偽りの夜明け
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「厳密にいうと、私はルシアの中に残った想いの欠片。半分はあの子が思い描く私、もう半分は本来の私。……まぁ、そんな事はどうでも良いの!早くルシアを探しに行ってくれない?」
「ルシアを……?」
「錬金の材料の調達をお願いしてからまだ戻ってないの。だから、一刻も早くあの子を連れ帰って欲しいのよ」
さぁ行った行った!と家を追い出される。
家を出て、辺りを見回すとそこにはとても長閑な風景が広がっていた。
豊かな自然に囲まれた小さな村の中で村人たちが伸び伸びと生活を送っている。
みんな同じ様な服装をしているのは、きっと民族衣装か何かなのだろう。
「まぁ、見ない顔ね?」
ルシアを探して村の中を散策していると、村の女性に声を掛けられる。
「あの、ルシアを見かけませんでしたか?」
「ルシアなら村の外に行くのを見たわよ?また##NAME3##から頼まれごとをしたみたいね。ホント、お姉さん想いのいい子よね~」
それだけ言うと女性は畑の方へ歩いて行ってしまった。
取り敢えず村の外へ出てみようかと、出入り口らしいところへ向かって歩いて行く。
「ん……?お前、旅人か?珍しいな」
「はい。ルシアを探しているんです」
「なんだ!ルシアの知り合いか!それなら安心だな」
村の入り口で見張りをしていた男性が快く道を開けてくれた。
小さい村なだけあり、どうやらみんな顔見知りらしい。
村の門をくぐって外へ出ると、そこには草原が広がっていた。
外へ行ったという以上の手掛かりはないけれど、探してみるしかない。
広い草原を歩いていると、小さな森の入り口へ辿り着いた。
入ろうかどうしようか迷っていると、背後から魔物に襲われてしまう。
ギリギリで回避した為、大した怪我はしなかったが、目の前の魔物を仕留めようと剣を手に取ろうとすると、森の中から姿を見せたルシアが瞬時に魔物を退治してくれた。
「大丈夫ですか?……えっと、旅の方……?」
村の人たちが着ていたのと同じ服に身を包み、剣を手にしたまま不思議そうに首を傾げているルシアがどこか遠い人の様に見えた。
「……君のお姉さんに、君を呼んでくる様頼まれたんだ」
「えっ、お姉ちゃんが?……あー、遅くなっちゃったから。わざわざありがとうございます。」
剣を柄に収めて一礼すると、エイトの横に立ち、一緒に村に戻るよう促す。
「ルシアは村の人に随分と慕われているんだね」
「うーん……そうかな?それは多分、私がカメ様の申し子とか言われてるからで……ああ、ごめんなさい!忘れてください」
余計な事を口走りそうになり、ルシアが慌てて訂正を入れようとする。
「カメ様の申し子?」
折角なので色々聞いておきたいエイトは空かさず質問をした。
ルシアは言おうかどうしようか悩んだ後、ゆっくりと口を開く。
「カメ様は村の守り神なんです。で、私はカメ様の傍で拾われたから……村の人達が勝手にそんな風に言ってて。あ、迷惑ってワケじゃないんですよ!……ただ、時々その肩書がなかったら、私なんて誰にも相手にされないのかなぁ、とか考えちゃったりして……」
少し寂しそうに笑うルシア。
そんな彼女の表情は一緒に旅をしていた間、家族の話をしている時に見せる顔と同じだった。
「ルシア!遅いわよ~!」
程なくして村に帰り着くと、入り口でルシアの姉が待ち構えていた。
そんな姉を姿を見るなり、ルシアはとても嬉しそうに駆けて行く。
「ごめんねお姉ちゃん!……モーモンの親子が他の魔物の縄張りに迷い込んじゃったみたいで。だから安全な場所まで送ってたら、遅くなっちゃった」
「全くアンタは、魔物にまで情けをかけるなんて!」
「だってモーモンの赤ちゃん、すっごく可愛かったんだよ!?放っておけないよ!」
「ハイハイ。……いつもありがとうね。先に家で休んでて」
「お姉ちゃんは?」
「私はこの人に話があるから」
「はーい」
此方に小さく手を振ると、ルシアは背中を向けて去っていった。
「どう?うちの妹、すっごく可愛いと思わない?」
「え?……可愛いと、思うけど……」
「素直でよろしい!……でもちょっと変よね?いい子過ぎると思わない?」
##NAME3##に言われて、エイトは先ほどからあった違和感の正体に気付く。
自分の知ってるルシアは確かに人当たりも良かったし、誰にでも優しかった。
でも、時には不満を口にする事もちゃんとあった。
「これはね、あの子が自分はこうでなきゃいけない、と思っている景色なの。みんなに好かれて、頼られて……そういう人間で在りたい、いいえ、そうでなきゃいけないって思い込みね」
「じゃあ、ここってもしかして……」
「そう、これはルシアの心が創っている風景よ。記憶を失って右も左も分からなくなっても、責任を果たそうとしているの。人から必要とされなくなるのが怖いのかしらね……」
部屋にいても落ち着かない、と言っていたのはこの心理状態を見て妙に納得がいった。
ルシアらしい、くらいにしか思っていなかった。
けれど、彼女は自分で意識しないうちに自分の首を絞めていたのだという事が分かった。