……」
「この人はエイトよ」
「エイトさん?……姉がいつもお世話になっております」
「私がエイトのお世話をしてるの。勘違いしないでよね!」
「……もう少しでご飯できるから、座って待っててね!」
##NAME3##の言葉を聞き流し、満面の笑みを見せるとルシアはまた部屋の奥へと引き返していった。
##NAME3##に促されて家に上がり込むと、お言葉に甘えて寛がせてもらう。
「……そう言えば、ずっと聞きたかったんだけど。貴方はちゃんとルシアの事が好きなのよね?」
「……なんか、身内の人に改めて聞かれると答えにくいね」
「大事な事だから確認しておきたいの!もしルシアにこれっぽっちも興味が無いのなら、貴方を速攻ここから排除しないといけないんだからね?」
「そこは大丈夫です。ルシアの事凄く大切に思ってるから」
エイトの返事を訊いて感心したように##NAME3##が頷いていると、お皿を手にしたルシアがやってきた。
「何の話してるの?」
「色々よ、色々!」
「えー、何それ!気になる……」
ルシアは不満そうな表情を見せるが##NAME3##はそれを気にもせず、彼女から皿を受け取ってエイトに回す。
「大したおもてなしは出来ないけど、どうぞ」
「どうもありがとう」
それから三人で談笑しながら食事を済ませる。
##NAME3##が片づけに行っている間、ルシアと二人きりになった。
「私がいない間にお姉ちゃん、何か変な事言ってませんでしたか?」
「ルシアの事が可愛いって言ってたよ」
「えぇっ!?も、もう……お姉ちゃんってば、そんな事言ったっておやつは一日一回までなんだからねっ!」
「あははっ。二人とも凄く仲が良いんだね。僕は兄弟とか居なかったから羨ましいな」
「……でも、私達は本当の姉妹じゃないの。あ、ちゃんとお姉ちゃんの事は本当の家族だって思ってるよ?色々事情があって、私はここのお父さんとお母さんに育てられたの」
お茶の入ったカップを手に持ったまま、奥で食器を洗っている##NAME3##の方へ視線を向ける。
こんなに幸せそうなルシアの顔を目にするのは初めてだった。
彼女がどんな困難が待ち構えていても、そこに飛び込んで姉を探し続ける理由が分かった気がする。
「お姉ちゃんはいつも私の事本当の家族の様に思って接してくれる。だから、この子が妹で良かったって思われるよう、私はもっと頑張らないといけないの」
「ルシアはもう十分頑張ってるよ。頑張りすぎて君がいなくなってしまったら、##NAME3##はどんな気持ちになるか考えた事ある?」
「え?それは、どういう……」
困惑した様に視線を泳がせるルシアをいつの間にか戻っていた##NAME3##がぎゅっと抱きしめた。
「私はね、ルシア。あなたがいなくなってしまった時、本当に辛かったのよ……もう何もかも全部諦めて、後を追おうかと思ったくらい悲しかった」
「お姉ちゃん?何を言ってるの?何、を……」
「……ルシア、思い出して……」
「……あっ……」
##NAME3##の言葉に辺りの景色が揺らぎ、移ろいで行く。
暗い牢屋の中で##NAME3##ともう一人、女性が横たわっていた。
更に見渡してみると、老人も身体を倒して目を閉じている。
そこへルシアともう一人、頭から角を生やした美しい女性が駆け込んでくる。
「アンルシア!……お姉ちゃん!!」
「ルシア……逃げてっ……」
今にも消えてしまいそうな声で、##NAME3##はそう訴えかけた。
それでも##NAME3##が生きていた事に安堵したルシアはそっと手を伸ばす。
その時だった。
ルシアの身体を何かが貫いた。
突然の事に対応出来ず、ルシアは力なくその場に倒れる。
「な、に……?」
気付くとルシアと一緒にいた女性も意識を失っていた。
ルシアは消えそうな意識の中、敵の正体を確認したところで気絶してしまった様だ。
「酷い、こんなのって……」
長く延ばされた青白い蠍の尾が薄気味わるい音を立てて老人の衣服の中へ収納されていく。
動けないルシアを老人は執拗に痛めつけた。
時折意識が戻っているのか、彼女の呻き声が微かに聴こえていた。
「あの傷痕……この時に……」
もう過ぎた事とは言え、激しい怒りが込み上げてくる。
ルシアがもう長くない事を確信した老人はツノの生えた女性を連れてそのまま闇の中へと消えていった。
「……お、ね……ちゃ……」
呼吸も絶え絶えなルシアが懸命に姉を探そうと手を伸ばしている。
そこへ助けが到着したのを確認すると、彼女は安心しきった顔でこと切れた。