コネクト~幽玄の園~
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あれから私達はリブルアーチを出て次の目的地へ向けて出発した。
あの黒い犬……レオパルドを追いかけて、北へと向かっていく。
「なぁ……ルシア」
「なに?」
魔物を警戒しながら道を歩いていると、ククールが小声で話しかけて来た。
「エイトと何かあったのか?喧嘩でもしたか?」
「喧嘩?……してないと思うけど、どうして?」
心当たりがないわけじゃないけれど、動揺が顔に出ない様に必死に取り繕う。
ククールは察しがいいから、隠しきれないかもしれないけれど。
「エイトがさ、ルシアの様子を見に行って戻ってきた時……なんかこの世の終わりでも見たような顔してたから気になってな」
「そうなの?……うーん、私にはちょっと分からない」
街を出る時、エイトは至って普通にみんなと接していたし、私に対する態度もいつもと変わらなかった。
体調を心配されて、出発できるかどうか訊かれて。
何事もなかったかのようにしていたから、エイトは大丈夫なのだと勝手に思っていた。
「ルシア、泣いたのか?目が腫れてるぜ」
「えっ……そ、そう?寝起きに目を擦っちゃったから、そのせいかも……」
ククールに指摘されて、私は慌てて自分の瞼に触れる。
泣きはらした後に何度も水で顔を洗って、取り戻したばかりの回復魔法を重ね掛けしてみたりして処置をしたつもりだったのに。
「それもあって喧嘩でもしたのかと思ったんだが……どうやら俺の見当違いだったようだな」
「うん……。」
ククールはそう言うけど、きっと本当は気付いてる。
部屋を出た時に見たというエイトの表情や私の腫れた目。
何があったのか推測がつくだけの材料は充分に揃ってしまっている。
ククールに気付かれない様に小さく溜息を吐きつつ、私は前を歩いているエイトに目を向けた。
彼は地図を広げながらゼシカと会話をしていた。
ここからだと彼の表情は窺えないけれど、聴こえてくる声色はいつもと変わらないものの様に思える。
ふと、エイトが私に気付いて此方を振り返った。
私と目が合うと彼はいつもみたいに少しだけ微笑んでから、再びゼシカの方に向き直る。
その動作の一つ一つが本当にいつも通りで、さっきの事が夢だったようにさえ思えてしまう。
それともエイトは私の言葉を真に受けず、受け流してしまったのだろうか。
そうだとしても、私の気持ちはもう決まっている。
この世界の意志に寄り添う。
それが一番いい結果に繋がっていくと、そう判断したのだから。
「また考え事か?あんまり思い悩まない方がいいぜ?疲れるだけだ」
「……そうだよね……考えても、仕方ない事だってあるものね」
私は深呼吸をして、思考を振り払う。
今は目の前の事に集中しないと。
暫く歩いていると、トンネルの様なものが視えてくる。
中へ入っていくと見張りをしている人がいて
その人はどこか怯えた様子で私達を見るなり近づいてきた。
話を聞いてみると、大きな黒い犬がこの通路を通って行ったらしい。
「大きな黒い犬……間違いなさそうね」
ゼシカがどこか神妙な面持ちでそう呟く。
見張りの人と別れて、私達はトンネルを真っすぐ進んで行く。
「……なんだか寒くない?」
「ああ、やけに冷えるな……」
近くを歩いていたククールにそう訊くと、彼は腕を擦りながらそう答えた。
トンネルの中に入った時から冷気のようなものを感じていたけれど、先に進んで行くにつれてそれは強くなっていった。
「兄貴!出口でがす!」
ヤンガスのそんな声が聴こえたかと思いきや、真っ白に輝く出口が顔を見せる。
眩しさに目を伏せながら外へ出ると、一面の銀世界が広がっていた。
方角を見失いそうになりながらも雪道をみんなで慎重に歩く。
「さっむ~!さむさむさむさむ~!!」
「そりゃそんな恰好してれば寒いだろうよ」
ガクガクと身体を震わせ、凍えているゼシカを見ながらククールが呆れた声で呟いた。
確かにあの恰好は寒いよね。でも私も相当寒いよ?
だけど……雪を見たのはいつ以来かな?
ああ、氷の領界以来か。結構最近の出来事の様な気もするし、そうでもない気もする。
あの世界も相当寒かったけど、今も負けてない。寒い。とにかく寒い!
おまけに雪に足を取られて戦いにくいし、手が悴んで杖を持っているのも辛い。
まさかこんな寒い所にくるなんて想定していなかったから、防寒用の衣類も用意していない。
これは……風邪をひいちゃうかもしれない。
いつも袖を折っているエイトも今は降ろしてちゃんと長袖にしてる。
「馬車の中にマントか何か無かったかしら……」
「このままじゃ凍死確定でげす……」
肌面積の多い服装のゼシカとヤンガスと私は黒犬と戦う以前に死亡フラグが突き立てられた。