犬も歩けば棒にあたる


暗がりの中、涙でかすんで見えたのが真田だとわかった時、幸村はさして驚かなかった。
突然の対処に迷ったのは真田の方で、全裸でしどろもどろする様は情けない。

「真田…?」

「幸村…」

「真田はゲンだったんだね」

「む…?そう、なのだ…ろうか…」

「こっち、来て」

幸村が涙で濡らすその場所へ、暗がりでも真田は迷わず近寄った。
幸村は真田の存在を確かめるみたいに、逞しい筋肉に触れていく。

「本当に真田だ」

「すまん、騙すような真似をした…」

「楽しかったよ、ゲン。お前は?」

「無論だ。だが犬では楽しめない事がありすぎた」

犬の目とは全く違う、欲望を隠さない男の目が光った。

「真田…ぁ」

「フ…犬に遊ばれて準備は進んでいるようだな」

ボクサーブリーフの染みを指差して真田は鼻で笑った。

「犬じゃない…真田だろ…っ」

「どうだか」

キスを受けながら、幸村は真田の股間を探った。真田のモノも十分猛り立っている。
そうとわかると、ゲンがくわえて来た箱を手渡した。
真田はすぐに箱からコンドームをひとつ、つまみ出す。黙々と愛の準備を施す様子を眺めながら、

「おかしいなと思ったんだ」

当たり前のように真田に下着を取らせている。

「これの在り処を知ってるなんて」

準備の整った真田のモノを右手に握って深呼吸する。

「あの姿で俺を誘ったのかい?」

「犬にそそのかされたのはお前だろう。いや、違うな。先に誘ったのは幸村ではないか」

「誘うもんか…っ!」

チリリと痛みが走ったのは、丸出しの陰部に歯を当てられたから。
犬よりも犬らしい真田の行動に、はっきりいって興奮した。

「犬じゃないんだから噛み付くなよ。ゲンはお利口だった…」

「俺は犬ではないからな。従順にはならんぞ」

鼻息も荒くして攻め立てる。

「ぅ…うぁ…後ろに欲しい…」

真田の前髪を掻き上げて、熱い視線を注ぐ。
余裕のない表情に色気を映すのが真田のいいところだった。
幸村の背後を取って伸しかかると、うなじに歯を立てた。

「ゲン…!」

錯乱した幸村は、記憶違いからそう叫んだ。
途端に、真田が腰を打ち入れる。
這い出そうとすれば、うなじを噛まれて痛みと快感に体が震えた。
それはたちまち記憶を呼び覚まして、体内をうねる真田をしっかり意識した幸村は羞恥した。

「犬はもういい…」

声を詰まらせた。
ドクンドクンと息づく真田を感じながら、頼みねだる幸村は弱腰でいじらしい。
真田は黙ったまま、血が滲むうなじを吸っては舐めた。

「ゲン…ゲンイチローの顔が見たい」

正面から抱けという。
骨抜きにされた幸村の力では、とても真田の下から抜け出ることはできなかった。
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