めくるめくテニスをしよう


負け組が帰って来たとの知らせを受けた勝ち組の中学生たちは、我先に合宿所の外に駆け出して、朝日の逆光で遮られる視界の中に、一番の相手を探した。

幸村も例外なく、その集団の中にいるであろう友の姿を探した。
何てことはない。黒ジャージに身を包んだ雄姿がひときわ目立って、あっさり見つけることができた。向こうはこちらに気づいているかはわからない。
そのうちに光に目がなれてくると、勝ち組のそこここで嘆息があがる。

負け組の面々は、傷だらけぼろだらけだったのだ。中でも、眼帯をした真田の大胆不敵な面構えは幸村の瞳をとらえて離さなかったーーー。


そして迎えた夕刻、あちこちで歓声をあげる中学生たちは抱き合ったり称えたり、涙する者もあった。
その様子を高い所から眺めるコーチたちも、生意気な中学生の子供らしい一面を見て取る事ができて満足していた。

少し遅れてその場に姿を現したのが幸村で、ひっそりとたたずんでいるのが逆にコーチたちの目に留まった。

「おや、彼は」

「素直ではいられない事情がありそうだ」
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