コネクト~真実と疑惑~
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「良かった……生きてる……」
ゼシカの無事を確認して、一気に緊張が解れて身体の力が抜ける。
「何をしている?早くその女にとどめをさすのじゃ!」
ハワードさんの無駄に大きな声が耳に入り、私が言い返そうとするとそれを遮るようにしてエイトが事情を説明しだす。
いつの間にかやって来ていたトロデ王もエイトと一緒に話をしていた。
なんとかハワードさんを納得させられた私達は、まだ眠ったままのゼシカを宿へ運ぶ事にした。
その際にハワードさんがあの黒い犬がいなくなったとか何だとか騒いでいたけれど、今は構っていられない。
宿で部屋を借りて、エイトがゼシカの身体をベッドに横たえる。
外傷は見られないけれど念の為、ククールが回復魔法を施していた。
「お屋敷のみんなもきっと怪我してる……助けてあげられたら、良かったんだけど……」
ククールの魔法を見て、ふと衝撃派を受けて気を失っていた衛兵の事を思い出す。
「屋敷の人間はあの大呪術師様が何とかしてるだろ。俺達が手を貸してやるまでもないさ」
「……やっぱり呪文が使えないって不便。早くどうにかしないと……」
「ルシア、焦らなくても大丈夫。少しずつ取り戻して行けばいいよ」
「私、何も出来なかった……それどころか、ゼシカの事……」
「僕だって同じ事考えてたよ。いざとなったら……って。でも結果的にゼシカはこうして戻せたんだし、気に病まなくて良いんじゃないかな」
「エイト……ありがとう」
エイトは優しい言葉をかけてくれるけど、私は内心、どうしようもないくらい焦っていた。
もし、このまま呪文が使えないままアストルティアへ帰る事になってしまったら?
お姉ちゃんを救い出すのにきっと戦闘は免れない。
囚われたお姉ちゃんが酷い怪我をしていたら、その時どうやって治療する?
自分でどんなに考えても、どうすれば良いのかなんて分からない。
……そっか!だったら、呪文に詳しい人に相談してみれば何か解決の糸口が掴めるかもしれない。
幸いな事に、この町にはそういう人がいるし。
「私、ちょっとハワードさんの所へ行ってくるね」
「えっ……急にどうしたの?」
突然部屋を出て行こうとする私を、エイトが些か驚いたような顔で見てくる。
「あの人、呪文に詳しそうだから……何か知恵を授けてくれるんじゃないかなって。まぁ、あの性格だしタダでは無理だろうけど」
「止めとけよ、変な事させられるかもしれないぜ?」
「変な事って……例えば?」
私がそう訊くと、ククールは腕組をして考える様な素振りを見せる。
「んー、そうだなぁ。俺がレディと合意の上でやってるような事とか?」
「……いつもどんな事してるの」
みんなの冷ややかな目線がククールに集中する。
ククールはコホンと咳ばらいをすると、ゼシカが目を覚ました時の為に何か食料を買ってくると部屋を出て行った。
「行くにしても、後で一緒に行こう?それに今は怪我人の治療とかで忙しいかもしれないしさ」
「うん……そうする」
ここは大人しくエイトに従っておく事にした私は、部屋の隅にあった椅子に腰かけてゼシカの回復を待った。
ゼシカは時折うなされていた。
悪い夢でも見てるのかな……。
心に負った傷や悪夢はいつまでも追いかけてくる。
そして、それらから直ぐに逃れるのは難しい事は私自身、よく知っている。
彼女が今後、この事を気負って生きていく事にならなけれな良いなと切に希う。
「……いけない!」
いつの間にか眠っていてしまったらしく、私は慌てて立ち上がった。
外を見てみると、暗がりの空が段々と明るみを帯びてきている。
これから夜が明ける様だ。
「ルシア、目を覚ましたか」
そう言葉を投げかけて来たのはトロデ王だった。
どうやらずっとゼシカを看ていてくれたらしい。
「トロデ王……!私ったら、ごめんなさい……!」
「気にするでない。昨日は塔を登ったり下りたりで疲れたじゃろう?ゼシカの事はわしに任せておいてゆっくり休んでおくと良いぞ」
「で、でも……!」
ふと周囲を見てみると、エイトやヤンガス達も毛布に包まって床で休んでいた。
トロデ王の言う通り、昨日は一日走りっぱなしだった。
相当疲れが蓄積されていたのか、みんなぐっすり眠っている様だ。
「後は私が看ていますから、トロデ王もどうかお休みください」
「いいや、わしに任せておけ。……こんな時くらいしか力になってやれんからのぅ」
「……ありがとうございます」
ここは大人しくトロデ王の厚意に預かろう。
そう思い、私は立ちあがった際に床に落としてしまった毛布を手にして身体にかけた。
これ……誰がかけてくれたんだろう……。
起きたらお礼を言わないと。
そんな事を考えているうちに、私は再び眠りへと落ちて行った。