コネクト~希望の光~
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茨が身体に巻き付いていき、締め上げられる。
棘が皮膚に刺さって微かに血が滲んだ。
完全に自由を奪われた私は、壁に磔にされてしまう。
そこから逃れようと身を捩るってみるけれど、棘が身体に食い込んで体力を奪われるだけだった。
「ルシア……待ってて、直ぐに終わらせるわ!」
「大丈夫、私の事は心配いらないよ!だからみんなは戦いに集中して!」
武器を構えて戦闘態勢に入るみんなに私はそう声を掛けた。
みんなが戦っている間に早くなんとかしないと……!
と、ドルマゲスの姿が三体に分裂する。
耳を塞ぎたくなるような甲高い笑い声が周囲を包み込んだ。
「ったく、ケラケラうるせーな!」
ククールが毒吐きながらも補助呪文を唱える。
「二度と笑えない様にしてやるんだからっ!」
ゼシカがバイキルトを掛け終わると、攻撃呪文の詠唱に入っていた。
「エイト、後ろから来る!ヤンガスは右から、あと一人はゼシカを狙ってるわ!」
今、私にできる事はドルマゲスの動きをみんなに伝える事くらいだ。
それが気に障ったのか、身体に絡まる茨の締め付けが些か強くなった。
「んっ……!」
痛みに思わず表情を歪めてしまう。
「あまり騒ぐと死期が早まりますよ?楽しみを奪わないで貰いたいですねぇ」
ドルマゲスは一頻り笑うと杖を振りかざし、みんなにかかった強化魔法を消し去る。
折角強化魔法をかけても、凍てつく波動で全ての効果を消し去られてしまう。
これでは拉致があかない。
それに、魔法だって無限に使える訳じゃない。
長引けば長引くほど、此方が不利になってしまう。
攻撃は通っているものの、手数が足りなさすぎる。
(そうだ、だったら……!)
身体は動かない。だけど、辛うじて声を出すことが出来る。
幸いそんなに広い空間じゃないから、少し離れた所にいるエイト達にこの声を伝える事が出来る。
私はそっと目を閉じて、魔力を練り出す。
頭の中で思い描いた旋律を辿っていくように、丁寧に歌を奏でた。
踊り子のスキルである魔力のバラードだ。
これでみんなの魔法を強化できて、少しは役に立てるかもしれない。
凍てつく波動に抗う様にして、私は歌を紡ぎ続けた。
最初はただの歌だと侮っていたらしいドルマゲスだけど、格段に威力が跳ね上がったゼシカの魔法を前にして、その考えを改めたらしい。
それぞれが呪文を用いた結果、取り敢えず分身だと思われる2体を滅する事に成功した様だ。
「芸達者なのも困り物ですねぇ」
ドルマゲスが杖を振ると、茨が首にまで絡みついてくる。
声を出すことも儘ならなくなった私は、ひたすら意識を保っている事に専念した。
「ルシア!……早くしないと持たないわ!」
「分かってる!後はあいつだけ……!」
ゼシカの声に呼応するようにエイトが剣を振りかざし、一気に畳みかけようとする。
けれど、焦りを生んでしまったのかドルマゲスの杖から放たれた茨に、剣を薙ぎ払われてしまう。
「……エイト!大丈夫か!?」
「兄貴ぃーーーっ!」
そのまま茨に薙ぎ払われて、エイトの身体は宙を舞い、壁に追突してしまう。
なんとか受け身を取ったようだけれど、ダメージは相当のものだ。
すぐ傍でなんとか立ち上がろうとしているエイトを前にして、私は再び身体を動かす。
「……ルシア……?」
それに気づいたエイトが自分で治癒魔法を発動させながら私を見返した。
私は床に転がっていた自分の剣に目をやり、それを拾う様に彼に必死に訴えかける。
「……これを、使えって事……?」
大丈夫、エイトならきっと使いこなせる。
私はなんとか笑顔を作り、ゆっくりと頷いた。
「……凄い、軽い……」
エイトが剣を手に取って、少しの間輝く水面の様な刀身を眺めた後、再びドルマゲスへと向かって行った。
私はそんな彼を見送る事しかできなかった。
血を流しすぎたのか、視界が霞んできた。
それだけじゃない。
この茨は私の体力だけでなく、魔力までも吸収しだしていた。
吸われた魔力の行き着く先は、恐らくあの杖。
(……でも、どうしてだろう……?この茨、苦しいけど……私を殺そうとしていない……?)
ドルマゲスの意思でそうなっているのかもしれないけれど、もっと違う、別の何かが……。
(おかしい……どういうつもりなの……?)
と、エイトの一太刀がドルマゲスを捉えたのが目に入った。
傷口を手で覆いながら、大きく身体を傾けてヨロヨロと歩いている。
「こうなったら……本気で……ぐっ!?」
「……何?何か、様子がおかしいわ!」
異変に気付いたゼシカが、ドルマゲスを指差し叫んだ。
覚束ない足取りで、ドルマゲスはこちらへ向かって来ている。
「大変!ルシアが!」
「あっ……!」
途端、私は茨から解き放たれた。
地面に降り立ち、ドルマゲスの動向を伺う。
「……器、その器を………」
「うつわ……?」
何かを譫言の様に繰り返しながらドルマゲスが一歩、また一歩と近付いて来る。
「ルシアにそれ以上近付くな!」
エイトがドルマゲスに更に一太刀、剣を浴びせる。
けれど、まるで操り人形の様に歩みを止めようとしない。
「……何を、するつもりなの……?」
目前まで迫ってきたドルマゲスは嫌な笑みを浮かべると、手にしていた杖を私の手に握らせて来た。
途端、自分の中に何かが入り込んで来る。
「あっ……ああっ……!!嫌っ……止めて……!」
杖を離そうとしても強い力で腕を捕まれていて、逃げられない。
「嫌っ……だめっ……!」
自分がどうなっているのか、ドルマゲスが私に何をさせようとしているのかを瞬時に理解した。