コネクト~幽玄の園~
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「……いないみたいだね」
「留守なのかな?」
綺麗に整頓された部屋の中は無人だった。
けれど、ここで生活を営んでいる痕跡はしっかりと残っていて。
飲みかけのグラスがサイドテーブルに置かれたままになっているのを見て、家を出てそんなに時間が経っていないのかもしれないと感じた。
「待ってたら帰って来るかな?」
「うーん、でも何時になるか解らないし。またトロデ王に機嫌を損ねられても厄介だし、探しに行ってみようか」
そんなに広い町じゃないからもしかしたら他のメンバーが巡り会っている可能性もあると、エイトと二人で部屋を後にした。
とぼとぼと通路を歩いていると、通行人の女性に声を掛けられる。
「その様子だとグラッドさんは留守だったのね。最近見かけないから、病気で臥せっているのかと心配していたのよ」
買い物にでも行くのか、籠の持ち手を腕に通し、上品に笑うこの女性には見覚えがある。
確か、町長の家の奥様だったような……。
女性に軽く頭を下げてからどうしたものかとエイトを見遣る。
彼も困った様に私の方を見返していた。
「ったく、こんな道のど真ん中で熱烈に見つめ合うなよ」
聞き覚えのある声がしたと思って其方を向くと、ククールがひらひらと手を振っている。
「別に見つめ合ってない!」
私がすかさず言い返すと、隣で小さな溜息が聴こえた。
「ルシア、そうやって反応するからククールに弄ばれるんだよ?そんなところも可愛いけど」
「なっ……!も、もう!今はそんな事言ってる場合じゃないでしょう!?これからどうするの?」
少し語気を強くしてエイトに言い放つと、彼は苦笑したあとに「ごめん」と謝ってくれた。
「街の人の話によると、グラッドさんは薬草を摂りに洞窟に出入りしてるみたいよ?後、黒い犬の事は何も聞けなかったわ」
「オオカミの群れがウロウロしてるって話はあったけどな」
一連のやり取りを生暖かく見守っていたゼシカが話に入って来てくれた。
流石ゼシカ!頼りになる!
ここで一回、お互い知り得た情報を共有する。
留守にしていたグラッドさん、しかも暫く様子を見ていない、薬草を摂りに洞窟に出入りしている、町の周りをうろついているオオカミの群れ。
「……これって、ちょっとヤバイんじゃない?」
話を繋いでいくと、グラッドさんは薬草を摂りに行ってオオカミの群れに襲われて……なんて流れにならなくもない。
最悪の事態を予想し、4人で青ざめているところに買い物袋を抱えたヤンガスが合流してきた。
「兄貴!言われた通り買ってきましたでがす!」
「うん、ありがとう」
エイトがヤンガスから袋を受け取り、中からマントを取り出してみんなに手渡す。
「洞窟へ行かないといけなくなったし、丁度良かったね。こんなのでも無いよりマシだと思うから、羽織っていこう」
私もそれを受け取って、早速身に付ける。
一見薄い生地で出来ているように見えるけれど、保温性が高いのかとても暖かい。
これなら戦闘で動き回っても邪魔にならなそう。
特殊な繊維で編みこまれているのかな?
寒さ対策も出来た所で、グラッドさんを探して洞窟を目指す。
また厳しい雪道を歩くのかと思うと気落ちしなくもないけれど、恩人であるメディおばあさんからの頼まれごとを果たす為と思えばやる気が沸いて来る……気がする。
暫くみんなで歩みを進めていくと、目的地の入り口と思われるものが
見え始める。
ヌーク草の効果が切れて王様達が凍えてしまう前に早く用事を済まさなきゃ。
足元に気を付けつつ、洞くつを奥へ奥へと進んでいく。
こういう場所にはやっぱりというか、魔物がいるわけで。
「メラゾ……きゃぁ!?」
「ゼシカ!?」
呪文を発動させようとした瞬間、薄く張っていた氷に足を滑らせてゼシカが転倒してしまう。
びっくりして彼女に駆け寄ろうとするけれど、私が到着する前にククールが助け起こしていた。
「いったー……まさか地面が凍ってるなんて、気付かなかったわ」
大した怪我はないみたいで、ククールがこっちは大丈夫だと言わんばかりに視線を送って来る。
襲い掛かって来ていた魔物はエイトが仕留めてくれて、無事に戦闘が終了する。
周囲を見渡して魔物の気配が完全に消えた事を確認すると、私も武器を収めた。
「それにしても、グラッドさんは何処にいるのかしら……結構奥まで来たと思うんだけど」
ククールの手を借りて立ち上がりながら、ゼシカが溜息を吐く。
ゼシカはククールに突っかかるような言動が多いけれど、こうして見ていると何だかんだ信頼し合っているんだなぁ、とかぼんやりと思った。
その思考が顔に出ていたのか、ゼシカが私に気付いて慌ててククールの手を振り払う。