コネクト~希望の光~
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「……もう、待ってよルシア!そんなに怒らなくても……」
「別に怒ってない!」
怒ってるっていうか、戸惑ってるんだよね。
いきなり距離が縮まったというか、なんというか……。
だから、どう接したらいいのか分からなくて。
いや、普通にしてれば良いだけだと思うけど。
今の私には普通が何だったのかさえよく分からなくなってる。
心の中がぐちゃぐちゃにかき乱されて、でも不思議と苦しいものじゃなくて。
こんな気持ちになるのは初めてで、何かの状態異常じゃないのかって疑ってしまう。
「エイトは……随分余裕があるなって……ちょっとだけ、ズルいなって思っただけ……」
「ルシア……」
エイトに八つ当たりしたってどうしようもないのに、馬鹿みたい。
謝ろうと思って一度立ち止まり、エイトの方へ身体を向けると、途端に腕を引き寄せられてよろめいてしまう。
気付いた時にはエイトの胸の中にすっぽりと収まっていた。
何が起きたのか全く追いつけなくて放心状態になる私を余所に、背中に添えられた腕に少しだけ力が込められた。
「ごめん、嫌かもしれないけど……少しだけじっとしてて?だって、ルシアがあんまり可愛いから……」
「なっ……なななっ……何言ってっ……!」
顔が熱い。
頭が沸騰しそう。
壊れてしまいそうなくらい、胸が早鐘を打つ。
エイトってこんな人だった?
実は中身ククールでした~!とか、そういう展開もある?
朝からククールの姿を見ていない事だし、その可能性も大いにあるよね。
「……ん?」
「な、何でもないっ……」
思わず少しだけ顔を上げてエイトを凝視すると、彼は小首を傾げて優しく笑う。
心なしかエイトの頬が赤らんでいる様に見えた。
素直に、かっこいいって思ってしまった。
(やだ……私、どうしちゃったの……?)
恥ずかしさのあまり今にも発狂して逃げ出してしまいそうな衝動を必死に抑えようと、エイトの服の裾を少しだけ握る。
……はっ!そう言えば、ここは町中じゃない!
肝心な事を思い出して、私は慌ててエイトから離れた。
もし誰かに視られていたら、恥ずかしくてもうこの町に出入りできない。
「誰も来なかったから大丈夫だよ」
私の胸中を見透かす様にエイトが言った。
その一言で安心できる筈もなく、一応辺りを見渡して確認をしてみる。
半ば混乱状態で歩いていたせいで気付かなかったけど、大分町のはずれまで来てしまっていた。
「それにしたって、いきなり……何するのっ……」
「何って……抱擁?」
「こ、こんなところでする事じゃないっ……!」
「……ルシアだって、キスしてくれたじゃないか」
「あれはその、勢いというか……室内だったし、私達以外誰もいなかったし……」
「あの時は僕だって驚いたんだよ?ルシアはこういうの慣れてるのかなって思ったのに、さっきからずっと照れてるし」
「別に照れてない!……やっぱり嘘、ほんとは凄く恥ずかしいし、緊張してる……」
もう何を言ってもエイトには適わないと踏んだ私は、素直な気持ちを口にする。
思えばさっきからずっと調子を狂わされてばっかりだ。
どうにかして巻き返したいと思うけど、当分無理そうかも。
「裸見られても全然平気そうだったのに、こういうのは恥ずかしいんだね」
……そう言えばそんな事もあったね。
ついさっきの出来事なのに、すっかり忘れてた。
思い出すとなんだか急に羞恥心が沸いてきて、もうとにかく雑多な感情が入り混じりすぎて私は目眩を覚えた。
「じゃあ……今度エイトの裸も見せて貰うから、それでおあいこで……」
「……見たいの?僕は別に構わないけど?」
「み、見たいっていうか……エイトは私の見たわけだし、それってなんか一方的すぎる気が……」
「ゼシカから聞いたんだけど……僕が海に落ちた後、ルシアが服脱がせてくれたりしたんでしょ?その時に見たんじゃないの?」
「全裸にはしてないでしょ!?上だけよ、上だけ!」
完全にエイトのペースに呑まれてしまっていて、何を言っても私が不利になる。
楽しそうにニコニコ笑うエイトがちょっとだけ憎らしく思えるけれど、惚れた弱みなのかそれすらも愛おしく感じてしまう。
「因みにこの事、ゼシカ達には絶対バレない様にするんだからね?移動の間ずっと冷やかされそうだし、そんなの考えただけでも地獄だもの……」
「うん、出来るだけ密着しすぎない様に気を付けるよ」
「出来るだけじゃなくて、密着禁止!思わせぶりな事言ったりするのもダメだし、そう感じさせるような態度も取っちゃダメよ?」
「そんなにひた隠しにしなくても……もう知ってるんじゃないかな?」
「……へ?」
エイトの視線が私の肩越しに向けられる。
何となく嫌な予感がしたけれど、私も其方を見てみた。
……その他のメンバー三人が、満面の笑みを浮かべながら手を振っていた。
「へ?は?なんでいるのーーーーっ!!?」
「なんでって、さっきから居たじゃないか」
「知ってたの!!??」
「ルシアも気付いてるものだと……」
「……うん、わかった。もう大丈夫。なんでも良い」
頭を抱えてその場に座り込む私の元へ、その他三人が駆け寄ってきた。
「その様子だと上手くいったみたいね!おめでとうエイト!」
「ちゃんと俺の言った通りにしたか?」
「流石兄貴でがす!」
「……あなた達、まさか……」
その他三人の言動から察するに、どうやらこの状況は成り行きでも偶然でもなく、作為的に行われたものであると気づく。
……完全に謀られていたみたい。