コネクト~真実と疑惑~
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「くっ……チェルスさん、大丈夫ですか?」
「はい、なんとか……」
一緒に吹き飛ばされた私はなんとか立ち上がると、地面に倒れていたチェルスさんを抱き起す。
今ので身体のあちこちを打ち付けてしまった様で、痛みからかチェルスさんは眉間に皺を寄せていた。
こんな時、回復魔法が使えていれば……。
「折角守りは万全にしておきなさいって忠告しておいてあげたのに、随分と無防備なのね?」
「だまれっ!ここから先へは一歩も行かせないぞ!ハワード様に指一本触れさせるものか!」
チェルスさんがよろよろと立ち上がり、ゼシカと対峙する。
彼の横にはいつの間にかあの黒い犬が居て、一緒にゼシカを威嚇していた。
「ハワード?くすくす……」
「なっ……何がおかしいんだっ!」
不敵な笑みを浮かべるゼシカに、チェルスさんは動揺しつつも果敢に言い返す。
そんな彼を見たゼシカはやれやれと肩を竦めて見せると、真っ赤に染まった瞳を静かに閉じた。
「悲しいわ……。自分の血に刻み付けられた大いなる運命を貴方はまだ知らないのね?」
「僕の、運命……?そ、それがなんだと言うんだ!」
「私が狙っていたのは初めからあんな見せかけだけの男じゃないわ。この杖が全て知っているの……」
ゼシカは再び瞳を開き、愛おしそうに杖を撫でる。
「私の狙いは……かつて暗黒神、ラプソーンを封印した七賢者の一人……大呪術師クーパスの末裔……」
上空に浮いていたゼシカがふわりと地面に着地する。
そして杖の先をチェルスに向けて、笑みを浮かべた。
「チェルス……あなたの事よ」
「そ、そんな……だって、僕は……」
チェルスさんが狼狽える。
先程までの威勢はなくなってはいるものの、ゼシカから視線を逸らそうとはしなかった。
「悲しいわね。あなたの命を護るべき筈の男が、その事をまるで覚えていないなんて……」
ゼシカがチェルスさんにじりじりと近づいて来る。
「だめっ!ゼシカ、もう止めて!」
チェルスさんを庇う様にして私は彼の前に立った。
極力ゼシカと戦うような事は避けたいのだけれど、そうも言ってはいられない。
「……ルシア、邪魔をするなら貴女も……」
ゼシカが杖を振り上げようとする。
すると、近くで複数の足音が聴こえた。
「ゼシカ!……ルシア!」
「エイト!」
騒ぎを聞きつけたらしいエイト達がこの場に到着した。
それを見たゼシカは不機嫌そうに杖を構え直すと、再び上空へと舞い戻っていく。
「面倒ね……いいわ、4人の賢者の魂を得たこの杖の本当の威力を見せてあげる……!」
彼女が杖を掲げると、ゼシカの頭上に巨大な炎が創られていく。
強い魔力が発生し、その影響を受けて地響きが起こり出す。
このままじゃいけない……!
だけど、今の私の力じゃどうにもできない……!
「なんとかしなくちゃ……でも、どうすれば……?」
万が一盟友の護りで防げたとしても、きっとこの規模の魔法だと護れるのはせいぜい私達周辺だけ。
町は吹き飛んでしまうだろうし、周囲に集まった人々はきっと……。
「燃え尽きるといいわ!この町と共に……お前たちの命も!」
ゼシカの甲高い笑い声が響き渡る。
次第に面積を膨らませていく火球を前に、私はそっと剣の柄に手をかけた。
「ルシア……。」
「ゼシカを止めるには……もう、これしか……」
エイトが私の手元に視線を向ける。
杖の魔力を放出しきるには少し時間がかかりそうだから、その間にゼシカを仕留められれば、みんなは助かるかもしれない。
だけど……。
「……ルシア、無理しないで」
「……でも、これじゃあ……!」
無意識のうちに震えていた私の手に、エイトのそれが重ねられる。
彼は首を横に振ると、自分の剣を引き抜いた。
「こんな事、君にさせられないよ」
「エイトっ……」
「えーい!邪魔じゃ!どけどけどけーい!」
ハワードさんの声が聴こえて来たかと思いきや、私達の間に割って入って来る。
「ぶわっはっはっは!どうやら間一髪だったようじゃな!結界が漸く完成したわい!」
ハワードさんは大声で一頻り笑うと、手の中に術式を構成し始める。
「このわしの命を狙う不届きものめが!わしの超強力な退魔の結界をくらえぃ!とりゃぁ!」
組み上げられた術式が強大な光を放ち、周囲に展開していく。
上空にいたゼシカが光を浴びて体勢を崩した。
その後は、眩しくてよく分からなかったけれど次に顔を上げた時、ゼシカは地面に倒れていた。
「ゼシカ……ゼシカ!」
私はゼシカに駆け寄って彼女の容態を伺った。
衰弱はしているものの、青白かった肌は元の健康そうな色へと戻り、胸は規則的に上下している。