コネクト~幽玄の園~
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「おいおい、こいつらまだやる気かよ!?」
舌打ちをしつつ、ククールが再び攻撃を仕掛けようと詠唱に入る。
ククールが攻撃に回っているのをなんとなく珍しく思っていると、とある違和感を抱く。
いつも補助や回復をしているククールが攻撃呪文を使っている。
それは回復をする必要がないから。
つまり、エイトやヤンガス、ゼシカは敵の攻撃を殆ど受けていないという事。
オオカミ達はエイト達に傷を与えていない?これだけの数なのに?
此方がダメージを与えても反撃してきていない。
そこで私は気づく。
「まさか……今までのは、囮!?」
はっとして後ろを振り返ると、上空から数体のオオカミが飛び掛かってきていた。
私は正面からオオカミに身体を押し倒されてしまう。
「ルシア!」
「私は大丈夫!それよりグラッドさんをっ!」
ゼシカが私を助けようと手の内に炎を生み出しているの見て、咄嗟に叫んだ。
喉元を食い千切ろうとしてくるオオカミの口に杖を挟み込み、必死に押し返す。
「くそ!こいつら!なぜ私を狙ってくるんだ!!!」
グラッドさんがオオカミに囲まれてしまっている。
早く助けにいかないと……!
剣を携えたエイトがグラッドさんに近づこうとすると、他の個体が妨害に入る。
無計画に襲ってきていたように思えていたけれど、しっかりと仕組まれていた。
グラッドさんを囲んでいたオオカミが足を一歩前に踏み出そうとした刹那、不気味な声が響き渡り、オオカミの動きがピタリと止まる。
『その者ではない。本物は別にいるはずだ……真の賢者を探すのだ』
声が止んだかと思いきや、あれだけ好戦的だったオオカミ達が退いていく。
私に襲い掛かっていた個体もすんなりと身を引いた。
「今の声……私、聞いたことがあるわ……どこで聞いたのかはぼんやりとして思い出せないけれど……」
「賢者がどうとか言ってたが……まさかな……」
なんだか胸騒ぎがする。
それは私だけではないようで、みんな表情を曇らせていた。
とにかくこのまま外にいるのは危険だから、エイトのルーラでオークニスに戻る事にした。
町に到着するなり、グラッドさんが自宅に招待してくれた。
……さっき勝手にお邪魔しちゃったから、なんとなく気まずかったんだけど。
私たちに何か話したい事があるとかで、休憩も兼ねて遠慮なくお邪魔させてもらう。
家に入るなりグラッドさんは薬湯を振舞ってくれた。
この味、メディおばあさんが出してくれたものと同じだ。
口にして、メディおばあさんが飲ませてくれた薬湯の効果が薄れてきていた事に気付いた。
下がりつつあった体温が上昇し、身体の怠さが抜けていく。
「話というのは私と薬師メディの関係の事なんだが……」
少し言いにくそうに、グラッドさんは語りだす。
メディおばあさんはグラッドさんの母親で、本来ならば遺跡を守護する役を継ぐ筈だったそう。
けれど薬学の知識を人の役に立てたくて、その役割を放棄し、オークニスに移り住んだのだと。
調合した薬で人々を救ってもメディおばあさんを残してきてしまった罪悪感は拭えなかったと、グラッドさんはうっすらを涙を浮かべながら話してくれた。
けれど、本題はここからだった。
「あの不気味な声……真の賢者を探していると言っていた。実は私の家系には暗黒神を封じた賢者のひとりの血が流れているんだ。そして同じ血を引く者は私以外には母しかいないはず……」
「それって……」
「メディばあさんが危ないでがす!」
「大変!急いで助けに行くわよ!!」
メディおばあさんが賢者の末裔というのなら、今までの事を顧みても命が危ない。
あの声はグラッドさんを見て違うと言っていた。
退いたオオカミ達がメディおばあさんを襲っているかもしれないと考えると、薬湯を飲んだばかりだというのに背筋が寒くなる。
「こうしちゃ居られない……とにかく急ごう!」
みんなでグラッドさんの家を飛び出して町の出口を目指していると、ちょうど出入口に酔いつぶれた男が倒れていた。
どうやら処置が必要のようでグラッドさんは手当てをしてから後を追いかけてくることになった。
グラッドさんと別れて町の外に出るなり、エイトのルーラでメディおばあさんの元へと急ぐ。
「……間に合って……お願いだから無事でいて……!!!」
ゼシカの口からみんなの切なる願いが譫言のように囁かれる。
現地に到着すると、そこは既にオオカミ達に占拠されていた。
「遅かったか……!?」
「メディおばあさん!!!」
私達に気付いたオオカミ達が牙を剥けてくるのを薙ぎ払いながら、メディおばあさんの家の中で彼女の姿を探した。
けれど、そこには誰もいなかった。
リビングも、みんなが寝泊まりさせて貰った部屋にも、どこにもいない。
「ばあさんはもう……あいつらに食われちまったってのか……!?」
ヤンガスが悔しそうに壁に拳を打ち付ける。
みんなに絶望が押し寄せてくる中、外に出るとククールが一点を指さした。
「おい、あそこを見ろよ!」
みんなで其方に目を向けると、洞窟が目に入った。
そういえば、メディおばあさんは遺跡の管理をしているとか言っていた気がする……
もしかすると、遺跡の中に避難しているのかもしれない。
一抹の希望を抱いて、みんなで洞窟へと向かって駆け出した。
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