海上に揺らめく思い・前編
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パーティーメンバー全員が部屋に入ったのを確認すると、最後にやってきたリーシャが扉を閉める。
「それじゃあ、早速仕事の話をさせてもらうわね」
「お前達の仕事はこの船の護衛だ。あの魔物はいつ海上から姿を見せるか分からない。よって、今回の公演が無事に終わるまでは乗船していてもらう」
「公演があるのが一週間後だから、少し長旅になってしまうのだけど……その間の皆さんの衣食住はしっかり保証しますし、船内も自由に歩き回って貰って構いません」
「稽古の邪魔だけはするなよ?大事な公演が控えてるんだからな」
「……そんな感じで、宜しくお願いします」
一礼するリーシャの横で、カインは険しい顔をしたままエイト達を見据えていた。
リーシャはともかく、カインにはあまり歓迎されていないらしい。
リーシャによって食事の時間が伝えられると、二人は稽古に行くと言って部屋を去って行った。
「……あのカインって人、なんか敵意剥き出しって感じね」
「リーシャはなかなかの美人だな」
「アンタは……ホントそういう所しか見てないんだから……」
「妬くなよ、君が一番さ」
ゼシカが呆れた顔でククールを一瞥すると、船室のドアノブに手をかける。
「……気分転換にちょっと甲板にでも行ってくるわ」
「魔物が出るかもしれないし、みんなで待機しておこう?」
エイトの提案に乗り、戦闘に向けて準備をしっかりと整えると甲板へと向かう。
事前にリーシャの案内を受けていたおかげで難なくそこへ辿り着く事が出来た。
「こんな天気だととても魔物がいるなんて思えねえでげす。アッシは眠たくなってきたでがすよ……」
「ヤンガス、仕事だから寝たらダメだよ」
「わかってるでげす!」
エイトの注意を受けて、ヤンガスが周囲に目を張る。
しかし波はとても穏やかで、いい天気で、潮風が心地よくて。
武装して海を睨みつけているのは勿体ないと誰しもが思っていたその時。
「ま、魔物だ~!」
船の警備をしていたらしい船員の声が上がり、それを聞きつけてみんなで其方へと駆けて行く。
けれど、甲板に上がってきていた魔物はいつも戦っているそれと同じで。
拍子抜けしつつも難なくそれを撃退する。
「魔物って……これの事かしら?」
「いや、流石に違うだろ。噂に訊いたヤバイ感じが全くしなかったしな」
「雑魚の掃除もしないといけないって訳ね。面倒だわ」
少々怠そうにしているゼシカとククールの傍らで、ルシアがどこか神妙な面持ちで海を眺めていた。
エイトがそれに気づき、彼女に声を掛ける。
「ルシア?どうかしたの?」
「……なんだか胸騒ぎがして……」
「大丈夫、みんなで力を合わせればどんな敵にだって負けないよ」
「うん……そうだよね……」
エイトに励まされ、気持ちを落ち着かせようとルシアは胸に手を当てて、深呼吸を繰り返す。
しかし、胸中を渦巻く靄は消えないままだった。
時折魔物に遭遇はしたものの、これといって大きな事件は起きなかった。
そんなこんなで時間が過ぎて行き、日が暮れ始める。
甲板へ上がってきた他の傭兵達に場を任せ、エイト達は一度船内へ戻る事にした。
割り当てられた部屋へ入ろうとしていると、リーシャが姿を見せる。
「あ、皆さん丁度いい所に!これから夕食なんですけど、良かったらご一緒にいかがですか?勿論、迷惑でしたらお部屋の方に食事を運ばせてもらいますけど……」
「……だって、どうする?」
リーシャの誘いを受けてエイトがみんなに問いかける。
「俺は美女の誘いは断らないタチでね」
「ふふっ、褒めても何も出ませんよ?では此方へどうぞ!」
ククールの一言で全員食堂へ赴く事が決まった。
食堂に行き着くと既に劇団員や傭兵達が集まっており、賑わいを見せていた。
「よぉ、兄ちゃん!新入りか?若いのに偉いなぁ」
「お兄さん素敵!ねぇ、こっちに座ってよ!」
気さくに声をかけてくる人たちに戸惑いながらも、それぞれ輪に溶け込んでいく。
ルシアも団員に呼ばれ、テーブルに着いた。
「アンタ達の戦いぶりを見せて貰ったけど、慣れたもんだなぁ」
「女の子なのに凄いのね!かっこよかったわよ!ささ、遠慮しないでどんどん食べて!この船に乗った時点で貴女達はもう家族みたいなものなんだからね!」
「ど、どうもありがとう……」
団員達に料理の盛られた皿を次々に勧められ、躊躇しつつもそれを口に運ぶ。
そんなルシアの前にリーシャが顔を覗かせた。
「えっと……貴女は確かルシアさんね。料理はお口に合うかしら?」
「はい。とっても美味しいです」
「それは良かった!それにしても皆さん戦い慣れているのね。散々文句を垂れてたカインもすっかり黙っちゃって」
リーシャの視線の先にはカインがおり、彼は他の団員と会話を交えながら食事を楽しんでいた。
正直カインに対してはあまりいい印象が無かったのもあり、彼が笑顔を見せている事を意外に思ってしまう。