コネクト~真実と疑惑~
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お姉ちゃんの笑顔が脳裏に浮かぶ。
いつも明るくて、元気で、ちょっと破天荒で……
それでも優しくて、大好きな私のお姉ちゃん。
あの時はどんなに腕を伸ばしても届かなかったけど、今は違う。
お姉ちゃんを救い上げるだけの力を持っている。
だから……。
私は行かないといけない。
「道を誤って、例えこの世界を……食らい尽くす結果になったとしても……私は、自分の世界へ還る……」
自分勝手な事は分かってる。
だけど私が最も優先するべき事はお姉ちゃんの救出。
今までの事はそこへ至る為の糧。
決して他人の都合の良いように振り回されてきた訳じゃない。
「運命に背中を押されてここまで来ちゃったのだとしても、それはそれで良いよ?でも……私は、私の意志で動いてるつもり。人形なんかじゃない……!」
「そう。それならば……これ以上の対話は不要ね」
「えっ……」
首元に当たっていた刃がスッと引かれた途端、其処に強烈な熱を感じる。
生暖かい液体が溢れ出し、意識が霞みだす。
「その言葉が真実だと言うのなら、今すぐその傷を癒してみなさい。それが出来なければ貴女は終わり。さぁ、どうするのルシア?」
傷口を手で抑えて蹲る私をあの人は冷たい目で見降ろしていた。
真っ白な床には血だまりが出来ていて、その面積を今も尚少しずつ拡げている。
けれど私の口から回復呪文が紡がれる事はない。
言霊が、思い出せない。
このまま死んじゃうなんて、嫌だ……。
お姉ちゃんにちゃんと逢えるまで、もう少しだったのに。
あと一歩だったのに……。
『ルシア……しっかりして!ルシア!』
「だ……れ……?」
何処からか、私を呼ぶ声がする。
それが誰のものなのか、薄れていく意識の中で必死に思い起こす。
『ルシア!ルシア!』
待ってて……今、今応えるから……。
『ルシア……大好き、だよ……』
「……わたしっ……私……!」
心の中に、何か暖かいものが湧き上がる。
優しく穏やかな顔で、私に手を差し出す誰かの姿が脳裏に映った。
それはこの世界に来て初めて感じた気持ち。
くすぐったくて、少し苦しくて。
身内を想うものとは違う、愛のカタチ。
そっか……。
わかった気がする。
私が本当に恐れていたのは
貴方の心が離れていく事だったのね……。
大切な仲間を手にかけた罪より、貴方に拒絶される事が怖かった。
どうやって自分が見たものを貴方に伝えたら良いのか分からなくて、気持ちがどんどん埋もれていって……。
傷口から手を離して、ゆっくりと立ち上がると
目を閉じて意識を集中させる。
小さく息を吐き、今まで何度も紡いだ言霊を口にする。
「……ベホイム!」
体内で膨れ上がった魔力が放出されると癒しの光が身体を包み込み、傷を塞いでいく。
久しぶりの感覚に私は思わず自分の両手を見遣る。
一連の流れを見ていたらしいあの人は、剣を収めてパチパチと小さく拍手をしていた。
「見事なものね。……その気持ちを自覚出来たのなら、大丈夫かもしれない」
「それは、どういう……」
その気持ち、を指すのがエイトへの愛情だとわかった私は少し恥ずかしく思いながらも訊き返す。
けれど、その問いかけに返事はなかった。
いつの間にか大きく開け放たれた扉を指さして、其処へ行くように促される。
「もう此処に用事なんてないでしょう?早く帰った方がいいわ」
「……あなたは……一体誰?」
どうせ答えては貰えないと思いつつも、身体を扉の方へ向けながら訊いてみる。
「私は……この世界の意志……異界から現れた……貴女を……」
まさか答えて貰えるとは思っていなかったから、私が驚いているとその人は徐々に姿を消していく。
世界の意志?どういう事なの……?
よく分からないけれど今は一刻も早くここを出なければいけない。
何故だかそんな気がして、扉へと向かって駆けだした。
扉の向こう側は光で溢れていて何も視えない。
けれど、私は構わずそこへ飛び込んでいった。
次に目を開けた時、すっかり見慣れた顔が目の前にあった。
その後ろにはなんとなく見覚えのある天井が広がっていて……。
今朝までゼシカが眠っていた場所に、私も運び込まれたみたい。
「ルシア……良かった……」
安堵に満ちた表情のエイトは小さく息を吐くと、そっと頬に触れてくる。
その温もりを感じながら、ふと窓の方へ目を向ける。
「エイト……私、どれくらい寝てた……?」
「ほぼ一日、かな。あ、だけど気にしないで良いからね?お陰でみんなゆっくりできたし」
塔を登ったり下りたり町中を駆けまわったり、稀に見る慌ただしさだったから、みんなが休めたのなら良かったけれど。