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永遠

 第一印象は、『変なやつ』だった。
 特定の陣営に付かずに、誘われるままにデュエルをするデュエルマシーン。気の赴くままに戦って、それでいて誰よりも強い。
 次の印象は、『面白い』だった。僕のデュエルにどこまでも付いてくる。対等な強さを持ち、残虐性を恐れることも無く、淡々と僕に協力をする。そんな人間は、これまでに居なかった。
 そして、今の印象は、
 少し、怖いと思っている。

「お前が好きだ」
 と、彼は言った。直球の、何の飾りもなければ裏もない言葉だった。
「馬鹿じゃないの?」
 と、僕は返す。僅かな恐怖を感じながら。
 僕は、この人間が怖い。自分を『好き』だと言う人間が。

『わたし、あなたのこと、好きよ』
 ずっと昔の、少女の声が蘇る。
 それは、忌まわしい記憶。

 僕は神の代行者だ。人類の未来を導く者であり、目的によっては人類の敵にもなる存在だ。人間は常に僕らを嫌う。その全能さを、無慈悲さを、上部では友好的な態度を取っていても、腹の内では恐れ、憎んでいる。
 人間は、自分の脅威となるものを嫌う。どうせ嫌われるのだから、始めから嫌われていた方がマシだ。失うものなら、求めなければ良い。
 だから、僕は人類の敵であろうとした。どこまでも冷酷に、無慈悲に、残酷に振る舞う。そうすれば、人は僕に好意を持たない。
 それなのに、どうして彼は僕を恐れないのだろう。

「あんたは、僕が怖くないの?」
「怖くないよ」
「僕はイリアステルとして、たくさんの人間を殺してきたんだぞ」
「それは、目的のためだろう」
「目的のためなら、あんたのことだって殺すかもしれないんだぞ」
「覚悟は、できてるつもりだよ」
 彼は淡々と答える。
「なんでだよ。なんでそんなこと言えるんだよ」
 僕が言うと、彼は当たり前のように答える。
「君を愛しているからだよ」
 その言葉は、僕にとっては恐ろしいものだった。
「永遠を誓えるの?」
「誓うよ」
「永遠の命もないくせに、永遠なんか誓うなよ」
 僕は言った。冷たい声で。それは、ほとんど癇癪に近かったのだと思う。恐怖を感じていたのだ。目の前の人間に。
「ごめん」
 彼は呟いた。悲しそうな声だった。

『わたし、あなたのこと、好きよ』
 昔、そう言った少女は、歴史の修正によって僕のことを忘れた。
『はじめまして。あなたの名前は?』
 その言葉を、永遠に忘れることはない。

 人はすぐに死ぬし、簡単に僕らのことを忘れる。愛しているなんて言っていても、簡単に僕らを置いていく。
 彼は永遠の命を持たない。いくら愛していると言っても、人間である限り簡単に死ぬのだ。僕を置いて。
「愛なんて必要ない」
 そう言い放つと、恐怖は薄れた。
 彼のことを、恐ろしいと感じている。
 怖かったのだ。与えられる愛が。いずれ失われる愛が。
 その愛を、求めてしまう僕自身が。
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