コネクト~閉ざされた刻~
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シオン様からの久しい連絡を受けて、私は船室に閉じ籠って一人考え事をしていた。
向こうではどれくらいの時が流れたのだろう。
こちらの世界と時間の流れが同じならば、そろそろ動きがあってもおかしくない。
けれど、シオン様の様子からしてまだ敵側が行動を開始したようには思えなかった。
もしも、この世界に居続けていたら……
私に迫っているという死の運命を退ける事ができるのかしら……?
新大陸に渡って間もない頃、束の間の再会を果たせた姉に言われた言葉が頭を過る。
そんな未来を垣間見た幼馴染みの真摯な表情が脳裏に映し出される。
忘れかけていた死の恐怖が蘇り、身体が小刻みに震えだした。
死から逃れたい。
私の何処かにそんな想いが強く根付いて居たから、私はこの世界に逃げ延びてしまったのかも知れない。
「ルシア、大丈夫?」
「……平気」
いつから此処に居たのかわからない彼に急に声を掛けられて驚いたけど、私はいつも通り返事をした。
思えばエイトの声も大分聞き慣れたな……。
エイトは当たり前の様に私の隣に腰掛けると、心配そうにこちらを覗き込んできた。
「ごめんね、心配かけちゃって。私ね……時々自分がわからなくなっちゃうんだ……」
選んで来た道に後悔なんて勿論ない。
そう言い聞かせて来たけど……。
心の奥底で弱い私が語りかけて来る。
「私……未来がみえる幼馴染みに、死ぬって言われてるの。それが何時なのか、何処でなのかわからないけど……」
私の話を聞いて、エイトは動揺する事もなく、けれど真剣な顔をこちらに向けてきた。
「……じゃあ、僕が護るよ。君が倒される様な相手を僕が倒せるかって聞かれたら自信ないけどね」
「嬉しいけど、あなたはお姫様の騎士でしょう?それじゃ二股よ」
「二股って……そういうつもりじゃないんだけどなぁ……」
さっきとは伐って変わって渋い顔をするエイトがなんだか可笑しくて、私は自分の表情が綻んでいくのがわかった。
霧がかかった胸の内が少しずつ晴れていく様な気がした。
何だろう……エイトって不思議な人だと思う。
この包容力を少しは見倣いたい。
「兄貴~!陸が見えてきたでげす!」
ヤンガスの大きな声と豪快な足音が聞こえてきて、エイトが立ち上がった。
「そろそろ着くみたいだね。……一緒に行こう、ルシア」
そう言ってエイトは私に手を差し伸べて来た。
私は躊躇しつつ、その手をそっと掴む。
いざその手を取ってみると何故だか少しだけ胸が高鳴った。
(……剣を扱う人の手だ……しっかり鍛練してるんだなぁ……)
エイトの手の感触は戦いに身を置く者の其れだった。
……待って。
私がこんなにエイトの手を意識してるって事は、ひょっとして向こうも……?
なんて可愛げのない手だ、とか思われてたらどうしよう!
一人で思考を巡らせていたらなんだか急に恥ずかしくなってきてしまって、私は手を離そうとしたのだけど、気のせいか手と手は固く結ばれていて……。
「……あ、あの……」
いつもは考えられないくらい弱々しくエイトに声をかける私。
ホント、どうしちゃったのかな……
もしかして、君の瞳にフォースブレイク☆
みたいな事になっちゃってる……?
意味不明な言葉が頭に浮かんでは消えて行く。
(そ、そう……!私はきっとさっきの戦闘で気付かぬうちに全耐性を下げられたのよ!そうに違いない……それしか考えられない……)
他人にこんな風に、寄り掛かった事なんて殆ど無かった。
多少の助け合いはあっても、結局は全部自分で選んでやってきた。
だから……
純粋に、嬉しいんだ。
甲板でククールに冷やかされる迄、自分の中で根付いたその気持ちを理解出来なかった。