コネクト~希望の光~
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「わぁ、綺麗……それがアルゴンハート?」
「意外と小さいな。アルゴリザードも気色は悪かったが見た目ほど強くはなかったし……。ここはひとつ、もっと大きいのが手に入るまで倒し続けるとするか」
「……ルシアに庇ってもらった癖に何言ってるんだかっ」
ゼシカの嫌味も王子には聴こえていないのか、アルゴリザードを探して先へ進んで行ってしまう。
私は慌ててその後に続く。
それから山の中を歩き回って2体のアルゴリザードを倒したけれど、どの宝石も王子の御目には適わなかったみたい。
今日はもう大分日も暮れて来たし、王子も疲れたと言い出したので今夜はここで一泊してまた明日アルゴリザード狩りをする運びになった。
軽く夕食を済ませた後、私に気遣ってくれたのかヤンガスが王子の相手をしてくれていた。
暫しの自由を手に入れた私は野営地から少し離れた場所で空を見上げていた。
山頂で空気が澄んでいる為か、いつもより星が綺麗に見える気がする。
「今日はお守りお疲れ様」
声を掛けられて其方を見遣ると、後方でエイトがカップを差し出しながら立っていた。
私はそれを受け取ってお礼を言うと、再び視線を空へ戻す。
「ルシアは星を観るのが好きだね」
「星は自分より高い位置にあるでしょう?だから、自然と前を向けるっていうか……綺麗だし、あんまり落ち込まなくなるっていうか……」
「……そうだね」
エイトが腰を下ろしたのを見て、私もその隣に座った。
二人でこうして並んでいると、抑え込んだ筈の気持ちが溢れそうになってしまう。
少しだけ早くなる胸の鼓動を落ち着けるように、私は彼が持ってきてくれたカップに口をつけた。
「いい香り……紅茶?」
「そうだよ。紅茶の香りはストレス軽減の効果があるんだって。丁度いいかなって思って」
「……ありがとう」
思えば、此方に来てからというものの、気遣われてばかりな気がする。
自分の世界で私をここまで繊細に扱ってくれる人っていたかな。
うん、多分いなかったと思う。
みんな私の事なんてただの便利屋さんくらいにしか思ってないだろうし。
誰かの隣にいるのってこんなに気持ちが安らぐものなんだね。
お姉ちゃんと離れ離れになってからこんな当たり前の事も忘れてた。
旅をする中で人の温もりや優しさを沢山見て来た。
見て来た、筈だった。
でも、それを身近に感じる事は殆どなかった。
ううん、感じようとしなかったのかもしれない。
向けられる感謝とか信頼とか、心の何処かで突っぱねていたのかも。
お姉ちゃんを取り戻すついでにやった事に過ぎないんだから、って。
一人で考え事をしていると、ふと膝に置いていた手に温もりを感じた。
吃驚してそこに視線を落とすとエイトが私の手をそっと握っていた。
……エイトが私の手を、握って、いる?
動揺を隠しきれなくて、若干アタフタしていると微かに笑い声が聞こえた。
「お姉さんの事考えてたんでしょう?だから、代わり」
「えっ……え?」
「ルシアさ、今はもうあんまりないけど……こっちに来たばかりの頃、よくうなされていて、毛布ぎゅっと握りしめてたから。お姉さんとよく手を繋いでいたのかな、って思って。なんていうか……安定剤みたいな?」
確かに安心はするし、その心遣いはとっても有難いのだけど。
エイト……あなた、男の人だよね?
案外誰にでもこういう事する人なの?
なんかもうわかんない。
「……あ……そっか……」
自分でそんな事を考えていて、改めて気付いた。
『エイトは男の人』
うん、当たり前なのだけど……正直気にしたこと無かった。
旅の仲間止まりだった筈なのに、性別を意識しちゃうくらい、私はエイトの事を……。
そう思ったらなんだか急に恥ずかしくなってきて。
一人で勝手に納得して赤面しているだろう私をエイトが不思議そうに覗き込んでくる。
まぁ、暗くて分からないと思うけれど。
恥ずかしいけど、私は今、怖いくらい幸せを感じていた。
こんなに穏やかな気持ちになったのはいつ以来かな?
村を焼かれてから今日までずっと、心の中に翳りがあって。
「……ルシア?」
「なんでもないの……大丈夫」
エイトは凄いね。
私の中の嫌な想いを全部洗い流してくれる。
この人の隣に居る時は素直になれる気がする。
温かな涙が頬を伝い落ちて行く。
「嬉しいって、思っただけ」
輪廻を外れてしまった私がこんな風に幸せを感じるのは許されない事なのかもしれないけれど。
どうか、今だけは……。