コネクト~幽玄の園~
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「……エイトにはちゃんと相応しい人がいるって、気付いたの」
「それってミーティア姫の事?」
「うーん……そうなるのかなぁ。取り敢えず、私以外の誰か」
ベッドにうつ伏せになって枕に顔を埋めながらそう答えると、呆れたような、失望したようなゼシカのため息が聴こえた。
「あのね……じゃあ、エイトはどうするの?ルシアはそれで良いかもしれないけど、エイトは?一度は受け入れたのに今更突き放すって……流石に酷いんじゃないかしら」
ゼシカの言う事は最もだと思う。
こんな事なら気持ちを伝えるんじゃなかった。
ハッキリと言った記憶はないけれど、思わせぶりな事をするんじゃなかった。
「大体、なんでそんな風になったの?私が身体を乗っ取られてる間に何かあった?」
毛布の中に立てこもろうとする私の所にゼシカがズカズカと押し入って来る。
観念した私は上体を起こして、ゼシカと並んでベッドの淵に腰かけた。
「ゼシカはエイトからどこまで聞いた?」
「どこまでって……ルシアは呪文を使えない状態になってて、それを解除しに行ってる、みたいな話しか聴いてないわ。……その事と関係があるの?」
彼女の口振りからすると呪文を使えなくなった直接的な原因までは知らないみたいだった。
どうせそのうち聴く事になるだろうしと思い、私は事の顛末を話して聞かせる。
一度目のドルマゲスとの戦いでみんなを傷付けてしまった事。
それは私に対するこの世界からの警告だった事。
そしてこの世界は私を遠ざけたい意志がある事。
話し終えた後ゼシカは暫く口を閉ざしていた。
世界だとか意志だとか、いきなりそんな夢物語のような事を聞かされて困惑するのは当たり前だよね。
「……ルシアはそれでいいの?」
絞り出すような声でゼシカが訊いてきた。
「だって、来たくて来た訳じゃないのにお帰り下さいって……そんな失礼な事ってある?腹立たしくないの?しかも拒絶する割りに帰還の仕方は教えてくれないのよ?意地が悪すぎるわ!」
こんな話を訊かされてまるで自分の事のように憤慨してくれるゼシカの優しさが、とても嬉しかった。
思わず泣いてしまいそうになるのを堪える為に、目を閉じて少し顔を伏せる。
そんな私の隣でゼシカはぶらぶら動かしていた足をふと止めた。
「だったらこう考えない?ルシアがこの世界にやって来たのはエイトに逢う為。世界を越えて運命の人に巡り会う為。こっちの方が何倍も素敵よ!」
「それはちょっと無理があるんじゃ……」
「現に二人は愛し合ってるじゃない?そうよ!その為だったのよ!」
「……ゼシカ、ちょっと面白がってない?」
一人で盛り上がり始めるゼシカに少し呆れつつ、私は小さく溜息を吐いた。
エイトに逢う為、か。
出逢って、好きになって、それでどうなるんだろう……。
今の私には先の事なんて何一つ見えない。
ただ解るのは、お姉ちゃんを取り戻したい、またお姉ちゃんと一緒に居たいという強い気持ちがあるという事だけ。
そこにエイトも居てくれたなら、どんなに幸せだろう。
けれど、そんな欲張りで我が儘な未来を選ぶことは出来そうにない。
ゼシカの口実に乗せられた訳じゃないけれど、私も一緒に想いを馳せてしまう。
「運命的な出会いを果たした二人は結ばれて、子宝にも恵まれて幸せな未来を過ごすの。うん、良いじゃない!これでいきましょう!」
「でも私、向こうに帰ったらやる事沢山あるし……」
「そんなのエイトにも手伝わせれば良いのよ。ルシアの頼みなら喜んで引き受けてくれるんじゃない?」
「うーん……危ない事にエイトを巻き込むのは嫌かも。今度は本当に、生きて帰れるか判らないから……」
「それなら尚更エイトが居てくれた方が生存率が上がるんじゃないの?エイトはあれで回復も攻撃もできる万能型だしね」
確かに一緒に居てくれたら心強いかもしれないけど、それでも……。
ゼシカが思い描いてくれるような未来は来ない。
だけど……考えるだけならタダだし、ちょっと恥ずかしいけど今日は良いかな……?
その後もゼシカの考えるエイトと過ごす未来の話が延々と続いていた。
時間が時間なのと少しお酒が入っていたのもあって、話が如何わしい内容に及びそうになったところで強制的に部屋の灯りを落とし、休む事にした。
ベッドに入り直して目を閉じて眠ろうとしたところで、私はふと気付く。
もしかしてゼシカはエイトに想いを寄せているんじゃないかな……?
いつもククールとじゃれ合っているから、ククールの事が好きなのかと思ってたけど……。
普通、興味のない人に対してここまで話を膨らませられる?
私の事を元気付けようとしてくれた裏で、好きな人の……エイトの幸せを願っているんだとしたら……?
……流石に考えすぎかな。
ここで思考を止めて眠りに就こうと思ったのに、目が冴えてしまったようでいつまで経っても寝付く事が出来ず、何度も何度も寝返りを打つ。