コネクト~真実と疑惑~
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「こうして戻ってきたって事は……大丈夫だったんだよね?」
「うん……どうにかなったと思う」
頬に添えられているエイトの手に自分のそれを重ねて、回復魔法を唱えてみると
言霊に反応を示し、癒しの光が沸き起こる。
それを見たエイトが表情を綻ばせた。
「すごいね、ルシアは。……感心しちゃうよ」
「ううん、全然そんなことないの。……こっちに来てから、自分の脆さに気付かされてばかり……」
確かに戦闘の技術や経験は私の方が豊富かもしれない。
だけど、精神面では全然エイトの方が強くて。
過去を引きずってばかりの私と違って、エイトはいつだって未来を見据えている。
……私がそういう風に捉えているだけで、彼の本心は分からないのだけど。
「エイトがいなかったら……きっと戻って来れなかったと思う。貴方の声がしたから、自分が何を恐れていたのかが分かって……」
「そっか。役に立てたなら嬉しい」
「護ってくれて、ありがとう……」
本当はエイトが護るべきはミーティア姫様で、私は護る側の立場でいないといけない筈なのに。
それに、心の中で出合ったあの人は私がこの世界にいる事をあまり好ましく思っていないみたいだから。
エイトに甘えるのはこれで最後にしないといけない。
彼の気持ちを本来あるべき場所へと還さないと。
本当は凄く名残惜しいのだけど、頬にあったエイトの手をさり気なく引き離して上体を起こす。
すると、一度は離れていった彼の腕が私の身体を包み込んだ。
「……エイト……」
「少しで良いから、このままで居させて……安心したい」
「わかった。じゃあ、そのままで良いから……訊いて」
緊張から鼓動が高鳴る。
きっとエイトに聴こえてしまっている。
けれど、それでもいい。
ちゃんとけじめをつけなきゃ……。
「エイトは……なんて言ったら分かって貰えるか、ちょっと難しいんだけど……」
確信はないのだけど、私は種族神の加護を受けている。
人に宛てにされたり頼りにされたりすることが多いのもその加護が少なからず影響を及ぼしているんじゃないかって、以前から薄々思っていた。
戦いの最中でその加護の力は本物なのだと悟った。
やたら運が良かったり、打たれ強かったり。
タフな体質も、人の愛情を受けられるのも全部加護があるからなんだって考えるようになった。
「……エイトは、神様の力のせいで……私の事、いい人だって思わされちゃってて……だから、きっと今こうしてくれるのも……その体質のせいで……」
「……何それ」
少しだけ不機嫌そうな声が聴こえてくる。
エイトの胸に埋もれている私はその表情は伺い知れないけれど、どこか不安を含んだその声色がやたらと耳に残った。
「エイトが本当に大切にしないといけない人は私じゃないの。……こうやって、抱きしめるべき相手は私じゃない……」
「どうして?……それは、ルシアが嫌だって事?」
「そうじゃなくて!……凄く嬉しいし、幸せだよ?でも……その気持ちが作り物だとしたら、悲しい……」
胸が掻きむしられるように苦しい。
だけど、今は耐えないと。
エイトが向けてくれる真っ直ぐな想いは分かってる。
だけど、この世界の為に私が出来る事はこれくらいしかない。
世界が望む結末に私という存在は邪魔なだけだから。
「作り物だと思う?君がなかなか目を覚まさなくて、不安で……おかしくなりそうだったのに?」
「……それは、ごめんなさい……私にはわからないよ……」
「ルシア……何を見て来たの?なんで僕を突き放そうとするの?」
「私達は旅の仲間……そうだよね?」
「ルシア……」
「……苦しいから、もう離して。それからこういうのも……最後にしてね」
「……わかった」
少し経って、エイトがゆっくりと私から離れていく。
さっきとは打って変わって哀色に揺れる瞳を私に暫し向けた後、彼は部屋を出て行った。
これでいい、そう自分に言い聞かせるようにぎゅっと胸を抑える。
彼の気持ちが離れていく事が怖かった筈なのに、私は何をしているんだろう。
そう自嘲しつつもどこか安心感が芽生えたのもまた事実で。
これでエイトは大丈夫。
例え一緒に旅を続けられなくなったとしても、きっと彼等ならやり遂げられる。
本当に大切な人と、どうか幸せに……。
「……エイトっ……」
気付いたら、涙が溢れていた。
本当は嬉しかったのに。
ずっと抱きしめていて欲しかったのに。
見て見ぬフリをしていた気持ちが溢れ出す。
涙と一緒にこの想いも流れてしまえばどんなに良いか。
この世界の意志を尊重すると決めたのだから、後悔なんてしていられない。
私の目的はただ一つ。
一刻も早くアストルティアへ帰還して、姉やみんなを救い出す。
その為なら……なんだって出来る。
そうやって今までだって生きて来たんだから。
だけど、一度根付いてしまった恋心は簡単には消せなくて。
罪の意識に囚われながらも、私は声を押し殺してただただ泣いた。
また笑ってみんなに逢えるように、全部吐き出しておかないと。
『コネクト~幽玄の園~』へ続く