コネクト~想いの欠片~
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イシュマウリさんが竪琴を鳴らすと、その音色に気づいた王様がこちらを振り返る。
王様は遠目から見てもわかるくらい、目が真っ赤に充血していて瞼が腫れていた。
ずっとずっと、この人は王妃様の死に向き合えずにいたんだね……。
「嘆きに沈む者よ。かつてこの部屋に刻まれた面影を再び蘇らせよう」
そう言って長く綺麗な指先でハープの弦を弾き、曲を紡ぎ出すと王妃様の幻影が私たちの前に姿を見せる。
ああ、やっぱり。昼間見た人はシセル王妃だったんだ……。
みんな何も言わずに王様と王妃様の駆け引きを見つめていたけれど、正直私には分からなかった。
こんな風に、昔の幻影を見せられたって悲しいだけじゃないの……?
テラスへ上がっていく王様と王妃様を追いかけて私達も階段を上る。
夜明けの光と共に消え去る王妃様の幻影を王様が抱きしめていた。
そんな王様を見守るようにして、また王妃様が姿を見せていた。
こちらを見てゆっくりと頭を下げるとやがてその姿も日の光の中へ溶けていった。
王様はなんとか立ち直れたようで、私達を宴に招待してくれた。
こういう席に呼ばれるの、本当に久しぶり。
片っ端から料理をかき込んでいくヤンガスを眺めながら私も目の前に置かれていたスープを口に運んだ。
凄く美味しい。
「……ルシア、大丈夫?」
「えっ?あ、平気」
無意識のうちにスプーンを持ったまま固まっていた私に気づいたエイトが声をかけてきてくれた。
こういうお祝いの席でくらい、楽しそうにしなくちゃ。
そう思ってはいてもなかなか行動に移せなかった。
勇者姫と共に魔王を討伐し、アストルティアに束の間の平和が訪れた。
その祝いの席でずっと探し求めていた姉がメギストリスの王と勇者姫を攫って行った事から事件が始まり……。
「料理が口に合いませんでしたか?」
「滅相もございません!……凄く、美味しいです」
挙句の果てに王様にまで心配されてしまったので私はヤンガスを見習ってガツガツと料理を胃に流し込んだ。
そんな姿を見て王様も安心してくれたようで、こちらも安堵した。
王様の話によると、この国にドルマゲスは立ち寄っていないみたいだった。
私たちが一番求めていた情報は結局手に入らず残念な結果になってしまったけれど、それでも国が元気になったのだからこちらとしては良かったと思う。
久しぶりに美味しい料理も食べられたし、満足かな。
ドルマゲスはいないのだから、長居は無用という事で私たちはアスカンタを発つ事になった。
外に出ると王様がなにやら拗ねた様子で私達を出迎えてくれた。
そうだよね……私たちが美味しいご飯を食べている間、王様はずっと外で待ってたんだもんね。
そんな王様を元気付ける為に、ヤンガスの提案で彼の故郷のパルミドという町に行くことになった。
そこなら魔物の姿の王様を見てもみんな気にしないから気兼ねなく過ごせるだろう、と。
でもってパルミドには情報屋なんかもいるらしいから、もしかしたらドルマゲスの手掛かりも掴めるかもしれない。
道中、めずらしくエイトが私の隣を歩いていた。
いつもは先頭にいるのに今日はその役割をククールが担っている。
「……何?」
エイトの視線がちょっと痛くて、私は少しイラついたように問いかけてしまった。
彼は困ったように頭を掻きながら心配そうにこちらを覗き込んでくる。
「ごめん、迷惑だったかな……なんだか元気がないように感じたから……」
「ごめんなさい……ちょっと、考え事してただけ」
今はこうしてエイト達と旅をしているの訳だけれど、本当はずっとアストルティアの事が気になっていた。
クロウズは、エステラは、そして姉は……どうしているだろうか。
もしかしたらもう、エジャルナの大聖堂に張られていた結界を解く方法が見つかっているかもしれない。
最期の戦いが始まってしまっているかもしれない。
そう思うと、今すぐにでも自分のいるべき世界へ走り出したくなった。