コネクト~希望の光~
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自称あまのじゃくのスライムはおじいさんはいないと言い張っていたけれど、おじいさんはちゃんと帰宅していた。
あまのじゃくも良いけど、度が過ぎるとただのオオカミ少年……じゃなくて、オオカミスライムになっちゃうから程々にね。
再びおじいさんと会えた私達は、早速鏡の事を訊ねてみる。
この鏡は本当は太陽の鏡って言うんだって。
おじいさんによると、太陽の鏡は強い光を放つ呪文を受けて輝きを増した事があるらしい。
呪文を鏡に充てる事が出来れば失われた魔力が取り戻せるかもしれない。
でも強い光を放つ呪文って……どんなのだろう?
スーパースターのスキルのスキャンダルくらいしか思い浮かばなかったけど、あれは呪文じゃないし……。
当てはまる呪文が分からなくてみんなでちょっと困っていると、そんな感じの呪文を使ってくる魔物がここから北の方角にある海峡に居るとか。
その魔物……海竜から放たれるその呪文を鏡に吸収させる事ができれば、太陽の鏡として力を取り戻せる……かもしれない。
本当に魔力が戻るのかちょっと半信半疑だけれど、今はどんな事でもやってみるしかない。
私達は早速その海峡を目指す事にした。
今日中に太陽の鏡を手に入れて、明日の朝にはもう闇の遺跡へ乗り込むつもりみたい。
エイト達の旅の終着点はもうすぐそこまで来ている。
そうなれば、彼等ともお別れ……になるのかな?
「……ルシア、ちょっと良いかな」
「どうしたの?」
海峡へ向かっている途中、甲板で海を眺めているとエイトに声を掛けられた。
海風に吹かれて顔にかかる髪を避けながら、私はそっと振り返る。
「もし、ドルマゲスを倒しても……元の世界に帰れなかったら……僕も一緒に帰る方法を探してもいい?」
「え?でも、エイトは……」
エイトはトロデーンの人なんだよね?
だったら色々忙しくなるんじゃないかな。
「……本当は……、だけど……」
「え?何?よく聴こえなかった……」
風が強くなり、エイトの声がよく聞き取れない。
もう少し近くへ寄ろうと思って歩みを進めたその時だった。
船が大きく揺れ動く。
「エイト!出たわよ!」
お目当ての海竜が襲い掛かってきたらしい。
もう海峡に着いてたんだ……!
ぼんやりしてたから分からなかった。
「また後で話すから!」
鏡を用意しながらエイトが海竜の方へ駆けて行く。
ヤンガスが敵を挑発し、魔法を誘発させるという作戦だった。
それらしい技を使ってきたらエイトが鏡を掲げ、魔力を吸収させる手筈になっている。
「……!来る!」
海竜の大きく開かれた口先に光が集まり出す。
私は呪文に備えて咄嗟にマホステを唱えた。
思ったよりも呪文の発動が早かったせいで、ヤンガスとククールは目が眩んでしまった様だった。
鏡を掲げていたエイトも光を浴びてしまったらしくきつく目を閉じていたが、彼の手にある鏡は強い輝きを放っていた。
「上手くいったみたいね!」
「うん!……あとはコイツを倒せば……」
ゼシカと呪文の詠唱に入ると、海竜が巨大な尻尾を急に翻した。
間一髪のところでヤンガスとククールは回避した様だったけれど、鏡を手にしていたエイトは反応が遅れ、直に攻撃を受けてしまう。
「エイトっ!」
ククールが即座に回復を挟もうとしていたけれど、急に波が高くなり、船が傾いた。
その反動でエイトが海へ叩き出されてしまった。
「エイト……!嘘っ……!」
「ちょっと!ルシアっ!?」
私は気付いたら海へ飛び込んでいた。
息が続く限り海中を彷徨い、エイトの姿を探した。
「はぁっ、エイト……何処に居るの!」
何度目かの潜水で、太陽の鏡のものと思われる光が見えた。
しっかりと鏡を抱えたまま気を失っているエイトを見つけた私は、彼の身体を引き上げようと腕を掴む。
(お願い……水の神様……マリーヌ様、どうかご加護を!彼を……この世界の勇者を……死なせないで……!)
海面へ向かって必死に泳いで行く。
なんとか息が切れる前に水中から顔を出せた私は酸素を取り込もうと大きく息を吸った。
海竜との戦闘は、もう終わったのかな。
あの三人なら大丈夫だとは思うけど……。
「ゼシカっ!ククール!ヤンガスっ……!」
幸いな事に船からはさほど距離が離れていなかったから、私は声を張り上げてみんなの名前を呼んだ。
すると、すぐに私の声に気付いてくれて三人が甲板から顔を覗かせる。
「ルシア!大丈夫なの!?」
「今引き上げるでがす!」
「おい!ルシア、後ろだ!」
後ろ……?
ククールに言われて後ろを振り返ると、そこには大きく口を開けた海竜が居た。
そっか、ここはこいつの住処なんだ……!
つまりはさっきの一匹だけじゃない。
他の個体が私達を狙っている。
エイトを抱えたままじゃ、何も出来ない。
どうする?どうすれば良い……?
ううん、答えはとっくに出てる。
「私はもう……二度と……二度と大切な人の手を離さないって、決めてるの……!」
片腕を掲げ、盟友の護りを展開する。
光で紡ぎ出された巨大な盾に弾かれて、海竜は驚いたのかそのまま去っていった。
「ルシア!これに捕まって!」
ゼシカがロープのついた浮き輪を放り投げてくれた。
私は幾度か波に呑まれそうになりながらも、どうにかそれにしがみつく。
「……エイト、お願い……もう少しだから頑張って!ドルマゲスを倒してミーティア姫様達を元に戻すんでしょう!?」
上方では三人がかりで私達を引っ張り上げようとしてくれている。
けれど、その間にもエイトからは徐々に体温が失われていってるのが身体を通して伝わってきた。