コネクト~わだかまり~
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自分の仲介能力の無さに絶望している私と、もう止める気力もないのかただただこのカオスな状況を眺めているエイト。
そんな私たちの前を酒瓶やらコップやらが飛び交う。
「もう!我慢ならないわ!こんな奴ら……!」
「ま、魔法はダメだよ!」
手の中に火を生み出すゼシカを私が止めようとするよりも早く、イカサマ疑惑をかけられていたお兄さんが彼女の腕を引いて魔法の発動を抑えてくれた。
私がほっとしていると、そのままエイトと私もお兄さんに引き連れられて酒場を出る。
店の裏手へ着くとゼシカがお兄さんの腕を振り解き、睨みつけていた。
それを特に気に留める様子もなくお兄さんは飄々をと礼を述べると私とゼシカを交互に見遣る。
「……何か?」
ジロジロ見られてゼシカが益々不機嫌そうに吐き捨てる。
お願いだからこれ以上彼女を刺激しないで欲しいと私は切に願った。
「俺のせいで怪我をさせてないか心配でね」
「私は何ともないですよ!見てただけだし……ゼシカは大丈夫だった?」
「平気よ、なんともないわ」
私たちの返事を聞くなり、お兄さんは手袋を外して手に嵌めていた指輪を抜き取ると私の指にそれを通してきた。
「あ、あの……これは?」
「助けてくれた礼と、今日の出会いの記念に。……俺の名前はククール。マイエラ修道院に住んでる。その指輪があれば俺に会える」
「いらないわよそんなもの!ルシア、突き返してやりましょ!」
「う、うん!……あ……」
「マイエラ修道院のククールだ!忘れないでくれよ!」
指輪を還そうと思ったときには既にお兄さん……もといククールは私達から少し離れたところにいてそのまま走り去ってしまった。
「ど、どうしよう……これ……」
「決まってるじゃない!マイエラ修道院まで行ってあのケーハク男に叩き返してやるのよ!」
「そうだね……大事なものだったら困るし返さなきゃ……」
とりあえずククールから受け取った指輪をエイトに預けておくと、喧嘩を終えたらしいヤンガスが晴れやかな顔でこちらにやってきた。
「兄貴!ここにいたんでげすか!あいつらコテンパンにとっちめてやりやしたでがす!」
「お、お疲れ様……」
苦笑しつつヤンガスを労わると、私たちはさっきまでの事を話ながら宿へと向って歩き出した。
そういえば夕飯食べ損ねちゃったなぁ。
そんな事を思いつつ、私はエイトと一緒にゼシカの愚痴を聞いていた。
宿に着くなり、明日の待ち合わせの時間を決めてそれぞれの部屋へと散っていく。
今回は空き室があまりなかったから、私はゼシカと相部屋だった。
「はぁ。腹が立ったらお腹空いちゃったわ」
「夕飯食べられなかったしね。……私の手料理で良かったら、食べる?」
実は私はアストルティアの調理ギルドに籍を置いているから、そういう事が苦手ではない。
私の言葉を聞いたゼシカの瞳がキラキラと輝くのが見えた。
「ルシアってそんなこともできるのね。お願いして良いかしら?」
「うん、ちょっとお勝手借りてくるね」
私は愛用の調理器具と持っていた食材を手にして宿の厨房に向かっていく。
厨房を覗き込んでみると人がいたのでその人に許可を貰って適当に調理を始めた。
「……こんなもんかな?」
完成した料理を持ってまず先にエイト達のいるであろう部屋へ向かう。
手が離せないから扉の外からエイトの名前を呼ぶと、すぐにドアが開いた。
「これ……良かったら食べて?お腹空いてないかなって思って……」
「ありがとう……これ、ルシアが?」
「一応……口に合わなかったら捨ててくれていいから!」
半ば強引に押し付ける形でマジカルサンドが乗った皿をエイトに押し付けると私は逃げるようにその場を去った。
それから再び厨房に戻って後片付けを済ませた後に自分たちの分を持ってゼシカの元へ戻っていく。