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★耳かき

 そのアイテムを差し出すと、ルチアーノは呆れた顔をした。
「君って、いつも変なものを持ってくるよな」
 僕は答えに困ってしまう。わざと変わったものを渡してルチアーノの反応を見ているのだから。
「普通のものを渡すだけじゃ退屈だと思って」
「確かに、退屈はしないけどさ」
 僕が渡したのは耳かきだった。ふと思い付いて言う。
「せっかくだから、耳掃除をしてあげようか?」
 絶対に断られると思った。しかし、返事は意外なものだった。
「いいぜ。暇潰しくらいにはなりそうだ」

 ベッドの上に正座すると、僕はルチアーノを呼んだ。腿の上を指差す。
「ここに、頭を乗せて」
 僕の言葉に、ルチアーノは大人しく従った。重みと温もりが足に伝わる。
「じゃあ、始めるよ」
 耳かきを手に取ると、そっと耳の中に入れる。傷をつけないように、慎重に中をまさぐっていく。
「ん……」
 ルチアーノが小さく吐息を漏らした。
「痛かった?」
 僕が尋ねると、彼は何事も無いように答える。
「気にするなよ。痛みは感じないから」
 痛覚が無いということは、傷つくことに疎いという意味でもある。傷をつけないように、さっきよりも優しく耳に触れる。そのまま先端を奥へ入れた。
「んっ……」
 今度は、身体がびくんと揺れた。びっくりして手を離す。
「……続けろよ」
 正面を向いたまま、彼は言う。痛覚が無いと言っても、感覚はあるのだ。妙に色っぽい反応に困惑しながらも、好奇心に勝てずに手を伸ばす。
 奥の方へ先を伸ばして、皮膚を擦った。
「ん……」
 漏れる吐息に背中がぞわぞわする。背徳感に襲われ、手が震えた。今度は、入口付近に触れてみる。
「んっ…………むぅ……」
 今度は、明確な反応があった。如何わしいことをしている感じがして、居心地が悪くなる。思わず身じろぎをした。
 ルチアーノが冷たい声で言う。
「興奮してんじゃねーぞ」
 全部、見透かされていたようだった。

 ルチアーノの耳は綺麗だった。掃除の必要はほとんど無い。アンドロイドなのだ。人体とは構造が違うのだろう。
「なんか、ごめん」
 僕は言った。年端もいかない子供に好奇心をぶつけてしまったことに対して、気まずさを感じていたのだ。
 ルチアーノは起き上がった。僕とは目を合わせようとしない。怒っているのかと思ったが、頬はほんのりと赤くなっていた。
「まあ、悪くはなかったよ」
 彼は呟いた。照れたような声だった。
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