コネクト~希望の光~
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漸く甲板に引き上げられた時にはもう、エイトは完全に血の気を失っていた。
「……ザオリク!」
蘇生魔法をかけてみるけれど、息を吹き返す様子はない。
魔法が効かない?どうして?
「エイト……ダメだよ……逝ったらダメ!」
そうしている間にまた魔物が襲い掛かって来る。
「クソッ、こんな時に!」
私と一緒に回復を試みていたククールが舌打ちをする。
「……エイト……」
私は意を決して、人工呼吸を試みる事にした。
彼の唇に自分のそれを重ねて、彼に息を吹き込む。
「イオラっ!」
少し離れた所では戦闘が繰り広げられている。
流石にヤンガスとゼシカの二人でこれを乗り切るのは厳しいと判断したのか、ククールも其方側へ駆けて行った。
周りの音が次第に遠くなっていく。
私は彼の鼓動の音だけに耳を澄ませて、幾度も同じ動作を繰り返す。
すると、彼の瞼が微かに震えたのが見えた。
「エイト!……エイト!……今度こそ……お願い……ザオリク……!」
紡ぎ出された魔法陣が輝きを放ち、エイトの身体に吸収されていく。
呪文がしっかりと効果を表したのを見て、私は心底安堵した。
程なくしてエイトが目を覚ましたかと思いきや、激しく咳き込み始めた。
「エイト……良かった、本当にっ……!」
エイトの身体をゆっくりと抱き起こして背中を擦る。
「……はぁ、はぁ……ルシア……」
「大丈夫……鏡ならちゃんとここにあるから……」
そう言って、膝下にあった鏡を手に取ってエイトに見せる。
鏡の無事を確認したエイトは少しだけ笑顔を見せると、また意識を失ってしまった。
念の為回復魔法を施しておき、どうにか彼を背負って船室へと連れて行く。
このままだと身体が冷えてしまう。
なんとか温めないと。
ありったけのタオルと毛布を用意すると、悪いとは思いつつもエイトの服を丁寧に脱がせていく。
濡れた身体をタオルで拭き取った後、毛布で包む。
取り敢えずはこれで大丈夫の筈。
「ルシア!」
戦闘を終えたらしいゼシカが船室へ駆けこんできた。
毛布で包まれ眠っているエイトの姿を見るなり、彼女の表情が少しだけ柔らかくなった。
「ルシア、貴女もずぶ濡れじゃない……」
「私は後で大丈夫だから」
「大丈夫じゃないわ!どうしてあんな無茶をするの!?助かったから良かったけど、万が一って事だってあるでしょう!?」
ゼシカが声を荒げる。
心配してくれてるんだよね?
ありがとう、でも……。
「だって、エイトを失う訳にはいかないでしょう?」
「……それは、ミーティア姫やトロデ王の為?それとも、ルシア自身の為?」
「うーん、分かんない。ただ……必死だったの。エイトを失くしたくない、って。まるで……あの時みたいに……」
命を奪われそうになったお姉ちゃんに手を伸ばした時と同じだった。
ただ、大切なものを失くしたくなかった。
それだけの事。
「もし仮にエイトが助かって、ルシアに何かあったら……エイトはずっとその事を後悔して生きて行く事になるのよ?ルシアは自分の命を軽く見てる。もっと自分を大事にした方がいいと思うわ」
「……ありがとう、ゼシカ。次からは気を付けるね」
ゼシカに返事をして立ち上がろうとするけれど、あれ……なんだか身体が動かない。
疲れちゃった、のかな……?
緊張の糸が解けて気が緩んだのかな?
次に瞬きをした時にはもう視界が暗転し、何も映さなくなっていた。
ゼシカが私を呼ぶ声がする。
そんな声も少しずつ遠ざかって行って……。
ここで意識が途切れてしまった。
『ルシア……ごめんね……』
私の傍らでお姉ちゃんが泣いている。
大きな瞳からポロポロと涙が零れてきて……。
何処かで観たような光景……。
『大丈夫……私達はずっと一緒よ』
そうだ、これはあの日の記憶だ。
お父さんとお母さんがずっと帰ってこなくて、お姉ちゃんにいつ帰って来るの?ってしつこく聞いていたら
お姉ちゃんは凄く怒って。
私がびっくりして泣いちゃったら、お姉ちゃんも泣きだして。
小さいながらにこの時分かったんだっけ。
本当に寂しいのは、お姉ちゃんの方だって。
お姉ちゃんは、私と違って……
お父さんとお母さんの本当の子供だから。
この時思ったんだ。私、もっと強くなろうって。
お姉ちゃんを護れるくらい、寂しい思いをさせない様に頑張ろうって。
『ルシアの事は、絶対私が護るから!約束よ!』
お姉ちゃんが私の手をぎゅっと握ってくれて、その手がとても暖かくて
凄く心強かった。両親がいなくなった寂しさを一瞬で塗り替えてくれる、優しい手だった。
ある程度大きくなるまでは何処へ行くのもお姉ちゃんと手を繋いで歩いていたっけ。
懐かしい、な……。
「……。」
「ルシア!……良かった、気が付いたんだね」
「……エイト?」
あれ、どうしてエイトが?
確か海に落ちて……。
「エイト……エイト!?もう、大丈夫なの?」
「あっ、まだ起きたらダメだよ!熱が下がってないみたいだから」
「……此処は何処?」
「サザンビークの宿だよ。ククール達が手配してくれたんだ」
こちら覗き込むエイトの顔色はすっかり元通りになっていて、私は心底安堵した。
エイトはもしかして、ずっと付き添ってくれていたのかな……?
何故だか分からないけど、そんな気がした。