コネクト~希望の光~
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森の奥には泉があった。
その畔で真っ白な髪を伸ばした小柄な老人が佇んでいる。
きっと、この人が探していた人物に違いない。
「ほう。こんな場所に人が来るとは珍しい……。」
私達の気配を察したのか、老人がゆっくりと此方へ振り向く。
「これはこれはなんとお美しい……。わしも城で多くの姫君を目にしてきたがあなた程美しい姫君は見た事がない」
……え?ちょっと待って。
この人、誰の事言ってるの?
ゼシカ?まぁ、確かにゼシカは綺麗だと思うけど、お姫様だったっけ?
みんな困惑している様で、互いに顔を見合わせてから再びおじいさんの方へ目を向ける。
一番驚いていたのは他でもない、御者台にいたトロデ王だった。
「何故じゃ!?なぜこの馬を姫である事を見抜いたんじゃ!?」
「う、馬じゃと!?それは誠か!?」
このおじいさん、ミーティア姫様がちゃんとヒトの姿に視えてるんだ。
……私、こういう真実を見通す系の能力持った人、ちょっと苦手かもしれない。
何となく居心地の悪さを感じた私はちょっとだけ後ろに下がり、荷台の影に隠れるようにした。
「この毛並み……確かにおぬしらの言う通り馬だな」
ミーティア姫のたてがみに触れながら、おじいさんは彼女のカタチを確かめる。
「わしの目は何も映さん。わしは心眼を通して周りを見ているのだ。わしの心眼が映すこの方の姿は姫と呼ぶのにふさわしい方なのに……。旅のお方、一体何があったのだ?差支えなければお聞かせ願いたい」
みんなこの人になら事情を話しても大丈夫と判断した様で、これまでの旅の経緯を簡単に説明した。
おじいさんは何度も深く頷きながら、みんなの話を聞いていた。
「……おいたわしや。呪いのせいでこのような姿に変えられてしまったのか。おお、そうだ!それなら一つ、この方法を試してみては如何かな?元の姿に戻れるかもしれん」
「それは本当かご老人!して、その方法とは!?」
まさかの提案にトロデ王が御者台からピョンと飛び降り、凄い剣幕でおじいさんに詰め寄る。
おじいさんは後ろを振り返り、泉の方へ目を向けた。
キラキラと不思議な色に輝くその水は呪いを解く力があると、おじいさんは言った。
クドゥスの泉みたいなものなのかな?
確かに、同じ様な効果があるのなら効くかもしれない。
アラハギーロの王様もあの泉の力でワカメの呪縛から解き放たれた事だしね。
ならばさっそく試してみようという事で、ミーティア姫様がそっと泉に近づき水面に口を寄せる。
すると、次第にミーティア姫様の身体が光を放ち始めた。
それは次第に強いものへと変わり、眩しくてとても目を開けていられる状態じゃなくなってしまう。
次に目を開けた時、そこには黒い髪を腰まで伸ばしたとても綺麗な女性が佇んでいた。
驚きと嬉しさに目を見開き、幾度も自分の手や身体の感触を確かめている。
「お、お父様……!」
嬉しさのあまり興奮しているのか、少し上ずった声で目の前にいるトロデ王を呼ぶ。
この人がミーティア姫様……
あれ、初めてお会いする筈なのになんだか既視感があるような……。
少しの間考えて、私は答えを出す。
そう、あの髪型のせいだ。
王族の姫君はサークレットで前髪を上げるのが流行ってるのかしら……。
アンルシアもだけど、よく似合っているし可愛いとは思うんだけどね。
突然の出来事にみんなが硬直していると、ミーティア姫様の顔が少しだけ曇る。
「ど、どうしたの……?まさかミーティアは人間の姿に戻った夢でも見ているというの!?……これは、幻なの?」
「あまりに突然の事で思わず言葉を失ってしまったわい。ちゃんと見えているぞ姫よ。さぁ、もっと近くに来てその愛おしい姿を見せておくれ」
「お父様!」
どちらともなく抱擁が交わされる。
元に戻れて本当に良かったね。
後はドルマゲスを倒せばお城の人たちの呪いもきっと解けて、全部元通りになる筈。
「どれ、わしも泉の水を飲んでちゃちゃっと元の凛々しい姿に戻るとするか」
そう言ってトロデ王も泉へ両の手を浸したその刹那、ミーティア姫様の身体が再び光を放ち始める。
眩い閃光が一瞬広がったかと思いきや、そこに姫様の美しい姿はなくなっていて
元の小綺麗な馬がポツリと佇んでいるだけだった。
「うーむ、泉の癒しの力さえ効かぬとは。姫君にかけられた呪いは余程強力なものらしいな」
「結局はドルマゲスを倒すしかないって事ね」
「……風が冷たくなってきたようだ。わしはそろそろ帰らせてもらうよ。……ところで、おぬし」
「は、はい……」
来た道を戻ろうとしていたおじいさんが私を見るなり立ち止まる。
何を言われるのか内心ハラハラしているが、おじいさんはただ黙って私の方へ顔を向けていた。
「世の中まだまだ不思議な事もあるものだな。本当のおぬしはどちら側なのだ?」
「あ、えっと……私は……」
このおじいさん、私のもう一つの姿まで見えてるんだ。
此方の世界では自分の姿を取り戻した際にかけてもらった魔法の効果は出ていないのかしら。
「まあよい。それはおぬし自身が一番分かっている事だろう」
「……はい……。」
おじいさんはそれ以上何も訊かずに、森へと続く道を歩いて行った。
私自身が一番分かっている、か。
だけど、正直自分の存在をどこか曖昧に感じている事も事実。
それを見抜かれたような気がして、なんだか嫌な気持ちになった。