コネクト~真実と疑惑~
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「……エイトよ、恥を忍んで頼みたいことがある……レオパルドを退治してくれ」
「それで……良いんですか?」
エイトが神妙な面持ちで訊ねると、ハワードさんは力なく頷いた。
「わしには分かるのじゃ。あれはもうレオパルドではない……強大な魔の力に支配されておる。賢者の一族の仇をお前の手で討ってくれ……!」
「……はい、わかりました」
エイトも意を決した様に首を縦に振り、みんなの意思を確認するように一人一人に目を向ける。
みんな気持ちは同じだったようで、それぞれが頷いていた。
「お前達にも色々迷惑をかけた。何か礼をせねばならんな」
ハワードさんは少し考えた後、ゼシカに目を向ける。
「そっちの娘さんはまだ魔法使いの天分がまだ半分ばかり眠ったままのようじゃな。わしの力で眠っている天分を軽く揺り起こしてやろう」
ハワードさんが両手を掲げ、呪文を口にするとゼシカの周辺に光が巻き起こる。
「身体の底から……力が、溢れてくる……!私にこんな力が眠っていたなんて……!」
ゼシカが自分の両手を見つめながら歓喜の声を上げた。
「そうだ、ルシアもなんとかして貰えるんじゃないか?」
嬉しそうにしているゼシカを見ていたククールが私の顔を見ながらそう口にする。
それが聴こえていたらしいハワードさんも此方へ顔を向けて来た。
「うーむ……なるほどな。言の葉を失っておるのか……」
「呪文が使えないとこの先困るんです!……もしも何か策があるならお願いします!私……なんでもしますから!」
「それならば……多少強引なやり方になるが、方法がない訳ではない」
「本当ですか!?どうすれば……!」
食い気味な私を落ち着かせようと、エイトの手が肩に触れて来た。
それによって私は自分が冷静さを欠いている事に気付かされ、小声でエイトにお礼を伝える。
「お前の力を封じているのはお前自身じゃ。ならば回廊を潜って閉まっている扉を開けてしまえばいい」
「扉を……開ける?」
「魔法とは魔力だけが全てではない。術者の心が大切なのじゃ。怒り、憎しみ、喜び、悲しみ……そういった感情も全ては魔法へと通じておる。お前は心を閉じてしまったが為に、魔力が魔法へと昇華する事ができなくなっておるんじゃ」
それは何となく自分でもわかっていた。
魔法を使おうとすると嫌な景色が視えて、頭の中が真っ白になってしまう。
私自身があの恐怖を受け容れられていないから、きっとこんな事に……。
「そこでだ。今からお前の意識をお前自身の中に送り込む術をかける。後はお前次第じゃがな」
「それって……失敗とかしないんですか?」
エイトがハワードさんに問いかけると、彼は少し表情を曇らせた。
それを目にしたエイトは小さく息を吐く。
「失敗する事もあるんですね……」
「何分嫌な物を沢山見せられる事になるだろうからな……それを乗り越えられない場合、またそれらに呑まれてしまったら最後、二度と己の中から出てこれなくなるじゃろう」
「……ルシア、どうする?」
エイトが心配そうに私の顔を見てくる。
勿論、私の心はもう決まっていた。
「急いでるのにごめんなさい、私に少しだけ時間をください。……大丈夫、きっと戻って来るから」
「……わかった。信じて待ってる」
エイトの了承を得た私は、ハワードさんの方へ向き直る。
私の決意を汲み取ってくれたハワードさんは、何か呪文を唱えだした。
すると段々と意識が遠のいていき、私はそのまま気を失ってしまった。
それからどれくらいの時が流れたのだろう、目を覚ました時には見知らぬ場所にいた。
石造りの白い部屋の奥には大きな扉が視える。
(もしかして……これが、心の扉なの……?)
「ルシア」
「えっ……?」
誰かに名前を呼ばれて振り返ると、すぐ後ろに人が立っていた。
その人は自分と同じくらいの身長で、この空間の床に擬態できるんじゃないかってくらい真っ白なローブを身に纏っていて。
フードを被っているから顔は分からない。
「自分を護る為に閉じた扉を貴女は開けようというの?」
「自分を、護るため……?」
言われている事の意味がわからなくて聞き返す。
「そう。こうしないと貴女は壊れていた。それほどまでにこの世界が貴女に見せたものは残酷だったの」
「この世界?それは……どういう意味ですか?」
「貴女が今いる世界の事よ。アストルティアではなく、エイト達がいるこの世界」
私が狼狽えていると、白い人はゆっくりと此方へ近づいて来る。
何かされるのかと思った私は思わず二、三歩退いていた。
「この世界は貴女の力を恐れた。貴女が介入する事で、救われる筈の世界が崩壊してしまう……そんな風に考えたのかもしれないわね。だから貴女自身の力を用いて、貴女に可能性の一つを提示し、警告を促したの」
「ちょっと、待って……何のことだか……私には……」
「ヒトに意志があるように、世界にだって意志があるの。無暗やたらに傷付けられたくないのは世界も同じなのよ」
「私がこの世界を傷付けるというの……?」
「ええ、そうよ。現にそれは起こってしまった。あの杖を手にした瞬間、貴女は仲間達を殺して世界を崩壊させようとしたでしょう?」
「それは……」
まだ混乱気味だけど、少しずつ疑問が氷塊していく。
つまり、あれは幻でも悪夢でもなかった……?
実際に起きた事だった……?