めくるめくテニスをしよう
「真田!よかった!」
なんとか門限までに合宿所に帰って来た真田を立海メンバーが迎えた。
「幸村くんは…?」
一緒にいるはずの幸村の姿がなくて、丸井は落ち着かない。他のメンバーも一斉に真田を見つめた。
「心配いらない」
走り続けて息も絶え絶えの真田が膝を折って答えると、遠巻きに成り行きを見守っていた他校の中学生たちは一人また一人とその場を後にした。
仮に立海のトップ2が脱落したとしたら、大きな痛手になるだろう。中学生たちの士気にも影響が及ぶに違いない。2人の存在は大きい。
脱落を免れたとわかれば、後は用はない。
この場には立海メンバーだけが残された。
「お疲れ真田」
真田はタオルを差し出してくれたジャッカルと、メンバーの一人一人と視線を交わす。
「副部長!俺、真田副部長と幸村部長がいなくなったら、俺…おれ…」
涙ぐむ赤也には、
「たわけ…俺たちが脱落するわけなかろう」
そう返したものの、危ないところだった。
『門限に間に合わなければ脱落です。君も、彼も』
幸村の命運を握らされた真田の心は燃えた。
一心不乱に目的を遂げるために走り続けたのだ。
ーーーぼくたちはテニスをあきらめない!
幸村とそう誓って走ったあの日を思い出しながら。
「そうだ!俺たちは諦めてはならんのだ。そうだろう、赤也!!」
急な剣幕で名指しされた赤也はびっくりしながらも、すぐに挑発的な目を真田に向けた。
「当たり前っスよ!その気持ちだけはずっと変わらないっスから!俺はあんたらに勝つ!!」
赤也の視線が動いた先に、いつの間にか幸村が佇んでいた。
「そうだろう、幸村!!」
真田の熱い眼差しと、メンバー全員の期待に幸村は応えなければならなかった。