コネクト~幽玄の園~
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凍えてしまいそうになりながらもどうにか進んで行く。
止め処なく雪が降り続けているだけならまだ良かったのに、風が強くなってきた。
それがますますみんなの体温を奪い、気力を削っていく。
「……なんでわしがこんな寒い思いをせねばならんのだ。これも全てドルマゲスのせい……奴は死んだか。ならレオなんとかという犬のせいじゃな……全く犬の分際で……」
吹雪の音に混ざって御者台からそんな声が聴こえて来た。
すると、王様の小言が気に障ったらしいヤンガスが大袈裟に溜息を吐く。
「ごちゃごちゃうるせえなぁ!こっちだって寒さに気が立ってんだ!ちったあ黙ってろよ!」
いつもの独特な語尾が消えちゃってる辺り、本当に頭に来てるらしい。
というか、あの喋り方はヤンガスなりの愛嬌なのかもしれない。
少しぼんやりしてきた頭でそんな事を思っていると、馬車が止まり御者台から王様が少し身を乗り出してヤンガスと言い合いを始める。
寒さに参ってしまっているのか、誰も止めない。
言いたい事を一頻り言い放ったらしい王様は、馬車を走らせて先に行ってしまった。
横でゼシカが小さく溜息を吐いたのが聴こえた。
このまま立ち止まっている訳にもいかないので、馬車を追いかけようと足を踏み出すと何か物音が聴こえて来た。
「……何か、聴こえない?」
私の隣で肩を竦めて震えていたゼシカに訊ねてみると、彼女は周辺を見回した後、首を左右に振る。
「お、おい!あれ!」
ククールの声が聴こえて其方に身体を向けた時にはもう、視界が真っ白になっていた。
その後の事は全く分からない。
けれど、次に目を覚ました時にはどこかの室内のベッドの上だった。
私、最近気絶してばかりの様な気がするのだけど……気のせいじゃないよね……。
自分がどうなっているのかを探ろうと手足を動かす。
寒くて感覚は鈍っていたものの、四肢はちゃんと動いた。
身体に痛みはないし、大丈夫と思いきや。
(……え?あれ?)
装備品が外れている事に気付いた。
それだけじゃない。下着も、何も纏っていない。
「あら、ルシア!目が覚めたのね」
困惑する私の前に、ガウンを身に纏ったゼシカが顔を見せた。
「ゼシカ……此処は何処?私達、どうなったの……?」
「雪崩に巻き込まれたところを助け出されたのよ。服とかまだ全然乾いてないから、今干して貰ってるところ。ルシアもこれを借りて着るといいわ。生地がモコモコしてて結構温かいわよ」
そう言ってゼシカは私の足元で畳まれたガウンを指さすと、部屋に設置されていた暖炉の前に腰を降ろす。
暖炉の少し上で、私とゼシカの服が紐に吊るされていた。
私もガウンを借りて着ると、ゼシカの隣へ移動して腰を降ろした。
「こうしているとさっきまでの寒さが嘘みたいよね……」
「まさか雪崩が起きるなんて……他の皆は?大丈夫なのかな……?」
「野郎共はまだ寝てるみたい。どうやらトロデ王達が助けを呼びに行って、私達を雪の中から掘り出してくれたらしいわ」
「そうだったんだ……」
暖炉の炎に手を翳して温まっているゼシカを眺めながら、取り敢えずみんなの無事を知って胸中で安堵する。
「……ねぇ、ルシア……私は、赦されるのかな」
揺らめく炎を見つめたまま、ゼシカが呟くように言った。
「あの杖に意識を取られてたとはいえ、私……人を傷付けちゃったじゃない?挙句、チェルスは命を落として……結局何も出来なかった。兄さんが亡くなった時もだけど……本当に、自分の無力さを呪ったわ……。」
「何も出来なかったのは私も同じだから。……それに……私、ゼシカの事……」
もしもハワードさんの結界が間に合わなかったら、私はゼシカを手にかけていたかもしれない。
エイトが自分がやると言って止めてくれたけれど、そんな嫌な役割を彼一人に背負わせる事もきっとできなかっただろうし。
ゼシカになんて詫びれば良いのか言葉を探していると、彼女は全てを察した様な顔で私に目を向けた。
「……ああ、その事ね。エイトからも訊いたわ。それならそれで良かったのよ。自分の知らない所で誰かを殺してしまうくらいなら、そうしてくれた方が良かった。ルシアのその判断には感謝してるわ」
「……ごめんなさい……。」
「本当に良いのよ。私だってルシアや町のみんなを傷付けたわ。殺されたって仕方がない」
殺されたって仕方がない。
……じゃあ、私もそうなのかな。
私はゼシカより酷い事を彼女自身やみんなにしてる。
時が戻ったとしてもそれは事実で。
今、みんなは無事に生きてる。
だけどきっとこの罪の意識が消える事はない。
「……ゼシカ……ごめんなさい……」
あの時の事を思い出し、私はもう一度謝罪していた。
謝った所で罪は消えないのに。
自分が少しでも楽になる為に……私はなんて、なんて嫌な人間なんだろう。