コネクト~幽玄の園~
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……私は何を考えているんだろう。
これ以上の事なんて、あってはいけないのに。
それでも身体に伝わって来るエイトの温もりはとても心地よいもので、無理に押し返そうという気にはなれなかった。
そんな甘えた考えでいるから、私はこの想いを断ち切れないし彼も正気に戻る事が出来ないというのに。
私はなんて愚かなんだろう……。
「……エイト、そろそろ離して?貴方が目を覚ましたってみんなにも教えてあげないと……とても心配してると思うから」
どうにか言い訳を探し当てた私は控えめにそう告げた。
「そうだね。……ごめん、嫌な思いさせちゃったね」
エイトの寂しそうな声が私の胸を貫いていく。
それは痛みとなって、じわじわと心の内側へ拡がっていった。
私の身勝手のせいで彼も同じ痛みを感じているのかな。
けれど、彼の抱くその気持ちこそがこの世界に生じた歪みなのだと思う。
だからこそ私の手で正さないといけない。
背中に回されていた彼の腕がそっと解かれてその場を離れようとすると、不意に身体を引き寄せられる。
「なっ……!」
何するの?そう言いたかったのに、口は塞がれてしまっている。
柔らかくて温かな感触をそこに感じ、本当は逃れなくてはいけない筈なのに私は動く事が出来なかった。
ただ重ねられていただけの唇が濡らされる。
その行為を制止しなければと思いつつ、まるで身体の主導権をエイトに奪われてしまったかのように、薄く口を開き彼の舌を受け容れてしまった。
「んっ……はぁっ……」
舌を絡め取られ、吸い上げられる。
一気に上昇していく体温と胸に焼き付く罪悪感。
私の中にはまだ彼への愛情があると、エイトは知っている。
だから抵抗できない。寧ろ悦んでこの状況を甘受してしまう。
それら全てを踏まえてこんな事をするなんて……とても酷い人。
でも、それを拒否できない私はもっと酷い人間だ。
駄目だと頭では判っていても、身体は拒むことをさせない。
それからどれ程の時間が経ったのだろう。
時の経過を忘れてしまうくらい、私はエイトからの接吻に没頭してしまっていた。
何方からともなく身体を離し、熱の篭った視線が交わる。
呼吸は乱され、頬は熱く火照っている。
私の全部がエイトを欲しがっているのが嫌というくらい解ってしまう。
「部屋に……戻るね」
どうにか言葉を紡ぎだし、彼に背を向けて逃げるように部屋を出て行く。
後ろ手で扉を閉めると力の抜けた身体はズルズルと崩れていって、そのまま蹲ってしまった。
(私……なんてことをっ……)
まだ少し湿っている自分の唇に指先でそっと触れる。
部屋とは違い暖房器具の置かれていない廊下はひんやりとした空気が充満していて、熱を冷ますのには最適だった。
冷静さを取り戻した私は、今しでかしてしまった事を早速後悔していた。
「あっ、ルシア!エイトはどうだった?」
隣の部屋から出て来たゼシカが私を発見し、そう訊いてくる。
私は慌てて立ち上がり、幾度もコクコクと頷いた。
「えっと……目を覚ましたみたい……顔色も良くなったし、大丈夫だと思う」
「そう!それなら良かったわ」
眦を下げ、小さく息を吐くゼシカの様子からして心底安心したのだと思う。
そんな彼女の様子を微笑ましく眺めていると、ふとゼシカが眉を寄せる。
「ところでルシアはどうしてそんな所に座り込んでたの?」
「……え?」
一番触れて欲しくないところを突かれ、私は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
ゼシカはどこか楽しそうな様子で私に詰め寄って来る。
「もしかして……もしかするの?」
「なっ……何が?」
悪戯に笑うゼシカ。
……いつものパターンが来ると踏んだ私はそそくさと最初に居た部屋へと戻ろうとする。
「ちょっと!逃がすわけないでしょ!」
すれ違いざまにゼシカに手首を掴まれて、私は思わずビクッと身体を震わせてしまった。
「エイトと何してたの?」
「何って……別に何にも……」
「ふぅん?……なんだかルシア、顔がトロンとしてない?」
「そそそそんなことないよ!!普通だよ!」
先程の事が思い出されて私は思わずどもってしまい、余計に怪しまれる。
顔が熱くなっていき、それを治めようと両手を頬にあてた。
「……後でじっくり訊かせてもらう事にするわね」
「本当に何でもないってば……」
「だってなんか……ルシア、エッチな顔してたわよ?」
「そんな事ないって!」
ゼシカと押し問答をしていると、ドアの開く音が耳に入る。
程なくして服を着込んだエイトが部屋から出て来た。
「二人ともどうしたの?」
「あらエイト、丁度いい所に!」
ゼシカはまた私の手を掴み、そのままエイトの所へ引きずるようにして連れて行かれる。
「部屋でルシアと何してたの?」
「んー……別に何も?少し話をしただけだよ」
何食わぬ顔で飄々と言って退けるエイトが少しだけ羨ましかった。
私も彼のように淡々として居られれば良かったのにと心底思う。
エイトの答えを聞いて、なぁーんだとつまらなそうに去っていくゼシカを見送り、私はそっと溜息を吐く。
助かった、そう思った。
けれど顔を上げてみるとエイトと目が合う。
彼は何処か不敵に……挑戦的な視線を私に向けていた。
「ルシア……あれが僕の答えだよ」
「え……。」
何処かで訊いたことのある台詞に、また顔が熱くなっていく。
顔どころじゃない。首まで熱い。
何も言えず、私はただただエイトを見返す事しか出来ない。
そんな私の様子を愉しそうにエイトが見ていた。