コネクト~想いの欠片~
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「ルシア……?」
私が杖ではなく、片手剣を構えるのを見てゼシカが驚いたように私を見てくる。
「今日はね、なんだか暴れたい気分なの!だから後方支援はよろしくね!」
それだけ言うと私はヤンガスを追い越して魔物の群れと対峙する。
後ろから何か言ってる声が聞こえたけれど、聞こえなかった事にして剣に魔力を集める。
「いくわよ!ギガスラッシュ!」
敵を一掃したところで剣を収めると、私は少しだけ気持ちが晴れた気がした。
格下の相手を倒してスッキリするなんて、なんだか弱いもの苛めをしている様だと思う。
だけど、ずっと後方支援をしていると時々前衛の人たちを羨ましく思うのもまた本心。
バッサバッサと敵を切り捨てていくバトルマスターや味方を護りながら戦う戦士、魔法構成の勝敗の要ともなるパラディン。
私はいつもそんな人たちの背中を見てきた。
自分の性格や動きから前衛は向かない事は分かっているけれど、それでもやってみたくなるのが人の性。
やってみたくて、いざ片手剣を持ち出すようになったものの、今までそんなに出番はなかった。
後衛としての信頼はあっても、前衛としての経験はまだまだなのだから。
一瞬で戦闘を終わらせた私を他のみんながあっけらかんと眺めていた。
力の見せつけみたいで、本当はあまりやってはいけない事なのかもしれないけれど。
「……どしたの?先を急ごう?」
固まっているみんなに背を向けて私は歩き出す。
その足取りはとても軽やかだった。
結局今日は魔力が尽きるまで一人戦い尽くした。
魔力回復のアイテムは持っているけれど、私のペースで旅をするときっと他のみんなは屍になってしまうから、ここはちゃんと合わせておく。
パルミドには辿りつけなかったので、魔物の気配が比較的薄い場所で野営をする事になった。
「……ねぇ、ルシア……」
ずっと黙り込んで焚き火の炎を眺めていたゼシカが急に口を開いた。
「アストルティアへ渡れば兄さんも……貴女のように生き返ったりできるのかしら……?」
「それは……」
私の他にも生き返しを受けた例はあるみたいだけれど、世間一般にはあまり知られていない様だしきっとごく僅かなものなのだろう。
やっぱり、容易に生き返しの話なんてするんじゃなかったってこの時初めて後悔した。
「変な事聞いてごめんなさい。頭ではわかってるの!死者を生き返すなんて現実的には不可能だってこと!……ただ、貴女に出会って、貴女の話を聞いたら……ちょっと期待しちゃって」
「ゼシカ……」
生き返しの話は向こうでのパートナーであるアンルシアにだってしていない。
故郷の話はちょっとだけしたことあった気がするけど……。
まあ、彼女の場合は全部わかっているのだろうけれど。
勇者の眼という奥義を会得して、あらゆる真実を見通しているのだろうから。
「……私の友達にもお兄さんがいたの。だけどお兄さんは彼女の目の前で殺されてしまって……挙句の果てに、敵の手駒として使われて、兄妹は無理矢理敵対させられてしまったの」
アンルシアの話をしてゼシカの慰めになるなんて勿論思っていないけれど。
それでも、私にはそれくらいしか思い浮かばなかった。
自分の浅はかさに心底嫌気が差した。
「その後も色々あって、無事に目的は果たされた。だけど……お兄さんは還ってこなかった。だから……」
「そっか……」
そう呟いて俯くゼシカはどこか悲し気だった。
ごめんなさい、ゼシカ。
私が余計な期待を持たせたばかりに……
貴女をまた傷つける事になってしまって。
「それで……その友達は?今はどうしているの?」
ゼシカの代わりにエイトが訊いてきた。
「彼女はお兄さんの死を乗り越えて、彼の分まで国を支えていくって頑張ってる」
そんなアンルシアも今は囚われの身。
早く救出しないといけないのに。
私は何をしているんだろう……。