暗い檻の中で
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「エイト、帰ってこないわね……」
ゼシカが部屋のカーテンを開けて心配そうに外を眺める。
「畜生っ……これ以上犠牲を出さないとかなんとか言ってたのに、結局こうなるのかよ……おい!ルシア!!起きろ!」
「ちょっと!何やってんのよ!」
ククールが悔しそうに壁を殴りつけて、静かに眠っているルシアの肩を揺さぶり出すと、ゼシカが止めに入る。
「そんな事したってルシアは……」
「このままアスカンタ王に任せてアッシらは先を急ぐしかねぇんでげすかねぇ」
ヤンガスの不謹慎な発言を聞いて、ゼシカが怒って彼の頭を思い切り叩いた。
「最低!あんた最低よ!」
「そんな事言ったって……じゃあ、馬姫様とおっさんはずっとあのままで良いのかよ!?」
「誰もそんな事言ってないじゃない!!!」
「あー!!!もうやめろよ!!!」
ゼシカとヤンガスの間に入って言い争いに発展しそうになるのを止めると、ククールは深く溜息を吐いた。
「……ともかく、エイトを待つしかないだろ……あいつが決めるんだ」
「私達、酷いわよね……こんな辛い事、エイトに決めさせるなんて……」
「この旅のリーダーは兄貴でげすから」
ゼシカがベッドの傍らに寄りかかって、ルシアの頬をそっと撫でる。
「お願い……ルシア、早く目を醒まして……」
「なぁ……眠り姫の話、知ってるか?」
「何よ、こんな時に……あんた、まさか……」
ククールの唐突な発案にゼシカが嫌なものを感じて表情をしかめる。
「眠り姫?なんでげすか、それは」
「魔女の呪いで眠りについたお姫様が王子様のキスで目を醒ます、って物語よ。……この場に王子様なんていないから無理ね」
「いやいやいや、物は試しっていうし?」
「ちょ、ちょっと!」
ククールがルシアを見下ろし、そっと顔を近付ける。
いつもなら止めに入るゼシカが静かに見守っているという事は、かなり追い詰められているのだろう。
もしかしたら、そんな期待をどこかに抱いて動向を伺う。
あと僅かで唇が重なりそうになったその刹那。
室内に眩い光が立ち込めた。
3人は何事かと警戒しつつも、光で目が眩んでしまい現状の確認が出来ない。
「……ただいま。驚かせちゃったかな?」
聞き慣れた声が耳に入るなり、それぞれ胸中で安堵する。
「エイト、遅かったじゃない……」
「ごめん、夜になるのをずっと待っていたんだ」
エイトの背後に人の気配を感じ、なんとか目を凝らしてその人物を確認する。
「……イシュマウリ?」
「思っていた通り、この者は強力な呪いを受けているようだ」
挨拶がてらハープを掻き鳴らすなり、久し振りに姿を見せたイシュマウリは早速ルシアの容態を伺っていた。
「思っていた通り……?それじゃあ、ルシアは最初から……」
「初めて見掛けた時から彼女からは何か悪いエネルギーを感じていたのだが……その時はそれが何なのか把握しきれなかった」
「それはルシアが一回死んでるのと関係が」
「ちょっとヤンガス!余計な事言わないの!」
ヤンガスが言おうとしている事の危うさに気づいて、ゼシカが声を上げるが、イシュマウリは特に気にとめた様子もなくルシアの額に手をあてた。
「……彼女の心に暗い霧が纏わり付いている。何か魔物に呪いをかけられるような事がなかっただろうか?」
「呪いね……ルシアに限ってそんな事……」
「あ……あの時かも」
考え込んでいたゼシカの横でエイトがふと、声を上げた。
「マイエラ修道院で地下道通った時に亡霊と戦闘になって直ぐだったんだけど、何かルシアの様子がおかしかった。呼び掛けても反応しなかったし……もしかしたら、あの時に……」
ゼシカとヤンガスは先に戦闘を始めていたから気付いていなかったかもしれないが、エイトはルシアの異変に気付き、声を掛けていた。
少し経ってルシアは正気を取り戻し、大丈夫だと言っていたからそのまま戦闘に加入してもらったのだけれど。
でも、この出来事はもう随分前にあった事だ。
ルシアが体調を崩したのは結構最近で、直接関わりがあるとは到底思えない。
解せない表情をしている4人を余所に、イシュマウリはゆっくりと手にしていたハープを奏で始めた。