この手に届かないのならば
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女と交戦している間に、エイト様が他の仲間に連れていかれてしまいました。
この女はただの囮、という訳でしたか。
女をなぎ倒し、私は慌ててエイト様を追いかけます。
「エイト様は私だけのものです!」
翼を使い、呆気なく追いつくとエイト様の前に立ち塞がりました。
「このイカレ女、なんなんだよ!」
顔のお綺麗な殿方が腰からレイピアを引き抜きました。
私が欲しいのはエイト様だけなのに。
どうしてこんなに邪魔が入るのかしら。
溜息を交えながら剣を振り翳していると、何時の間にか私の後ろに回り込んだ女に身を焼かれてしまいました。
熱くて、苦しい。
それでもエイト様を想って過ごしたあの日々に比べれば、こんな痛みなどなんともありません。
呻き声を上げる私の胸に、剣が差し込まれます。
何か特別な剣なのでしょうか、あの女の炎よりも熱く感じました。
「やったか!?」
倒れ込む私を剣士様が見下ろしてきます。
その奥であの女が車椅子に乗ったエイトに駆け寄り、泣きついていました。
ずっと虚ろだったエイト様の瞳からは透明な雫が零れ落ちておりました。
ああ、なんて綺麗なのかしら。
貴方は最期まで私の名前を呼んでくれませんでしたね。
「……エイト、様……」
息も絶え絶えに、エイト様の姿を目に焼きつけようと私は最期の力を振り絞ってなんとか顔を上げました。
「まだ生きてるのか!」
今度は背中から剣を受けます。
急かさなくともこの命は時期に尽きるのですから、止めてくださいな。
「……貴女は……ルシア様……?」
エイト様が目を見開いて私を見ています。
嗚呼、やっと名前を呼んでいただけた。
この時、私は初めて心から笑えました。
「お慕い……して、おりま……」
ええ、どんなに想いを告げたところであなたの答えは分かっています。
ですが最後はヒトとして……
貴方を好きだと、愛していると言わせてください。
fin.
↓あとがき↓
なんとも暗く、後味の悪いお話になってしまいましたが
こういう報われない話が好物なので書いていてとても楽しかったです!←
そして漸く短編と言える長さが分かってきた気がしました(今更)