コネクト~希望の光~
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分身なんて所詮は紛い物。
けたたましく響く耳障りな笑い声を上げさせる間もなく仕留めてしまおうと、私は取り敢えず分身の方へ標的を定めた。
範囲呪文のイオグランデやマヒャデドスならばきっと分身を消し去る事は容易なのだけれど、言霊がどうしても出てこない。
どうして……?
呪文を唱えようとすると、身体が硬直してしまう。
先ほど見た光景が私に攻撃呪文を唱える事への恐怖心を抱かせてしまった様で、詠唱すら儘ならなくなっていた。
仕方がないので物理攻撃で攻めて行こうとゼシカを魔法陣の中に残し、私は両手剣に持ち替える。
「ルシア……?」
「……大丈夫、きっと勝てる!」
彼なりに私の様子がおかしいと感じ取っているのか、エイトが少しだけ怪訝そうな顔をしていた。
けれど、そんな表情も直ぐに戦闘時の勇ましいものへと変わる。
ドルマゲス達が魔力で浮き上がらせた瓦礫を容赦なくぶつけてきた。
エイトが盾でそれを防いでいるのを横目に、私は強硬突破しようと降りかかって来る瓦礫へ自ら飛び込んだ。
「おいおい、ルシアはどうしたんだ……?」
「いつもはもっと慎重なのに……なんだか……」
ククールとゼシカのそんな声が耳に入ってきたけれど、気にする事なく分身の一体を切り伏せる。
これで後は分身1体と本体だけだ。
「イーッヒッヒッヒ!……流石に厄介ですね」
「そう思うのなら、早く何とかしたら?」
ドルマゲスを挑発すると、その瞳が怪しく輝く。
とんだ肩透かしをくらったと、私は溜息を吐いた。
「……もう同じ失敗はしないって、言わなかった?」
「あの時とは違うというわけですか」
マイエラ修道院では耐性を用意していなかったから、あれで眠ってしまったけれど今は違う。
相手の手の内が全て分かっているわけではないけれど、それでも大体どんな事をしてくるのかは先ほど嫌と言う程見せられた。
「あんな結末は嫌なの!だから早く倒されてっ!」
今の能力でこの剣の性能全てを引き出すのはきっと無理。
けれど、ドルマゲスを倒すくらいなら出来る筈。
今、私に満ちる想いは憎しみでも、怒りでもない。
ただただ焦燥と恐怖に駆られた哀れな私を見透かす様に、ドルマゲスは高らかに嗤った。
「貴女……さては、言の葉を失くしましたね?」
「いつまでも喋ってないでさっさと倒れて!」
全身全霊の力を剣に込めて、思い切りドルマゲスに振り下ろす。
分身の身体は真っ二つに裂けて、溶ける様に消えて行った。
これであとは本体だけ。
あれを倒せれば、みんな元に戻る!
既に本体の相手をしていたらしいエイトの刃がドルマゲスの腹部を貫く。
これで留めだと言わんばかりに、みんなで総攻撃を仕掛けていた。
「クックックッ……やりますね。あなた方がここまで戦えるとはちょっと意外でしたよ……。」
ドルマゲスがその場に膝を着いた。
終わった……?
みんなそう思ったのか、一旦後ろへ下がった。
「もし私が身体を癒している最中でなければもう少し楽に殺して差し上げたのに」
ドルマゲスが杖を構える。
何かをやろうとしているんだと察知した私は、剣を収め、杖を持ち直した。
「これでもう……終わりにしましょう。悲しい……悲しいなぁ……あなた達ともこれでお別れかと思うと悲しくって仕方がありません」
杖が光を帯びだすと、ドルマゲスが前方に杖を突き出した。
そこから大量の茨が発生し、凄い速さで此方に蔦を伸ばし始める。
もしかして、トロデーンのお城はこれで滅びたの……?
だとしたら私達も危ない。
けれど、これじゃあ避けようもない。
「いーっひっひっひっひ!!!未来永劫茨の中で悶え苦しむがいい!!」
周囲が茨に覆われ、暗くなっていく。
こんな所で終わるわけにはいかないのに……!
けれど、何時まで経っても私達にそれが降り掛かってくる気配はない。
どうしてだろう、と不思議に思って伏せていた顔を上げてみると、その茨はまるでエイトを避けるようにして周辺に拡がっていた。
やがて茨の放出は収まり、周囲が静まり返る。
「……何故だ!?何故効かない!?お前は一体……!?」
沈黙を破ったのは他でもないドルマゲスだった。
「面倒だが、どうやら全力を出さねばならないようだな」
ドルマゲスが杖を掲げると、再び怪しい光を放ちだす。
それは黒い繭の様な物へと変わり、ドルマゲスの身体を包み込んだ。
やがて繭に光が差し、辺り一面を照らし出す。
私達はその眩しさに目を伏せていた。
繭から出てきたドルマゲスは魔物へと姿を変えていた。
あの杖を手にしていないという事は……杖を体内に取り込んだの?
メキメキと音を立てて、ドルマゲスの背に赤黒い巨大な翼が生えてくる。
両翼を拡げたドルマゲスは狂った様に嗤っていた。
「この虫けらどもめ!二度とうろちょろ出来ない様、バラバラに引き裂いてくれるわ!」
ドルマゲスが高らかに片腕を伸ばすと、天井から垂れ下がっていた球体に水泡が立ち込める。
澄んだ色をしていたそれは赤く濁っていき、部屋全体に拡散していった。
「これは……あの水の中に入ったの?」
「自分の身体を保てる様に、って訳か」
「さっさと倒して馬姫様とおっさんのところへ帰るでげすよ!」
「今度こそ……みんな、行くよ!」
エイトの声を皮切りに、戦闘に向けて身構えていたみんなはドルマゲスへと向かって駆けて行った。