コネクト~閉ざされた刻~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
船を陸につけると、私は何時間かぶりの大地に足をつけた。
やっぱり海より陸が好き。
ゆらゆら揺れないから戦いやすいし、酔わないし。
またここからは徒歩か。
お姫様もいるし、無理はさせられない。
そして何より、エイトがルーラを使えるからそれがとても便利に思える。
こっちの世界にいたら私も覚えられるかな?
仮に出来るようになったとしても、きっと向こうに帰ったら使えなくなるんだろうなぁ。
そんな事を考えながら歩いていると、前方を歩いていたエイトが剣の柄に手をかけるのが見えた。
相変わらず見慣れない魔物が多くて、何の耐性を持つべきかとか手探りで戦っている状態なのだけど、幸い相手がまだそんなに強くないからなんとかなる。
やっぱり魔物の出現数が多くて、アストルティアではあまり使用しない範囲魔法の有難みを実感させられた。
暫く歩いて行くと、小高い丘の上にある教会に辿り着いた。
まだ探索を続けられそうな時間帯だったのだけど、今日はここで宿を取る事にしたみたい。
これから何があるかわからないから休める時に休んでおかないとね。
明日の朝まで自由時間が出来た。
まだ日が高いうちにのんびり過ごすの、久しぶりだなぁ。
特にやることもないから外へ出てみようと思ったら、ゼシカに呼び止められた。
「ルシア!良かったら呪文の勉強付き合わない?」
「うん!付き合う!……そうだ、私もゼシカにお願いがあるの」
「私にできる事ならなんでも言ってくれて良いわよ!」
ゼシカと並んで腰かけて、私達は勉強に励んだ。
この世界に来て何かと不便だと感じていたもの。
文字の読み書きができない事。
言葉は普通に通じるのに、どうして文字だけ違うのかしら……。
折角だから、ゼシカに教わる事にした。
「貴女の名前はこう書くのよ」
「え、ええっと……」
「これはなんて書いてあると思う?」
「んーと……け……い、は……く……おと……こ?」
「正解!」
私がたどたどしく文字を辿り読み上げると、嬉しそうににっこり笑うゼシカ。
ゼシカはククールの事色々言うけど、なんだかんだ言って仲が良いのね。
「さっきから何やってるんだ?」
噂をすればなんとやら、ククールが背後から覗き込んできた。
ゼシカがさりげなく肩に置かれた手を慣れきった様子で払い退ける。
「ナンパに飽きたからって、こっちにちょっかい出して来ないでくれる?」
ここにたどり着くなり、ククールは他の宿泊客の女の人に声をかけていたのは知ってた。
今夜はその人と過ごすのかなぁとか思ってたから、割り込んでくるとは思わなかった。
「別にナンパしてたわけじゃないぜ?情報収集だよ」
「あれのどこが情報収集なのよ!」
「近くにこんなに素敵なレディーがいるんだぜ?ナンパなんてしねーよ」
なんだか収拾がつかなくなりそうだから、私はゼシカに借りた本を抱えてそっとその場を離れた。
外に出て勉強の続きをしようと手ごろな場所を探していると、エイトと長い黒髪の女性が並んで談笑している姿が目に入った。
(あれ……あの人は……)
文字をずっと追いかけていたから目が疲れているのかと思い、少しの間目を閉じて再び開いてみる。
エイトの傍には美しい馬が寄り添っていた。
きっとアンルシア姫なら、勇者の力でお姫様の姿がヒトに視えるんだろうなぁと思いつつ私はその場を後にする。
教会の裏手にちょうどいい場所を見つけたので、そこで自主学習をする事にした。
柔らかい草の上に腰を降ろし、本を開く。
心地よい風が草原を吹き抜けてきて、なんだか眠たくなってしまった。
ちょっとだけ……
少しだけ、寝ちゃおう……
本を畳んで膝の上に置き、瞳を閉じる。
程なくして私は深い眠りへと落ちていった。