海上に揺らめく思い・前編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一行はポルトリンクの港を訪れていた。
潮風を頬に受けながらゼシカが晴れやかな顔で海を眺めている。
その隣でルシアがどこかこの地を懐かしむ様に佇んでいた。
少し離れた場所ではエイトが見知らぬ男女二人組と話込んでいる。
「ここに来るのも随分久しぶりな気がするわね」
ゼシカに話を振られ、ルシアがそちらに身体を向ける。
「うんうん。……でも、どうして急に立ち寄ったのかな?」
「なんか、アスカンタのパヴァン王から直接依頼があったんだとか。最近海に悍ましい魔物が出て、もう船が何隻も沈められてるそうよ」
「それは大変……早く何とかしてあげないと」
「敵は神出鬼没、どんな姿なのかも分からないし、どんな相手なのかも分からない。突然船が動かなくなったり、船底に穴が空いたり……その魔物の力なのか分からないけれど、雷に打たれたって話も訊くわ」
「なんだか手強そう……私達で手に負える相手だと良いのだけれど……」
一抹の不安を覚えながら、ルシアはエイトの方に目を向ける。
話が付いたのか、エイトが此方に駆け寄って来た。
彼の背後で依頼人と思われる男女が軽く会釈をしたので、ルシアも頭を下げた。
「どうだった?」
「うーん……取り敢えず、護衛って形で引き受ける事にはなったんだけど」
ゼシカの問いに対し、エイトは少し煮え切らない様子だった。
敵の情報が少なすぎるのもあって、矢張り不安を感じているのだろう。
「大丈夫、こっちにはルシアがいるじゃない」
「わ、私!?無理無理!戦った事のある相手だったらまだしも、正体不明っていうのはちょっと……」
「そうだよね。多分、ラプソーンの影響を受けて現れた魔物なんだと思うけど……全力で倒すつもりで挑めばなんとかなるよ。今までだって結構行き当たりばったりで戦ってきたし」
「それもそうね」
「それじゃあ、僕は他のみんなを呼んでくるから。二人は先に乗船してて。そこにある船が今回の依頼主のものだよ」
そう言ってエイトが示した船はそこそこ大きいものだった。
所謂豪華客船、というものなのだろうか。
「なんかね、この船は劇場船なんだって。世界のあちこちを回って公演をしてるらしいよ」
「こんなご時世に……って思うけど、でもこんな時だからこそ、人々に勇気を与える仕事って素敵よね。よーし、一肌脱ぎますか!」
気合を入れて船の方へ歩んでいくゼシカの後にルシアも続く。
すると、先程までエイトと話込んでいた男女が此方にやって来た。
「エイトさんのお仲間の方ですよね?私はリーシャ、こっちがカイン」
ブロンドの髪を肩まで伸ばした愛嬌のある女性が、満面の笑みを浮かべる。
その隣で少し気難しそうな男性がじっとゼシカとルシアを見ていた。
「……本当にこんな連中を信用していいのか?」
「カイン!失礼でしょ!……ごめんなさいね、カインってば昔からクチが悪いの」
「女連れの傭兵なんて聞いたことないぞ?」
「パヴァン王が紹介して下さった方々だもの、大丈夫に決まってるでしょ?……ささ、お二人とも!船内へどうぞ!」
リーシャにそう促され、二人は顔を見合わせながらも大人しく乗船する。
カインは外に残り、エイト達の到着を待っているようだ。
「船の中を案内するわね!こっちが団員の部屋で、こっちが……」
「劇場船ってだけあって結構広いのね。迷子になりそうだわ」
リーシャに連れられて、船の中を見て回る。
散々船内を連れまわされた後、客室に通されて少しの間そこで待つように言われた。
リーシャの姿が視えなくなるのとほぼ同時に、ゼシカの口から溜息が零れる。
「なんか船の中を歩き回るだけで疲れちゃったわ」
「でも……劇場はとっても素敵だったね!あんまりこういうの見た事ないからちょっと楽しみかもしれない」
「ルシア……私達は観劇に来た訳じゃないのよ?公演中はどうせ見張りか戦闘してるわよ」
「その厄介者を倒せば少しは航路も安全になって、公演を見せて貰えるかもしれないよ?」
「……それは、まぁそうね」
ゼシカも公演に興味があるらしく、ルシアの言葉に僅かに期待を寄せる。
「それなら、さっさと魔物退治してゆっくり息抜きさせてもらいましょうか!」
「うん!そうしよう!」
ゼシカと二人でそんな呑気な会話を交えていると、部屋の扉が叩かれる。
開いた扉からはエイト達が姿を見せた。