めくるめくテニスをしよう
一方、陰で幸村を見守る丸井と柳生、赤也もまた、厳しいトレーニングに耐えていたーーー。
休憩に入ると、幸村にそっと目を向けるのが彼らの習い性となった。
「幸村くん」
呼吸を乱す幸村を見つけては声かけを欠かさない丸井と、タオルやドリンクを差し出す柳生は、欠けたメンバーの分まで立海テニス部の雰囲気を大切にした。
『幸村を頼む』
合宿を去る真田に頭を下げられなくとも、最初からそのつもりだった。
「たく、赤也のやつ」
丸井は自分たちの元を離れた後輩が気に入らない。
髪型をほめられてすっかり白石に懐いた赤也は、エンジェル化してから雰囲気が変わったようだった。今は跡部の隣で試合を観戦していて、軽口をたしなめられている。
「いいんだ。赤也は…」
幸村の言葉は最後まで聞き取れなかった。
赤也は白石とペアを組んで、新しいテニスを覚えて勝利をつかんだ。健全で安全なテニスは、これからの赤也のテニス人生に大きな糧となるだろう。
赤也を切ない思いで見つめた幸村は、黙ってその場を後にした。