コネクト~わだかまり~
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「冥王は炎の魔法で姉を消し去ろうとした……私は咄嗟に姉に腕を伸ばしたの……助けたい、死なないでって強く願った」
そんな時だった。
突然、時が止まった。
騒々しく暴れまわっていた魔物の動きは止まり、姉を焼こうとしていた炎も姉を包み込む直前で停止していた。
私に自由が与えられた時には姉は不思議な光に包まれて、その場から姿を消していた。
「無意識のうちに私は時渡りの力を使って姉を違う時間に送ってしまったの……そして私は……冥王に殺された」
「殺されたって……ルシアはこうして生きているじゃない!」
ゼシカの言ってる事は最もだった。
死者が生き返るなんて普通はあり得ない。私だって自分の身に降りかかるまではそう思っていた。
「あの感覚は今でも忘れない……痛くて、怖くて、悔しくて悲しくて……もっと私が強ければ、もっと早く……。段々身体が冷たくなっていって、息が苦しくなって……視界が、真っ暗に……」
ククールにハンカチを差し出されて私は自分が泣いている事を知った。
素直にそれを受け取り涙を拭わせてもらう。
「もう、このまま消えてしまうんだな……そう思った時だった。綺麗な声に呼ばれて私は目を醒ましたの」
ついにあの世って所に来たんだって思った。
でも、そこは私の思っていた所とは違っていた。
私にはまだやるべき事がある。
だからこのまま死んではいけない。
私の肉体は冥王によって滅ぼされてしまったけれど、別人の身体を借りて目的を遂げるようにその声は告げた。
「勿論、最初は躊躇したよ?だって、他の人の身体を使うなんてそんな乗っ取りみたいな事したくないって。でもその身体の持ち主も……死んでしまっていたの……」
そして私はエルフ族の少女として転生し、アストルティアを渡る旅人になった。
正直心はズタボロだった。
「あの頃は仇を討つ事と姉を探しだす事だけを考えるようにしていた。そうする事で悪夢を忘れようとしていたの……」
「ルシア……」
なんて言葉をかけたらいいのか分からない、みんなそんな感じで黙り込んでいた。
「それからは本当に色んな事があった……良い事も、悪い事も沢山……でも此処までの道程は全部私が自分で選んできたものだから。後悔とかはないよ」
幾度も窮地に立たされた。
けれど、その度に数多の優しさに救われてきた。
「これで、私の話はおしまい」
目を閉じて、気持ちを落ち着かせるように。
とても現実的な話ではないけれど、それまでずっと言えなかった話を他人にできて気持ち的に楽になれたような気がした。
私の身の上を知ってる人は故郷でも数少ないからね……。
「でも、今は人間の姿をしているわよね……?」
ゼシカが疑問を口にした。
そっか、その辺の話をしてなかった。
「私がエルフの身体でいる間、神様の眷属みたいな人が本来の私の器を再生させてくれたみたいなの。それで元に戻れたのよ」
私はベッドから身体を降ろしながら自分の胸に手を当てた。
ちゃんと鳴り響いている鼓動。
自分は今、生きている。
「……とてもじゃねぇけど、信じられない話でがす……」
素直に感想を述べるヤンガスに私は苦笑する。
こんな現実離れした話を聞いてはいそうですかと納得できる方がおかしいのだから。