コネクト~幽玄の園~
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翌朝。
メディおばあさんが振舞ってくれた朝食を有難く頂き、私達はオークニスへ向けて出発した。
出発時にメディおばあさんから一つ頼まれごとをされた。
勿論断る筈もなく快く引き受けると、目的地を目指して雪道を一歩一歩、踏みしめていく。
「ヌーク草って本当に凄いのね!全く寒さを感じないわ!」
見た感じ凄く寒そうな恰好をしているのに、上機嫌に私の隣を歩いているゼシカ。
「だけど、町に付いたらちゃんと濡れた服を乾かさないとね。このままでいたら絶対風邪引くだろうし」
吹雪まではいかないけれど、細かな雪がしんしんと降り続いている。
寒さを感じていないとはいえ、体温で溶けた雪が確実に衣服を濡らしていってる訳で。
薬湯の効果で身体は温かいし寒さは殆ど感じていないけれど、衣服はしっかり冷えているから何かの拍子に風邪を引いてしまうかもしれない。
「それから防寒着も買っておきたいよね。道中でヌーク草の効果が切れたりなんかしたら地獄だし……」
「街で一度薬湯を飲み直したいわよね。その後は効果が切れる前にさっさと情報収集してこんな寒い場所からはオサラバしましょ」
ゼシカに概ね同意しつつ私は雪原を見渡す。
僅かに日が出てきていて、雪が太陽の光を反射してキラキラと輝いている様に見える。
観光でこの地を訪れているのなら、幻想的な風景を前にさぞかし気持ちが盛り上がるのだろうけれど。
全部落ち着いたら、ゆっくりこの世界を見て回るのも良いかもしれない。
そんな事を考えつつ、みんなからはぐれてしまわないようにいつもより距離を詰めて黙々と歩みを進めた。
暫く行くと、氷で出来ていると思われるアーチのようなものが目に入ってきた。
その奥に扉があり、建物が見える。
最初は町がこの雪で埋もれてしまったのかと思ったけれど、元々そういう造りのようだ。
今まで様々な街を見て来たけれど、その土地の環境に適応して生活を営んでいる人々の知恵と技術には毎度感心させられる。
私が育った村は気候は穏やかな方だったから、こんな寒い所でずっと過ごしていくなんて考えれない。
普通に凄い事だと思う。
「……トロデ王とミーティア姫は?ここで待ってもらうの?」
ふと気になった事をエイトに訊ねてみる。
「こんな所で待たせたら流石のオッサンでも凍死するでげすよ!」
「今はヌーク草で寒さを紛らわせているから良いが、ずっとって訳にもいかないしな。馬姫様も風邪を引いてしまうかもしれない」
「心配はいらん!お前達がさっさと用事を済ませれば良いだけの事じゃ!」
「そうですね。必要最低限の物だけ買い込んで、グラッドさんにこれを渡して、聞き込みをしてからここを離れよう」
メディおばあさんから預かった袋を手にしながらエイトがみんなに伝えた。
話が決まれば早いもので、役割分担をして町中を探索しつつ情報収集を開始する。
聞き込みの方はゼシカとククールが担当して、ヤンガスは買い出し、私は何故かエイトとグラッドさん探しに回された。
いつもエイトと行動するのはヤンガスなのに……。
昨日の今日で二人きりにされるのはちょっと気恥ずかしいというか、照れくさいというか。
私が変に意識しすぎているだけなんだろうけども……。
オークニスの町は建物同士が繋がっていて、上が商業区、地下が居住区、みたいになってるのかな?
中庭の真ん中に堂々と建つお家に町長がいて、グラッドさんの事を訊いてみると、町長が彼に部屋を貸しているという。
案外すんなりとグラッドさんの手掛かりが掴めて、エイトと顔を見合わせて安堵し合う。
けれど、実際はそう甘くはなかった。
「こんにちはー、突然すみません。グラッドさん、いらっしゃいますか?」
エイトが幾度か声を掛けているのだけど、応答がない。
不審者だと思われて居留守を使われていたりして……?
「あの、私達、メディおばあさんに頼まれてきた使いの者なんですけど……」
やっぱり返事がない。
オークニスは寒さを凌ぐ為に強いお酒を飲む風習があるようだから、もしかして酔っぱらって寝てたりして?
……こちらにも都合というものがあるのであって、長居をするつもりはない。
「グラッドさん?入りますよ?」
そう声を掛けてからドアノブを回してみると、すんなりと扉が開く。
そんな私の様子を見ていたエイトがぽつりと一言。
「ルシアって結構強引なところもあるんだね」
「だって、早く片付けないと。王様達が風邪ひいちゃうし」
「それもそうだね」
少しだけ楽しそうにしているエイトの意図が何となく汲み取れてしまって、顔が熱くなる。
「も、もう!そういうの、禁止!」
「ルシアの新たな一面が見れて良かったなって思っただけだよ?」
「言わなくていいから!……何だかエイト、ククールに感化されてない?」
「それは気のせい」
にっこり笑うと、エイトはそそくさと中へ入っていく。
ドアノブに掛けたままだった手を離して、私も後に続いた。