コネクト~希望の光~
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あの杖……もしかすると……。
思い当たる節があるわけでもないけれど、確証がない。
あの出来事が夢か現実なのか自分でもよく分かっていないのに。
「……あのね、エイト……」
けれどこれから先、エイトと一緒に行くのならどの道この事は伝えておかなければいけない。
エイトが私を戦力として数えてくれている事を分かっているから。
私は小さく息を吐いて、真っ直ぐにエイトを見つめた後にそっと彼に手を翳す。
「ホイミ」
「え……何?」
言霊を口にしたのに何も起きないし、突然何故呪文を使ったのかも分からないしでエイトが困惑しているのが見て取れる。
翳したままだった手をそっと自分の膝に落とした。
「私ね……今、呪文が使えないの」
「マホトーンにかかった……訳じゃなさそうだね。もしかして、ドルマゲスに何かされた?」
「そういう訳じゃないと思う。多分……」
これは私の心の問題だ。
今までだって割と悲惨な目に遭ってきたけど、こんな事一度も起こらなかった。
だけど、今はその理由が分かる気がする。
エイト達の事を心から信頼しているから。
大切に思っているから。
だからこそ、怖い。
自分の手で大切なものを失くしてしまう事が。
その引鉄に指を掛けられてしまう事が。
そんな想いが強くなってしまったからこそ、きっと私は呪文が使えなくなったのだと思う。
「……ルシア」
膝に置かれていた私の手にエイトの手が重ねられる。
その途端、自分でもびっくりするくらい肩が跳ねてしまったのが分かった。
「ごめん、嫌だったかな……」
「だ、大丈夫。ちょっと驚いただけだから……」
「……本当に驚いただけ?なんだか……」
エイトが言いかけて、部屋の扉が開く音が耳に入ってきた。
「ルシア、目が覚めたのか」
ククールが部屋に入るなり、私の方へ視線を向けてくる。
私は彼を見返した後、少しだけ頭を下げた。
「迷惑かけてごめんなさい……だけど、何ともないから」
「そうか?まだ顔色が良くない気がするが……」
「私は良いから、ゼシカを探そう?……なんだか嫌な予感がするの」
これ以上自分の事で時間を取らせてはいけないと思って、私はベッドを降りようとするけれどエイトに肩を押されて阻まれる。
「もう少し休んでて。こっちの事は心配しなくて大丈夫だよ」
エイトの気遣いが嬉しくて、けれど申し訳なくて。
「……エイト。私にまだ……価値、あるかな?」
気が付いた時にはそう訊いていた。
エイトは優しいから、絶対いらないなんて言わないのに。
分かってたけど、どうしても止められなかった。
エイトは一瞬キョトンとした後、直ぐに柔らかな表情を見せてくれた。
「呪文の事?それなら心配いらないよ。回復はククールがいるし、攻撃呪文もゼシカ程じゃないけど僕もそこそこ使えるし……」
「……ごめんなさい」
「ルシア、さっきから謝ってばっかり。気にしなくて良いんだよ?僕達は仲間でしょう?」
「うん……ありがと……」
失踪したゼシカの手掛かりを掴んでくると言って、エイトはククールと部屋を出て行った。
私はベッドに沈んだままただ天井を眺めていた。
エイトが口にした『仲間』という言葉が胸の中に今も暖かく響いている。
そうだよ、私達は仲間なのだから。
傷付けたりするわけない。
でも、それならこの気持ちは一体なんだろう?
どうしてこんなに苦しいの?辛いの?
さっきもエイトに触れられて、少しだけ怖いと思ってしまった。
もしかしたら次に手を掛けられるのは私の方かもしれない、なんて――。
『コネクト~真実と疑惑~』へ続く
☆☆☆
一応ここまでが前編になります。
次からいよいよ中編に入ります。
といってもいつも通り書いて行くわけですが!(笑)
この章だけやたら長くなってしまったので、前編後編に分けようか迷い中です……。
加筆修正予定があるので、取り敢えずその時で良いかな……?
完結までまだまだかかってしまいそうなので(出来るだけ急ぐ予定ではありますが)
修正等はちまちまやっていこうと思います。
一先ず、ここまでお付き合い下さって本当にありがとうございます!
これからもコネクトを宜しくお願い致します!
るり.